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第1話 学校一の美少女に告白されました。

最初の方なので説明文が多くなってしまいますがどうぞよろしくお願いします!

『俺とお前はふさわしいと思う、だから俺と付き合え!』



 初夏の風が吹き、ピンクに染まった色がすっかり消え鮮やかな緑や青の色が塗り重なる五月。

 春から進学してきた新入生も高校生活に慣れ始めてきた頃、ある男子生徒が中庭で女子生徒に告白をするという青春という名の大イベントを迎えようとしていた。

 がしかし、


『ごめんなさい、貴方とは付き合えません』


 そんな彼女の一言は素っ気なく感情など全くこもっていなかった。それはまるで、返す言葉など最初から決まっていたかのように彼女の態度は酷く冷たかった。


 男子生徒が落ち込みながら離れていく中、彼女の内心はときめきなど一切なく、ただただこの流れ作業がいつになったら終わるのだろうと、そんなことばかり考えていた。


『はあ……疲れた』


 彼女、もとい四宮兎衣(しのみやうい)は深いため息とともにそんな独り言を呟く。

 しかし数秒後、彼女はその強張った表情を少し和らげ先ほどよりも小さな声で


『私だって恋してるんです、ばーか』


 と、その白い頬を赤に染めて呟いた。




 

『なあ、聞いたか?』


『聞いたって何を?』


『あの3組の斎藤、あいつに告ったらしいぜ』


『マジかよ! で、どうだったんだ? OKしたのか!?』


『いやいや、いつも通り即断ったんだと』


『うお、あのイケメンの斎藤でも無理だったのか。攻略難易度高すぎだな』


『いったいだれなら振り向かせることができるんだろうな、あの【冷酷姫】を』






 高校2年生の今に至るまで別に特別なことなどなかった。

 彼女すらできたことのない俺は恋とは無縁で、それはこれから先もそうあり続ける……そんな覚悟はもうしてたつもりだった。


それなのに——


『千田君。ずっと前か好きでした!』


 彼女のその一言によって俺の覚悟など一瞬にして消え去った。

 

『う、あ……え……?』


 突然の出来事に呂律が回らない。

 しかしそんな千田の状態にも拘らず彼女はそのきめ細かい肌をほんのりと紅潮させながら、だが覚悟と決意は一切揺るがずに熱く真剣な眼差しを向けてくる。


『こんな私でよければ付き合ってください!』


 放課後、他の生徒がいなくなり2人きりになったこの教室で彼女、四宮兎衣は俺、千田千亀(せんだかずき)に想いを伝えてきた。

 

 どうやら俺は人生初めての告白をされているらしい。


——でも……でも何で俺なんかに?


 俺は容姿も普通で個性も特に目立ったところなどなく、漫画や小説で言うところのモブAみたいな存在の一般生徒だ。

 そんな俺が女子に告白をされることなどほぼ皆無で、しかも相手があの四宮だということが理解不能だ。


 俺の目の前にいる彼女、四宮はこの学校では知らない人はいない美少女である。

 運動神経も良くて頭も良い、尚且つモデルのスカウトをされたことがあるほどスタイルがいい、そんな三拍子が揃った彼女はまさに皆んなの理想の人だった。

 もちろん、俺も例外じゃない。

 

 しかしそんな彼女だからこそ、この告白は信じられないのだ。

 それは彼女はこの学校で美少女で知れ渡っていると同時にもう1つの名もまた、同じように知れ渡っているからだ。


——冷酷姫。

 彼女が周りからそう呼ばれている所以、それは、

 どの生徒から告白されても全て同じように『ごめんなさい、貴方とは付き合えません』の一言で断ってしまうからだ。

 

 当然ながら美少女である彼女に告白する生徒は数え切れないほどいて、その中にもイケメンや人気の先輩も多々いる。しかしそんな生徒から告白されても四宮は顔色1つ変えず同じように断るのだ。

 いつしか、四宮に告白をしてOKをもらった生徒がいるならば“生きる伝説だ”と噂が立つまでになっていた。


 話を戻そう。これで四宮から告白されることがどれだけおかしいことか、ご理解いただけただろう。

 実際俺自身も震えて体が動かないもん。例えるなら一等の宝くじに当たった感じかな、当たったことないから分からんが。


『それで……お返事は……?』


『えっと……』


 答えというものは簡単に出せるわけではない。重要な答えを出すにはそれなりの【対価】つまり【時間】が必要だ。

 だから今俺が四宮に対し言える言葉は、


『あ、明日まで待ってくれ!』


 それが今俺が出せるの精一杯の答えだった。

 

 俺がそう言うと四宮は不機嫌な表情を見せるわけでもなく、


『分かりました、では明日また聞きますね』


 と、読めない表情でそう言いさっさと教室から出て行ってしまった。

 あれ? なんか素っ気ないな。


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