52話 ハンカチ
自分の部屋でぼっとしているとインターホンが鳴った。家には誰もいなかったので自分が出ることにした。
カメラで見ると如月だった。
「こんにちは、奏くん。」
「…ああ。」
扉を開けると手に宿題を入れた鞄を持った如月がいた。
「とりあえず自分の部屋に行くぞ。」
「うん。どんな部屋なんだろ〜。」
何を想像しているか知らないが残念ながら特に自分の部屋には何もない。
「ねぇ、家の人って誰かいないの?」
「母さんたちは仕事で夜まで帰ってこないはず。」
「そ、そうなんだ。じゃあ二人っきりってこと?」
「…そうなるな。」
「へ、へ〜。」
「二人だろうが、宿題をやることには変わらないけどな。」
「もう〜テンションの下がること言わないでよ。」
遊びに来た気分ぽかったので現実を突きつけておいた。わざわざこっちの時間を使ってまでするんだから早く終わらして欲しいしな。
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「これが奏くんの部屋か〜。」
そう言って如月は珍しそうに部屋を見回す。
「そう言えば奏くんがここに住んでるってことは引っ越したってことだよね。いつ引っ越して来たの?」
「…去年の3月だ。」
去年の3月。自分はその時期に、引っ越しをした。昔の家とは、電車で一時間ぐらいだ。
「へ〜そうなんだ。」
如月が自分の勉強机の物を見ていた時、何かを取って見せてきた。それは水色のハンカチだった。
「これって…」
「…それは昔誰かに貰ったものだ。大切な人から貰った物だったはず。思い出せないけどな。」
あの日から思い出せない。いつ貰ったのか、誰から、なぜ今も自分はそれを持っているのか。
そう言った瞬間、如月が泣いた。自分はその意味が分からなかった。
「…どうした。」
「…いや、今も大切にしてくれてだってことが嬉しくて。」
「……それ、如月だったのか?」
如月は、大きく何度も頷いた。
………………そうだったのか。
「これはね、私が引っ越す日、奏くんにあげたんだ。その時の奏くんは『大切にする』って言ってくれてさ、さすがにもう忘れてたと思ったんだけど、まさか…今も持ってくれてるなんて…。」
「…………」
自分は憶えていない。その時のことも、如月のことも、自分のことも。
「…なんでだろうな、何も憶えてないのに大切なものだと思って捨てれなかったんだ。」
「そう、なんだ。」
「自分は忘れても、本能が憶えてたのかもしれない。」
「…えへへ〜。」
「どうした。」
「いや、「大切な人から貰った」って言ってくれたのが嬉しくて〜。」
如月はニヤニヤしていたが、まだ少し泣いていた。自分がそう言ったのがそんなに嬉しかったのだろうか。
この話に出てくるハンカチはいままでにもちょこっとでてます。
明日からは五章です。体育大会が始まり、ついに生徒会長が出てきます。




