まさかの予想、ある意味的中?
「さて、どうしたものかね」
今の私の状況はある意味最悪である。
『あっ、ん……そこっやめ……んあぁ!』
『ほら、抵抗しろよ。じゃないとっ、ん……もっとぐちゃぐちゃになっちゃうよ?』
『っあぁぁあ!……っぅん……ぁ……ぇ』
『っ……なに? 聞こえない』
『もっ、と……んぁっ……してっっ!』
『……仰せのままに』
「この男ドSだな」
おっと心の声がついつい。
私じゃないよ。
私かと思った? やめてよ。さすがの私も学校でこんな大胆なことはしないよ。こっちも突然のR指定レベルに驚いているよ。
あはっ、いまそこで『え、相手いんの? 』系のこと思ったやつ。正直に出てきなさーい。私は心が広いからね。
今ならけつバット100連発で許してやろう。
さて。冗談かどうかは知らないが一旦置いておこう。
私は今、扉を開けて呆然としています。正直、どうしたらいいか分かんないんだもん。なぜに昼前からこんなに盛ってんるんだ? 最近の若いもんの考えは理解できないわ。理解したくもないけど。
どうしようかな。片足だけ室内に失礼している状態だよ。逃げればいいのか。中に先生はいなさそうだし……て、先生がヤッてる可能性もあるか。いや、でも学生の声っぽいんだよね。べつに聞きたくて聞いてるわけじゃないよ? 勘違いしないでお願い。
おい、保健室の中で勝手に盛ってんなよ。よく良く考えれば、私が遠慮する必要がないと思うんだけど。ぶっ壊してやろうかリア充め。
非リア馬鹿にすんなよ。私たちだって、マンガや小説で日々知識だけ溜まってるんだぞ!!
さっきフラグを折れたと思って油断したらこれだよ。運命は意地でも私から巻き込まれに行くことをご所望らしいね。全く迷惑極まりないよ。
でも、なぜかな。目から汗が止まらないんだ。
よし。逃げよう。これも関わったらダメなやつだ。
さっきの第1棟の時よりも答えは明確だった。迷うこともない。
私は即座に片足を廊下に戻して両足を確認。大丈夫ちゃんとある。そしていい感じのお2人に気づかれないようにそぅっ、とスライド式の扉を閉めていく。少しのカラカラっ、という音はどうやら保健室のベッドにいる2人には届いていないらしかった。よかった。きづかれずにすみそうだな。
ぱたっ……。
「な、何も見なかった」
無事扉を閉め終わると、私は自分の胸に左手を当て暗示をかけた。忘れよう。うん。何も知らない。もう二度と保健室にも行かない。何も知らないけど行きたくない。
保健室は(淫)魔の部屋として私の脳内に刻まれた。
……っは。こんなことしてる場合じゃなかった。今は一刻も早くここから離れないと。気づかれてないのが奇跡に近いんだから。
取り敢えずダッシュ。そんで、早く平和なあのクラスに戻ろう。あともう少しで予鈴もなる頃だろう。結局早退の許可もらってないけど、明日香に間宮先生に後で言うように頼もう。
ーーーーこのまま全力疾走して教室に戻っていたのなら、私の運命は普通だったのだろうかーーーー。
そろそろ授業も終わる時間だろうし。っと、噂をすれば。
ゴーン……ゴーン。
チャイムが校内に響き渡る。あー、鳴っちゃった。たしかこの次の授業は、
ゴーン……ごゎゎゎゎん。
古典だったかな。あ、早退許してくれるかなぁ。風間先生厳しいから不安になってきた。でも、確か今日のSHLで先生が芸能科の監督でいないとかいって……ごゎゎゎゎん?
急ぐ足が、止まる。そして思わず瞬きを2回。
ん?
え、え。気の所為、かな。
よ、よぉし。もう一回聞いてみよう。もしかしたら風間先生の恐怖が思った以上に自分に影響してるのかもしれないしね。
ゴーン……。
うん。やっぱり聞き間違いだったみたい。チャイムは正常だ。
よし、教室にもど、
ごゎゎゎぶっ……。
き、聞き間違いじゃなかったぁぁ!?
壊れたよね。完全にチャイム壊れたよね。だってごゎゎゎんって何。しかも最後なんかチャイム耐えきれずに切れたよ。ぶっ、て。え、突然どうしたんだい。
あれかな、日々の労働に疲れてチャイムくんも反抗期に突入したのかな。この学園見た目は毎年工事してるから綺麗だけど、伝統はありそうだし。やっぱり給料欲しいのかな。一応古株だもんね。いたわってほしいよね。
可哀想に、と思いながら再び止めいていた足を動かす。普通科と芸能科の第2棟に音楽科の制服は、流石に目立ってしまうから。できれば生徒たちがが廊下に出る前に第3棟への渡り廊下にはいたい。
急いで階段を上る。階段を上る前に一応後ろを振り返ってみたが、保健室の彼らはチャイム一つでやめるような人達ではなかったらしい。
よし、この感じなら早めに戻れそうかな。どうせなら職員室2階だし、直接先生に言いに行こうかな。間宮先生いるかな。普通科も担当してるんだよねあの先生。
「わぶっ」
考え事をしながら階段の曲がり角を曲がった時、突然衝撃が体にはしった。そして、私の口から間抜けな声が漏れる。
と、すぐに。
「……っ! す、すいません! 」
綺麗なソプラノ声が廊下に響きわたった。