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第2話 妹の様子がおかしい……?

少し修正しました。

『返事……すぐした方が良かったのかな……』


 学校からの帰り道、俺は四宮に告白された時の光景を脳内で何度も繰り返しながら反省をしていた。


 しかしそれも仕方がないと思ってしまう自分もいた。

 

『けど……付き合うって、何かわかんないんだよな……』


 俺はため息とともに呟く。

 学校一の美少女である四宮に告白をされて断る男子は多分いないだろう、というか逆に男子が断られる側だと思うが。


 だが俺は彼女いない歴=年齢の男だ。さっきも言った通り恋とは無縁なため付き合い方が分からない。

 そんな俺が四宮が可愛いからという理由で果たして付き合っていいものだろうか?

 そう考えた末四宮に対し咄嗟にでた返事が『待ってください』だった。


『駄目だ……考えれば考えるほど何て返事をすればいいのかわからん』


 そうやって悩みながら俺は再び告白の時の光景を脳内で繰り返そうとする。

 

 その時だった。


『何で無視すんのよ!』


 突然聞こえてきたその声に続いて頭部に鋭い痛みが走る。


『痛ったぁ!!』


 俺は何事だと思いすぐさま後ろを向くと、そこには見慣れない制服姿の妹、千田咲(せんださき)が立っていた。

 何やら苛立った表情でこちらを睨みつけている。


『何で急に殴るんだよ!』


 怒り混じりの声でそう言うと、咲は俺の比にならないくらいの怒りの篭った声で


『何でじゃないわよ! さっきからずっと呼んでたのに兄ちゃんが無視するからでしょ!』


 と、怒鳴られてしまった。

 どうやら俺は自分の世界に入り込むあまり周りの声をシャットダウンしてしまってたらしい。

 妹に言われるまで気づけないなんて……駄目だな俺は、下手したら事故に遭ってたかもしれないんだぞ。これは素直に妹に感謝だ。


『ご、ごめんな。考え事をしてた。ありがとな、咲。』


『ふん! 次同じことしてたら石で頭を殴ってやるからね』


『善処するが咲、流石にそれはやめてくれ。いや、やめてください』


『やーだ! 兄ちゃんが悪いんだからね』


『だからごめんって……』


 しかし咲はふてくされた顔をやめない。

 こうなったら落ち着くまで何も言わない方がいいか。こういう子供っぽいところを直せば咲もモテると思うんだけどなぁ……。


 咲は俺と歳が1つ離れた高校1年生の妹である。顔は別に悪くはなく、多分美少女の類に入るだろう。

 さっきの光景を見て、喧嘩ばっかで仲悪いのか? と思うかもしれないが意外とそうでもなく、こうやって一緒に帰ることも別に気にならないほどである。


 でもまあ、部活をやっている妹と一緒に帰ることなんて最近はなかったことだから懐かしくてちょっといいな。


『ねえ、今日は何でこんなに遅かったの? 兄ちゃん部活とか入ってなかったでしょ?』


 歩幅を俺に合わせ隣に来た咲が質問を投げかけてきた。その表情には先ほどのような怒りは混じっていない。どうやら機嫌は直ったようだ。


『いやいや、ちょっと色々あってな。 少し遅くなったんだ』


『色々? それがさっき自分の世界にこもってた原因?』


『ま、まあな』


 俺が困ったような表情で返事をすると咲は何かを察したらしく憂わしげな表情を向け『大丈夫?』と言ってきた。

 

 『なんかあったの?』じゃなくて『大丈夫?』か……ほんと、こいつは兄弟想いなところがあるよな。マジで子供っぽい性格さえ直せばモテるのに。


 ……まあ、あまり話題にしたくなかったが、これ以上咲に心配をかけたくないしこいつになら相談してもいいか。それに咲は女の子だしいい答えを出すヒントをくれるかもしれないしな。


『実は……』


 俺はそれとなく相談を持ちかける。


『こういうことがあってさ、』


 俺は咲に今日あったことを包み隠さず伝えた。

 さて、咲はいったいどんな反応をするかな?

 俺は内心、兄が告白されたとなれば咲はどんな反応をするのか少し期待していた。普段咲は俺のことを『非リア〜』などと小馬鹿にしてくるので、少しギャフンと言わせたかったからだ。


 でもまあ多分、『兄ちゃんが告白? ありえな〜い』とか『この世が破滅する!』あたりのことを言われて笑われるに違いないだろうけど。


 が、咲の反応は予想とは全く違った。


『兄ちゃんが……告白された……?』


 そう告げられた咲は動かしていた足を止めその場で固まった。その表情には笑みなど全く溢れていない。

 あれ? 全然笑ってない。おかしいな、いつもの咲ならこういう類の話を聞くと腹を抱えて笑うのに。


『ど、どうしたんだ、咲。何でお前はフリーズしてんだ?』


『……どうしようどうしよう。私の兄ちゃんが……もうここで、いやそんなことはしないって決めたのに……でもでもでも』


 咲は固まったままブツブツと何か小声で呟いていて俺の話など一切耳に入っていない様子だ。


『おーい、咲ー!』


 駄目だ、完全に自分の世界に入っている。さっきそれを俺に注意したばっかだろ……何で自分が同じことしてんだ。

 というか何でこいつは驚いたような、ショックを受けたような顔をしているんだ? 俺が告白されることがそんなに悔しかったのか?


『よくわからんやつだな……お前は。それよりこのことについてお前の助言がほしいんだが、一体俺はどうすればいいと思う? 何て返事をすればいいのか未だに見出せなくてな』


 すると咲は自分の世界からやっと戻ってきたのか俺に顔を向ける。

 が、咲はどこか悔しそうな、泣きそうなよくわからない表情をしていた。

 そんな彼女から期待していた回答が返ってくるはずもなく、


『知らない、兄ちゃんのバカ! そんなの……友達で、とか返事しとけばいいじゃん! もう家に帰ってくるなバカ兄!』


『え、どうしたんだ急に、っておい咲! ……行っちまったよ』


 咲はすごい勢いで俺に罵倒を浴びせていくと、すぐさま走って行ってしまった。

 一体どうしちまったんだ咲は、今日ちょっとおかしいな……俺そんな変なこと言ってなかったよな? 

 ……まあ、あいつならそのうち機嫌は直るだろうし後で謝って理由を聞くか。


『ったく、思春期の妹は大変だな』


 俺は頭をボリボリとかきながら重い足取りで家に向かう。




『何なんだよ、あいつは』


 風呂場で真っ裸になった俺は、全身をお湯に浸しながら1人愚痴っていた。

 結局、あの後家に帰った俺は咲に何度も話しかけたが悉く無視され、やっと口を開いたかと思えば返ってきた言葉は『話しかけんな、バカ兄!』の罵倒のみ。


『四宮にしても咲にしても、本当、年頃の女の子の気持ちは分からないな』


 でもまあ四宮はともかく、咲は兄弟想いが強いところあるからもしかしたら嫉妬してるのかもな……。そうだとすれば何も考えずに話した俺にも非がある。よし、後でもう一度謝ってみるか。


『それにしてもなぁ、』


 咲には悪いが今は四宮の告白をどう答えるかを優先して考えないといけない。

 

 うーん、やっぱり駄目だ。俺はなんて答えればいいのか分からん。


 俺は別に四宮と付き合いたくないわけではない。好きな人もいないし、俺だって恋とは無縁と思ってはいたものの、できるなら高校生活で甘酸っぱいような恋をしてみたい。


 だけど、だけど相手があの学校一の美少女四宮であることと付き合い方が分からないままで果たして四宮を幸せにできるのか? と考えてしまいどうしても後を引いてしまう。


『あーー、どうすればいいんだ。俺1人で考えても悩むばっかりで答えが出ない』


 やっぱりこうなると助け舟が欲しいな、アドバイスとか。内容が内容なだけにクラスの人達には言えない。できれば咲だが今は喧嘩中。

 そういえば……咲から辛うじてもらったアドバイスがあるな、


『友達で、とか返事しとけばいいじゃん!』


 俺の頭に咲がさっき罵倒とともに言っていた言葉が浮かぶ。

 アドバイス……ではないか。流石に友達でって、そんな濁すような言い方は良くないことぐらい俺でも……いやまてよ……? それだ!


 その瞬間、千田の脳裏にある案が浮かぶ。

 それだ、それしかない! この返事なら悔いもないし最終的に俺と四宮は幸せになれるかもしれない! これは咲に感謝だな。


 『ククク、クハハ、クハハハハ!』


 俺は水しぶきをあげながら大きく立ち上がり厨二病感ありありの笑い方をする。

 風呂から出た時に親の冷たい視線と咲からの『キモッ』の一言には傷ついたが、その日の俺のテンションは下がらなかった。


 結局この日は咲とは仲直りができなかったが、寝る前に『おやすみ』と一声かけたら『……すみ』と小さな声で返事をしてきたので多分明日には仲直りできるかなと、咲の件に関しては安心して俺は床に就いた。

 これで残るは四宮の件だけだ。

 

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