第6話 四宮と帰ってみたNo.2
最後の終わり方を大幅に訂正致しました。
四宮ほどの美少女が男の友達と帰るのが初めて? 一体何故?
千田が疑問を持つのもおかしいことではなかった。
確かに四宮は冷酷姫という名が通っている。だがそれは告白をされるとか恋愛ごとに関わった時に四宮がとるあの冷徹な態度が原因で生じた名だ。
だから最初に四宮から告白をされた時は嬉しさよりも驚きが先に出た。
『あの、』
しかし、普段の彼女は実は冷酷姫よりも人気者と呼ばれている方が多いのだ。
男女関係なく誰にでも優しく振る舞い、困った人を見つけたらすぐに助けにいく。まさに理想の人。
まあ、そんな四宮だからこそ告白を断る時のギャップ故に冷酷姫なんて呼ばれる羽目になったんだと思うが。
『あの〜』
人気者の四宮には、当然ながら異性の友達も多い。だから恋愛感情は持たずとも異性の友達とくらい一緒に帰ることはあるのかなっと思っていた。
『あの! どうしたのですか?』
その声にハッと気づくと隣に歩いていたはずの四宮が俺の目の前に来ていた。
どうやら何度も呼びかけてたらしく、それを無視してた俺に怒りを覚えたらしい。頬を少し膨らませている。
『あ、悪い悪い! その、四宮って男と帰ったこと何で無いのかなーって思ってて』
『……それ本気で言ってるのですか?』
『え? ああ、そうだが』
『……分からず屋』
『ん? 今なんか言ったか?』
『……いえ別に』
四宮の態度が急に冷たくなった。
どうしたんだ? もしかして俺、気づかないうちに四宮を傷つけること言ったのか?
『……からです』
『うん?』
『貴方のことがずっと好きだったから……他の男の人といて勘違いされたくなかったからです!』
『あ……』
そう言い切った四宮は顔を真っ赤にして手で覆い隠す。
そんな中、俺は四宮にそう言われた嬉しさよりも羞恥心に襲われた。
は、恥ずかしすぎる。
今まで四宮が異性の人と帰らないのは疑問に思っていた。だけどそんなことは考えなくても分かることで四宮には好きな人がいたからだ。
当然、好きな人がいるならばその人に自分が他の生徒と付き合ってるなんて勘違いをさせたくない。だから四宮は異性の誰とも一緒に帰らなかったのだ。
それに気付いた今、俺はなんとしてでも四宮に謝罪をしなければならない。
四宮は恥ずかしかったのか、悲しかったのか未だに顔を隠しながら立ちすくんでいる。
そりゃそうだ。俺のせいであんな恥ずかしいことを言わせたんだから。
こういう時どうすればいいんだ? 考えろ俺。
俺は今まで読んできた恋愛小説、恋愛漫画の内容を思い出し、四宮を宥める方法を探す。
そして俺が咄嗟に出た行動は——
『ひゃ!』
『ご、ごめんな四宮。俺今まで恋愛経験とか少なくてそういうのに疎いんだ。次からは気をつけるから今は許してくれないか?』
俺は四宮の頭を撫でながら謝罪をしてみた。まあ大してイケメンでもない俺がこんな行動に出たのは自分でもかなり引くが四宮は俺のことが好き? らしいからいいかなって思ってしまった。
え、いやいいよね?
『ええええと、いや、その……』
『ダメか?』
四宮はかなり動揺している。
よし、不意打ちは成功だな。あとは許してくれるかだが……。
『……のをやめないでください』
『え?』
『撫でるのをやめないでください!』
『あ、はい分かりました』
え、どっちなんだ? 許してくれたのか?
けど四宮、めっちゃニヤついてるし多分許してくれたよな。それに怒ってたらこんなこと言わないよな。
というか小動物みたいでなんか可愛いな。
ナデナデ
『ふえ〜』
ナデナデ〜
『ふわぁ〜』
ナデナデナデ
『ふふふ』
——いつまで続けんのこれ?
『し、四宮。もう大丈夫そうか? まだ続けるか?』
『いえまだ……すすす、すいません! もう大丈夫です』
四宮は我に返ったのか急いで俺の隣へと戻る。
なんか四宮、撫でられて結構喜んでたよな。もしかして女子ってこういうことされると喜ぶのか? それなら昨日の件で妹とまだ仲直りできないし後でやってみるか。
そんな盛大な勘違いをしながら俺と四宮は再び歩き出す。
しかしそこから会話が始まることはなく、互いに無言の状態が続く。まあその原因は撫でたことによる恥ずかしさと気まずさだと思うが。
暫くの沈黙の中、それを破ったのは四宮だった。
『あ、着きました。ここが私の家です』
『おお、ここがそうなのか』
最初は家付近まで帰る、という話だったが気まずさ故に結局最後まで言い出せず付いてきてしまった。まあ、だからなんだって話なんだが。
『今日はありがとうございました』
『いやいや、全然話せなくてごめんな』
『いえ、それは私もです。なので次に帰る時のために沢山話題を用意しておきますね!』
『そっか、じゃあ俺も色々と準備しておくよ』
ふふっと四宮はにこやかな笑顔をする。
そんな無邪気な彼女に、どうやら俺はイタズラをしたくなったらしい。
『撫でるのも、な!』
『なっ……!』
俺のイタズラは成功したようで、四宮は顔を紅潮させて分かりやすく動揺した。
あ、なんかいいなこれ。もしかして俺ってSっ気あるのかな。
『もう、酷いです! わざと言いましたね?』
あたふたしている姿を見て楽しんでいることを四宮が気づいたらしく、頬を膨らませながら言ってきた。
『お、バレたか?』
『当たり前です! もう、そんな恥ずかしいこと言うのやめてください!』
『ごめんって、でも四宮のことを色々と知れて楽しかったよ』
人前で見せる笑顔とは違って感情的に笑うとことかな。
『全くもう……話を誤魔化して……! まあもうそれはいいです』
俺がいつまでも笑い続けていると四宮はこれ以上言っても意味ないと思ったのか、不満気な表情を浮かべながらも引き下がった。
『……私も、あまり会話出来ませんでしたけど千田君と帰るの結構楽しかったですよ』
『結構って……せっかくいい内容だったのに最後の一言は余計だぞ四宮』
『ふふふっさっきのお返しです』
いつの間にか俺と四宮は何も意識することなく普通に、楽しく会話をしていた。それはまるで、さっきまで緊張していて沈黙を貫いていた2人の光景が嘘だというように。
そうか、こんな風に会話すればいいのか。話題がないから話せないとか思ってたけど、こうやって何も意識しなければ案外話題なんて必要ないのかもな。
しかしそんな楽しい時間も区切りをつけないと。
スマホを見れば7時を回っている。流石に帰らないと家族……主に心配性の妹から心配されてしまう。
『じゃあ四宮、おれそろそろ帰るけどいいか?』
『あ、ちょっと待ってください』
四宮はそう言うと顔を赤らめながらモジモジしだした。
『まだ何かあるのか?』
『いえ、その……連絡先を交換しませんか?』
あ、そういえばまだしてなかったな。
『ああ、いいぞ!』
即答すると四宮はよっぽど嬉しかったのか子供のように無邪気に笑う。
……そんなに喜ばれるとこっちも照れるな。
『ありがとうございます、では後で送りますね!』
『ああ、了解した! じゃあな、四宮。また明日!』
『はい、さようなら!』
その言葉を後に俺は走って自宅に帰った。それもスキップで。
読んでいただきありがとうございます!
今回は会話を多めに入れてみました、