64話 勝ち
3セット目。始まる前に自分はリーダーの黒原のところに行った。
「…あの。」
「…確か春祇、だったか?どうした。」
「自分を攻撃陣に入れさせて下さい。」
「?何故だ?」
理由か。まあ適当でいいだろう。
「この試合はスピード勝負だと思って、少しでも攻撃した方がいいと思ったので。」
「う〜ん。そうか。じゃあ分かった。攻撃陣に入ってくれ。」
黒原に承諾をもらい、羽島と同じ場所に移動する。
すると羽島は少し疑問そうな顔で聞いてきた。
「あれ?奏、なんでこっちに?」
「チェンジしたんだ。」
「そうなのか。」
「それより、最後だから全力でやってくれ。」
「お、やっとか!」
羽島と会話してると、合図が聞こえた。
「それでは、3セット目を始める。…スタート!」
合図がなり、一斉攻撃陣が走り出す。自分は周りよりも少し遅めに走り出した。そして相手の守備陣が止めに来て、ぶつかり合う。
自分は前で攻防戦している人たちの背後に入って隠れる。そして隙ができた瞬間に移動するの繰り返しをして確実にかつ素早く移動し、確実に棒に近づいる。
うちの棒は守備陣がうまくいってるのか、思ったより攻められてない。
「…はぁ…。」
「なんだ、そのため息は。」
「…いや、なんであなたがいるのかなって。」
「それは、棒倒しに参加してるからな。」
「………」
生徒会長は何故か自分の前に来ていた。
「悪いが通さないぞ。負けたくないからな。」
「…そうですか。」
自分は腰を少し低くする。そして生徒会長の隙を探す。
…生徒会長も同じことしてるな。
「どうした。早く攻めてこないのか?」
「……煽りますね。」
人は緊張感などを察すると、慎重に動こうとする。自分はそれを利用して守備の時、無理やり相手を自分のペースにもっていき、過剰な緊張感を持たせて相手の行動を封じていた。
生徒会長も今、全く同じことをしてきている。下手に動くと駄目だ、と思ってしまっている。
だが、自分はそれを判っている。だから無理やりいってしまえば生徒会長を振り切れる。
「………」
「甘いな、そんなんじゃ抜けないぞ。」
けれども自分は抜けようとはしない。ここで抜けてしまえば面倒くさいことになると思ったから。
生徒会長は普通に目立つ。なので今この状態でも視線は集まっている。今ここで振り切ってしまったら目立つ。
目立ちたくない。こんな理由でやろうとしないなんて誰か知ればなんて言うのだろう。まあ…
「…勝ちましたね。」
「なんだと?」
まあ、生徒会長がこちらを止めに来ようが来なかろうが、すでに『勝ち』は決まってるがな。
生徒会長が自分が言った言葉に疑問に思ったのか聞いてきた。
「おらーーー!!」
その瞬間、赤ブロックの棒が倒された。羽島が『作戦通り』に出来たようだ。




