94話 戻りたい
マラソンも残り僅かとなった。
「はぁはぁ、やっと、見えて、きた。」
平山は既に体力が限界なようだった。比べて紗羅は平山程ではないもの、息が切れかけていた。
そしてゴールした。…特に言うことないな。
二人が息を整えているのをまっていると、先にゴールしていた羽島が来た。
「お、お前らやっと来たか。のんびりだな。」
「…まあ、な。」
「へ、へっくしゅ!!…寒い。」
羽島が震えながら言う。みぞれも降って来て、気温もどんどん下がってきた。
羽島に続き、水嶋と如月もこちらにきた。
「春祇くんたちやっと来たね〜。」
「水嶋さん、たちも、とっくに、ゴール、してたんだ。」
「そうなんだよ〜俺も抜かされたし。」
「足には自信があるしね。」
「そっか〜俺も自信あったんだけどな。それにしても如月さんもめっちゃ速いな。な、奏。」
そこで何故か羽島はこちらに振ったきた。
まあ、如月がある程度足が速いのは体育大会で見たが、体力もあるとは。
「そうだな。」
「えへへ〜ありがとう。」
自分がそう返すと如月は嬉しそうに返してきた。
………そんな顔をされ、自分は下を向きそうになった。
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「あの、春祇先輩。」
「……松川か。浦澤なら先生がいたから大丈夫だ。」
全員がゴールするまでの間、松川がこちらに来た。
「そうですか。…神奈、こけて足ひねったのに私は大丈夫、なんて言ってて。」
「松川ちゃんに心配させなくなかったんじゃない?」
「でも………」
平山がフォローするが、松川はあまりいい気分じゃなさそうだ。
「………松川と走りたかったんだろ。」
「え?」
「心配させたくないってのもあるだろうけど、浦澤は、ただお前と走りたかったから、それだけだろ。」
「…そうかもですね。神奈のことですから。」
松川は自身の言葉で嬉しそうに笑う。
浦澤は相手の事よりも、自分自身のことを優先して動く。それはあの屋上の時でもそうだった。嫌だと言っているのに味見係を頼ませる。そういうやつだ。例え、相手のために、相手を心配させても。
「……………」
その友情が、自分には眩しい。
…帰りたい。
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あの後、浦澤は無事戻ってき、そのまま一日が終わると思っていた。終わって欲しいとその時は思っていた。
早く帰って
雪から、
雨から、
霙から、
逃げようと。
なのに、
さらに、
自分を、
苦しめる…
一つの下駄箱に入った誰からか知らない手紙によって。
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