違和感
今日は良和高校の入学式の日だ。
新入生がこれからの期待に胸を膨らませこの学び舎に入ってくる。
校庭に植えられた桜の木々から花びらが舞い落ちる中、新入生達が続々と校舎に入っていく。
そんな初々しい光景を眺めていた私は、ホームルームの時間になった事に気付き、慌てて教室に向かう。
私は自分の席で静かに待っている生徒達を見て高校生の頃を思い出し、懐かしい気持ちを覚えつつ中に入った。
入ると少しざわついていた教室が静かになり、全ての視線が私へと向かった。
「はい。じゃあ入学式前の最初のホームルームを始めます。まずは私の自己紹介から。名前は卯園緑です。今年から教師になりました。担当は数学です。これから皆さんの担任として1年間を過ごすことになります。よろしくお願いします」
その後生徒達に自己紹介をしてもらい、1日の流れを簡単に説明したところで入学式の始まる時間になった。
体育館には全校生徒と教室が集まった。会場はしんと静まっており、入学式の開始を待っていた。
そして教頭の合図により入学式が始まった。
内容は私が高校の時にやっていたものとほとんど同じだった。変わった点というのは特にない普通の入学式だ。
強いていうならば、私が教師側にいることだろう。
教師を辞めるまでは毎年この光景を見ることになるんだなあと思いながら見ていた。
入学式は全員の名前を呼ぶなんて卒業式みたいなことはないのですぐに終わった。
私は教室に戻り、係決めと明日からの授業についての説明をして今日のホームルームは終わった。
私はその後翌日の準備などを済ませてから、顧問となる部活もないのでそのまま定時で帰宅した。
人生初の教師としての仕事をようやく終えてどっと疲れが来た。
短いようで長い1日だった。しかしミスもなく無事に終わって良かった。
今日だけが仕事じゃない。寧ろここからが本番だ。クラスをうまく取りまとめ担任として正しい方向に導いていかなければならない。
私は改めて気を引き締めた。




