92話 最低
3キロ程度進んだ後、後ろから紗羅が追いついてきた。
「ペース、だいぶ遅いね。」
「……ああ。」
そう言って紗羅は自分たちとペースを合わしてくる。恐らく一緒に走るつもりなのだろうか。
「紗羅は本気でやらないのか。」
「別に景品が出るわけじゃないし。」
「…考えてることは一緒なんだな。」
「い、一緒…ふ、ふふ。」
なぜか紗羅は急に笑い出した。…どうした?
「お〜い紗羅さん、嬉しいのはわかるけど戻ってきて〜。」
笑い出したさらに呼びかける平山。
……意味がわからない。どういうことだ?
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5キロ地点を通過し、折り返しになる。だいぶ人と人との距離も離れていき、周りには誰もいない。自分たちはかなり遅めに走っているので順位的には下の方だろう。
「はぁ、はぁ、やっと、中間地点なの?」
「疲れすぎじゃない?」
「だ、だって、運動は苦手、だし。」
「………」
二人の会話を横に自分は空を見上げる。曇っている、これは…
そう思っていると、雪が、降ってきた。雨も、少し混ざっている。
…冷たい。
「あ、雪だ。雨も混ざってない?」
「…本当だ。珍しい。」
「…………」
霙、だ。
冷たい。雪は冷たい。雨も、冷たい。あの日も、そうだ。
また、思い出してしまう。苦しむのは、責任だ。感じないと いけない けど けど
いや 何様 なんだ 自分は 勝手に投げ出すのは
許されない 最低すぎる
そうだ。
そうなんだ…
「…あ、あれって、浦澤ちゃん?松川ちゃんと、一緒じゃ、なかった?」
「…足引きずってる?」
ふたりのこえにひきもどされた。まえをみるとうらさわがあしをひきずりながらあるいていた。みたところまつかわはいない。
じぶんたちはうらさわにちかづく。
「どうしたの、浦澤ちゃん?」
「あ、先輩たち。ちょっと捻っちゃいまして…」
「……大丈夫か。」
浦澤の足首は赤く腫れていた。この状態でどこまで歩いたのか。
「松川は?」
「由奈には先に行ってもらったんです。ところで…そろそろ限界なんで春祇〜先輩。」
「……なんだ。」
「肩貸してくださ〜い。」
「…はぁ、分かった。」
「ありがとうございま〜す。」
そういうと浦澤は自分の肩を掴む。…紗羅から物凄い視線を感じる。まあ、そんなことより、
「浦澤。」
「なんで〜すか。」
「…あまり無理するなよ。」
「…あ、ありがとう、ございます。」
浦澤は少し驚いた顔をしたが、すぐまたニコニコと笑顔を作った。
…自分で言った言葉なのに、何故か言葉が胸に突き刺さった。無理はしていないのに。
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