26話 お兄ちゃん
球技大会一日目の夜、自分の部屋にあったものをみる。相変わらず机に置いてるハンカチは誰に貰ったか思い出せない。
自分は机の横に置いてあった二種類のラケットを見た。
一つは黒色がベースの自分がよく使っていた物だ。フレームが薄く、威力のあるショットを打てる。二本ある。
もう一つは青色がベースの『あいつ』が忘れていった物だ。一本だけ。
「............................。」
自分は自身が使っていた黒のラケットを持つ。だけど、あくまで予備としてもっていくだけだ。
青色のラケットは『あいつ』の物だ。自分に使う権利なんてない。
誰に言い訳してるのだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「いやー晴れた晴れた!絶好のテニス日和だね、春祇くん!」
「.....そうだな。」
「もーテンション低い!」
球技大会二日目、テニスは午後からなので、バスケの試合を観ながら水嶋とミーティングみたいなのをしていた。
「お、羽島くんがまた点入れた、さすがだね〜」
水嶋は誰かたちが言っていた通り、有名人でとても目立っており、その隣にいる自分も必然的に視線を感じた。まあ男子のほとんどは嫉妬ぽかったけど。むしろ代わってあげたいくらいだけど。
「というか、ラケットせっかくもってきたのに使わないの?」
「古いからな、学校のやつの方が良いんだよ。」
「へ〜。」
そんな会話していると羽島たちのチームが試合に勝った。やはり圧倒的勝利していた。
「あの羽島くんを観て、女の子たちにモテモテになりそうだね。」
「そういうもんか?」
生憎自分は乙女心というものは知らない。そう言うと水嶋がやれやれといった感じをだす。はらたつ。
「分かってないね〜春祇くんは。女の子は案外ちょろいんですよ。」
「そうですか。」
「春祇くん興味無いでしょ。そんなんだとモテないよ!」
こう言う話は無視した方が楽だ。面倒くさいので。
なんて考えていると、何故かあの羽島の義妹がこちらに来た。
「あの!春祇先輩と水嶋先輩ですよね?」
「そうだけど何かな?」
「お兄ちゃんと仲がいいんですよね。学校でのお兄ちゃんがどんな感じなのか聞きたです!」
本当にこの羽島の妹、いや幼馴染は羽島のことを好いているようだ。
「羽島くんはいつも元気で、体育とかで活躍している感じかな。」
「そうなんですか!春祇さんから見てお兄ちゃんはどうなんですか?」
「羽島か........」
あいつの学校での感じか。そうだな....。
「基本いい奴だけど、いつも彼女が欲しいってうるさいな。」
「あ〜言ったりしてるね〜。」
「そ、そそそそんなこと言ってるんですか!?」
いきなり南が問い詰めるように近づいてきた。近い。
「あんなに私だけ見てって言ってるのに!」
なんかドラマのタイトルみたいだな。その言葉。
「ねぇ南ちゃんだったよね。なんでそんなに羽島くんのことが好きになったの?ちょっと気になって。あ、答えたくなかったら答えなくて良いよ。」
確かに気になる。兄妹愛が尋常じゃ無い気がする。まあ義兄妹だけど。
南は少し懐かしむように答えた。
「お兄ちゃん....カズ兄は優しいんです。昔私の両親は小学校の時に交通事故で亡くなっちゃって、その時私は凄く沈んでいて。親戚のところに引き取れることになったんですけど、「俺がお前の面倒見てやるって!」って言ったんですよ。」
南はその時の羽島を思い出したのか笑った。確かに子供の癖にって感じだったのだろう。
「その時思ったんですよ。私はカズ兄のことが好きなんだなって。だから色々誘惑しているのに全然反応無いし、『お兄ちゃん』って呼び方もカズ兄に頼まれたからやっているのに。」
「そうなんだ。」
「はぁ.....」
まあ羽島はそう呼んでくれって頼んでるぐらいだから、あまり女性として見てないのだろう。まあ理由はほかにあるだろうけど。
そして水嶋も何か分かったかのようにニヤニヤしていた。
「じゃあこれからは『和也くん』って呼んだら。」
「え、なんでですか、水嶋先輩?」
「『お兄ちゃん』て呼び方ってさ、まさに兄妹って感じじゃない?じゃ『和也くん』だったらなんだか恋人ぽいと思うよ!」
「.....そうですね!ありがとうございます!じゃあこれからは和也くんと言う呼び方で夜這いしてきます!それじゃ!」
そう言うと南はどこかへ行ってしまった。
てか.....
「夜這いって....」
水嶋が代わりに呟いた。
なんで高校生が夜這いするんだよ。




