Episode④
「んじゃ、そろそろ失礼します。
これからもよろしくお願いします」
そう言って志倉さんは帰って行った。
母さんは僕が使っていたコップを残して
他のコップを洗い出した。
そんな母さんを見て僕もテレビを見だした。
テレビに出てみたいと思った事もある。
こんな紙に載っただけで、
僕の目標というかモデルを
始めた理由とも言える事は達成できない。
でもテレビに出たら、
僕の居場所は益々、無くなるだろう。
だったら地道でもいい。
いつか気付いてもらえるように
必死にモデルというこの職業、この居場所に縋り付く。
「ねぇ、永利。明日は学校休みなさい」
「えっ?なんで?」
滅多にそんなことを言わない母さんが
いきなりそう言ってきたことに驚いた。
「なんでって、永利、貴方
そんなボロボロの身体で
学校行ってもまた倒れるのわからないの?」
「ボロボロ?僕が?大丈夫だよ……」
「貴方、気付いてないの?
これからも、モデルのEinとして
仕事をしたいのだったらちゃんと休息を取りなさい」
「だから、なんで?
僕は別にどこも悪い所なんてしてないけど」
「だとしても休みなさい」
「だから、なんで?
理由を言ってくれないと……」
「はぁ……分かったわ……」
「理由は……なんで……」
「だって、貴方……
今日、倒れた理由、貴方のサイン会のせい
だと貴方のクラスメイトから聞いたからよ」
もちろん、貴方がEinだという事は
気づいていないと思うけど……と言っていたが
僕はいきなりそんなことを言われて
驚きすぎて言葉が出なかった。
ただ僕が体調が悪くなったからとしか
伝わっていないと思っていたから
なんでそんなことが伝わっているのか、
そしてクラスメイトというと
叶夢ぐらいしかいない。
だとしたら叶夢は、僕に気付いてる……?
嘘だ、そんな訳はない。
だって、髪の色も、眼の色も違う。
伊達メガネだってしてる。
でも、伊達メガネを外したら?
パーツは一緒なんだ。
気付いていたとしても全く可笑しくない。
そう思うと一気に恐怖心が溢れだしてきた。
震えが止まらない僕を
後ろから抱きしめてくれる母さんは
再び同じ言葉を囁き、
僕はゆっくりと頷いた。