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Muse  作者: 波丸
1章
4/10

名門学園へ3

 天使に助けられて無事ボッチを回避した私にも、さらに嬉しいことがあった。なんと、明日美だけでなくクラスメート二人とも新たに話すことができたのだ!

 すごくない!?この人見知り常習犯な私が初日でこの快挙。今すぐ叫びたいよ!弟よ、私はやれば出来るんだ。

 新たに友達になったのは、寧音こと道屋寧音みちやねおんと、ユキこと天野有紀乃あまのゆきの

 二人とも明日美と仲が良くて、私にもすごく優しくしてくれた。寧音はショートカットのイケメン女子で、ユキはサイドテールのメガネっ子。こうして見ると、個性がバラバラだなと思う。


「ユズってどこから来たの?」


 寧音がメロンパンを食べながら聞いてきた。そのルックスでメロンパンとは、寧音はギャップ萌だね。


「北の方」


「それは朝聞いたし!ちがくて……北海道?」


「うーん違うかなぁ」


 確かに北の方だけど、北海道には生まれて一度も行ったことがない。寧音は私の反応に少しぶすっとして、「じゃあどこ」と聞きながらまたメロンパンをひとかじり。


「アメリカ?」


「「「アメリカ!?」」」


 おお、全員重なった。明日美はともかく、ユキも大きな声出せるんだな。


「あんまり言いたくないんだけどね。私、英語あんまり話せないし」


 あの頃は引きこもってたからなぁ。常に部屋でダラダラ……はしてないけど、中学性らしからぬ事をしてたよ。

 さっきからユキの視線が痛い。なんだろう?アメリカに憧れてるとかかな。好きな音楽家がいるとか。


「私の兄も、アメリカにいるんでふっ!」


「ユキ、とりあえず落ち着いて」


 苦笑いしながら明日美がユキをなだめる。そうだね。ユキはとりあえず口に含んだハンバーグを飲み込もうね。

 そんな2人の様子を見て、私と寧音は目を合わせて笑い合う。

 なんか、和むな。朝はこんなに早く友達ができるとは思ってもいなかった。みんないい人ばかりで、このクラスの雰囲気も悪くない。


「由紀乃のお兄さんってたしかギタリストの?」


 明日美が思い出したように呟いて、ユキは目をキラキラさせて頷く。


「私の両親や天野の家とは対立してて。でも、お兄様の音は本当に素晴らしくて。いまはなかなか会えていないんですけど、私の憧れなんです。」


 少し空気が重くなったのは気のせいではないのだろう。家の事が絡んでいるとなると、ユキはどうやらかなり名家の出身らしい。この感じだと、明日美達は何かしら知っているのかな。


「へぇ。ユキはブラコンなんだね」


 そう言ったら、一瞬3人がぽかんとした。


「ぃだっ!」


 いきなり寧音に叩かれた。ひどい!叩かれたことはたくさんあるけどね。うーん、しかしさすがに勢いがありましたぞ。

 でもなんかユキ顔赤いしー、否定しないしー、これは当たりかな。って、ユキそれは食べ物じゃないよ。それ食べたら多分喉に突き刺さるだけだよ。


「ユズお前KYか!」

 

「あ、ゆきちゃんそれようじだよ……て聞いてるゆきちゃん!?」


「て、照れますぅぅ。秘密なのに。兄様は確かにかっこいいけど、でも!」


「えぇ、ねおっちそれ今更だよ?ど・ん・か・ん♡」


「ねおっち……?よし待ってろ。いまから医者呼んでくる」


 いやー愉快愉快。このメンツ楽しいな。

 ちなみに上から、寧音改めねおっち、明日美、ユキ、私、そしてねおっち。

 私はそんな3人を見てニヤつきながら、ねおっちの持っているスマホを取って、止めさせる。いや、まじで呼ぶつもりなのねねおっち。やめてねほんとに。あせったから。

 よし。お昼も食べたし、用事済ませないとね。


「あれ、どこか行くの?」


 突然立ち上がったから、明日美がユキの背中を擦りながらこちらを向いた。ユキ、落ち着いたみたいだね。ほとんど私のせいだけど。


「ちょっと用事?」


「なんで疑問形なんだよ」


 ねおっち仮にもお嬢様なのに口悪いなぁ。ユキとは全然違うよね。あ、これいい意味でだよ?なんか、気を使わなくて楽なんだよね。


「さぁ。あ、多分放課後まで戻らないから」


 さてと。これでサボりにはならないかな。

「え?」という明日美の声に背を向けて教室をあとにする。これでも焦ってるんだよね。思っていた以上に楽しくて時間をロスしてしまった。私としたことが。あは、いつも遅刻ばかりだからかわんないな。

 でも焦っているのは本当。だって、昼休み中に呼ばれてたのにあと5分で予鈴が鳴ってしまうのだ。これは流石の私でも機器を感じる。全然行きの時間の事考えてなかった。この棟は少し離れてて、目的の場所があるところは職員室の隣。つまり、遠いんだよねここから。一度階段を降りてあとは渡り廊下をまっすぐだったよね。

 急いで2階へ降りると、そこはまた違った雰囲気に包まれていた。なんか、女子高みたいな気品のある感じ?

 声楽科は女子しかいない少数クラスで、制服も白がベース。音楽科よりも規則が厳しいと間宮先生が言っていた気がする。少し廊下を通ってみても、誰1人私みたいに焦りとかなく、優雅に談笑している。うぅ、花が見える。私はどちらかといえば芋虫レベルなのに。ここにも差別があるとは!

 なんて少しイラつきつつ、無事声楽科ゾーンを抜けた。もうすぐ授業が始まるからか、渡り廊下を通る人はもう誰もいない。予鈴前にはみんな教室にいるのか。すごいな。

 さっきの教室とは静まり返ったこの空間に、少し気を整える。そして、急いでいた足を思わず止めてしまった。


「綺麗。」


 光が見えた。

 渡り廊下は窓がたくさんあって、日差しが直接入ってくる。景色も、森の中にある学園らしく、邪魔なものがなく美しい事前そのもの。つい、歩く速さをゆるめて魅入ってしまうほどに。

 こんな景色、見ることが出来るなんて。私は、ここで何か変わるかもしれない。

 そんなことを柄になく思っていたからだろう。



 私は景色に夢中で気が付かなかった。







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