7・遭遇
でけえ。
街を囲む砦は本当に大きくて、俺が元いた世界でいえば高層ビルをずっと横に伸ばした感じだった。
ただ、これは、ラフィの言っていたカゼッタ関門ではなく、カゼッタ国を取り囲む要塞だ。こうしないと、モンスターがひっきりなしにやってきてはおいそれと安心して暮らせないという。
カゼッタ兵と少しやり取りがあったのちに、馬車が大きな門を通る。
「……おお」
思わず、窓から身を乗り出してしまった。なんていうか、活気あふれる光景というか、まるでヨーロッパのロンドンやらそこらに旅行にきたような賑やかさだった。……まあ異国というよりは異世界なのだが。
リンゼンブルグ王国もすごかったが、あまり長居できなかったし、雰囲気も違ったのでこれはこれで新鮮な驚きだった。
「どこの国も、入口付近はとても栄えています。観光客や商人の出入りが多いですから」
ラフィがこっちを見て言う。
「なるほど」
そのまま、馬車はどんどん前に進んでいく。
だが、進んでいけば進んでいくほど、どこか様子がおかしいことに気づく。
兵士が多くなって、物々しいふんいきが目に見えるほどに広がっていた。
俺が気になってラフィに尋ねようとすると、こっちが何か言うまえにラフィは「これが、カゼッタ国なんです」と言い、
「どこか息苦しいですよね。そのぶん、治安はいいのですが……」
そんな話をしながら、もっと奥に進んでいく。快調に馬車は進んでいたのだが。
ただ、数十分後、途中で先に進めなくなった。なぜなら、前に人だかりができていたからだった。
「なんだなんだ?」
俺は座席のあいだから、前方を確認する。が、とにかくやじうまが多くてまったく確認できない。そいつらの背中しか見えない。しかし、ざわざわとした話し声は、何やら事件が起きている、ということだけは確実に伝わってきた。
「降りてみましょうか」
ラフィが言う。
「姫さまがこんな街中に降りていいのかよ……」
「よくありませんね」
「撤回早っ! えっと、とりあえず様子見てくるわ」
「大丈夫ですか、カケルさま? こちらの世界には詳しくないですよね? 迷子にならないでくださいよ?」
ラフィがじとーと目を細めてきた。
「俺をなんだと思ってるんだ!?」
まあ確かに、俺が降りたからどうなるという問題でもないだろうが。
とにかく、いったん馬車から降りる。回り道をすればいい気もするが、とにかく放っておけない雰囲気だった。
その途端、
「お願いします! 兵士さま!」
大きな声がその人だかりの中央から聞こえてきた。




