89話 マフラー
…柔らかい。どこだろう。確か私は…
「……!?」
そこでさっきのことを思い出し勢いよく起き上がる。それと同時に頭の痛みが走る。
「…起きたか。」
「…あんたは、春祇?」
「そうだ。」
横にはさっきの春祇がいた。
「ここは?」
「保健室だ。」
「…もしかしてあなたが運んでくれた?」
「…いや、たまたまここを通りかかったら、保健室の人に代わりに見ておいてくれって…」
「…え?」
私は春祇の言うことに困惑する。そんなことはないはずだ。確か私は春祇に助けられたはず。なんでそんな嘘を…
「それって嘘で…」
「…じゃあ自分は帰るから。」
「え、ちょっと!」
私が言うが前に春祇は扉をあけて何処か行ってしまった。
…なんなんだ。どうも気になる。春祇が。
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「で、なんだ。」
「…昨日のこと。」
翌日私は体調も良くなり、今は放課後に春祇を屋上に呼び出した。春祇は相変わらずどこかだるそうにしている。こんな態度を私にしてくる人もなかなかいなかったので新鮮だった。
「先生に聞いた。春祇が私を助けくれたこと。」
「…そうだったか?」
「とぼけないで。…なんで誤魔化すの。」
「…はぁ。」
春祇は諦めたように言う。
「…静かに過ごしたいから。」
「…静か?」
「高校では目立たずに過ごしたいだけだ。」
「…それと何か関係あるの?」
私は春祇の言っている意味が分からなかった。
「…こんな美少女を助けたなんて目立つだろ?」
春祇は少し考えたあと冗談めかして言う。私はその言葉に不覚にも胸が高鳴ってしまった。
「…面白いね。」
「……そうか。」
私がそう言うと春祇は一瞬だけ顔を歪ませた。
「どうしたの?」
「…いや、なんでもない。」
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「…奏、これ。」
「なんだ?」
文化祭の前日の帰り道、私は奏に藍色のマフラーを渡す。その時、私は今の奏の顔を見てつい思い出す。
一年前、あの時からだんだんと奏と関わることが増えてきて、羽島や平山と喋ることも多くなった。
「この前マフラーあげるって言ってたでしょ。」
「…本当にいいのか?」
「…どうせ余り物だったから。」
ちなみに余り物というのは嘘だ。先週から家でずっと編んでいた。
奏は最近どうやら元気がない。理由は分からないが、日に日に疲れていくように見えた。もしかしたら、体育祭の生徒会長が原因かもしれないし、他の理由もあるのかもしれない。
でも、でも私はそんな奏を支えたいと思っている。私を助けてくれた私を。…最近はこの気持ちは恋心になったけど。
そしてそれは、今でも変わってない。
私は、奏のことが好きだ。
ちなみに自分はネックウォーマー派です。
次からは7章で、少しシリアスな章です。
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「二度も親を失った俺は今日も最強を目指す」もよろしくお願いします。




