69話 面白い理由
「観察?何のことだ。」
「…自分で言ってましたよね。楽しみに観ておこうって。」
「バレてたか。」
「で、なんですか。生徒会長。」
呼び出して来た張本人、生徒会長はふっと笑いながら言う。
「そのまえに敬語は苦手だろ。喋り方がちぐはぐだし、やめてもいいぞ。」
「…分かった。」
「生徒会長って呼び方もやめてくれ。蓮でいいぞ。」
「はぁ。」
確かに敬語は苦手だがなんでその情報量だけで分かったんだよ。
気を取り直して生徒会長改め蓮が喋り出す。
「話を戻すがここに呼び出した理由か。それはお前に聞きたいことがあったんだよ。」
「聞きたいこと?」
「ああ、単刀直入に言うが、なんで体育大会、手を抜いた?」
何故そんなことを聞いてくるのか、自分は分からなかった。
「…手なんか抜かないだろ。意味もないことなんてしてなにがあるんだ?」
「さぁ、こっちが聞きたいな。…じゃあ最後のリレーでスピードが一瞬上がったのはなんだ?」
「火事場の馬鹿力て言うやつじゃないか?自分はあんまり運動神経が良いわけじゃない。そう言うこともあるだろ。」
「そうか?いつも身体に重りなんてつけてるのにか?」
「…何のことだ。」
「お前の制服の袖からたまに見えるんだよ、黒いゴツゴツしたなにかが。多分重りだろ。今はつけてないようだが、どうせここに入れてるんだろ。」
そう言うと蓮は自分が持っていた鞄を不意に取ってきた。自分は逃げても意味がないと思い取られた。
蓮が鞄を少し揺らすと学生の鞄からは聞こえないはずの重々しい音がした。
「やっぱりな。重さ的に合計7、8キロか?」
「……………」
「いつもこんなものをつけていると言うことは体も相当鍛えられているはずだ。なのに何故手を抜いたんだ?」
「…………………………」
自分は少し無言だった。やがて口を開いてこう言った。
「目立ちたくないから。」
「目立ちたくない?」
「体育大会で活躍してしまったら目立つだろ。だから手を抜いた。」
自分は淡々とそう言った。
目立ちたくない。自分はこれを何度思ったか。それほど目立ちたくないだと改めて実感したぐらいだ。
「…ふふ、面白い理由だ。そう言うことにしとこう。ついでに聞くがなんで重りなんてものつけてるんだ?かなり重いほうだが。」
「昔、テニスをやっていてその時いつも着けていてその癖だ。」
「そうなのか。癖か…」
「…もう帰って…」
帰ろうと思い言おうとすると後ろから視線を感じた。振り返るがそこには誰もいない。誰だったんだ?
「どうした?」
「…いや、何でもない。そろそろ帰っていいか。」
「ああ。」
どうやら蓮は気づいてないようで特になにも言ってこなかった。
自分は鞄を返してもらい帰ろうとすると何か思い出したかのように蓮が言った。
「なあ、一つ思い出したんだが聞いていいか。」
「なんだ。」
「この前、お前の学年で調べものがあってその時気付いたんだが、お前と同じ中学と奴が一人ここに受けたんだが知ってるか?」
「…………………さあ。」
「そうか。そいつ…名前は忘れたが、そいつは受かったらしいが今はいないらしい。何か知らないか?」
「知ら、ない。」
「そうか。それだけだ、じゃあな。」
蓮と別れる。
「…………………………………………………………」
なんとも、言えない。なに、も、思えない。今日、は散々、だ。さっさ、と、かえって、ねよう。はやく。
その日の夕焼けはあまりにも綺麗だった。だが自分はそれをみて、心臓が張り裂けるぐらい痛かった。
これで5章、『体育大会』改め『目立ちたくない存在』が終わりました。やっと春祇の過去を少しだけ知っている人物として蓮が出てきます。まあまだ春祇の詳しい過去は出てきませんが。
次は5.5章を1話挟みます。
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