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2:ジョブ選択


目を開けると、目の前のウインドウに選択可能な職業が表示されていた。


《テーラー》

《ファイター》

《テイマー》

《フットマン》


ふむ、4つか。中間、真ん中、普通・・・いかにも俺らしい。


ATOの売りの一つに職業選択の多様性がしばしば挙げられる。公式サイトでも全職業を紹介しているわけでもなく、代表的な職業の簡単な説明のみだった。βテスト時も訓練された猛者達がデータまとめを作成していたが正式版発売に向け「初心の気持ちで楽しんで欲しい」と公式からコメントがあり、血の滲む努力で作成されたであろう攻略サイトは閉鎖を余儀なくされてしまったらしい。実際に発売に先駆け自分でも調べてみたが、ことごとく「404 File not found」となっていた。


そういうわけで俺のATOに関する知識は、友人ハルのプレイ感想と公式サイト上での情報しか知らない。俺自体は基本的に攻略サイトを見ないで遊ぶ方が楽しいので特別害はない。が、とりあえず散って行った先人の努力に敬礼しておく。


さて、俺の候補に挙がった職業は先ほどの4つ。1つづつ選択してウインドウを開くとそれぞれの項目が出てくる。纏めるとこんな感じだ。



《テーラー:防具作成で活躍する 得意武器・縄》


《ファイター:前衛戦闘が活躍する 得意武器・剣、盾》


《テイマー:魔獣調教・使役で活躍する 得意武器・鞭》


《フットマン:臨機応変に活躍する 得意武器・槍、片刃刀》



記入されているのは職業の特徴と得意武器の種別だけだった。職業特徴の方はなんとなくしかわからないが武器種については公式サイトに載っていた。

どうやらこのATOの設定上、職業ごとに得意とする武器があるらしく固有スキルの威力に左右するらしい。

例として、

「職業:ファイター 装備:剣」の時と「職業:ファイター 装備:槍」の場合でファイターの第1スキル「パワースラッシュ」を使用する。

→「剣ファイター」は100%のスキル本来の威力が出るが、「槍ファイター」は70%の威力まで減衰してしまう。


要は強い育成をしたければ素直に得意武器を装備しておきましょうって事だ。色々考え付くことはあるが、ひとまずは目の前の職業選択をするとしよう。


「テーラー」は特徴から察すると生産職か?つか得意武器・縄って。一応R15入ってるしいいのか?ってこの思考がおっさん化してるな。

「ファイター」はどのゲームにも大抵あるな、得意武器からもイメージできる。

「テイマー」…説明だけ見るといわゆるサモナーみたいなものか?敵を仲間にして戦うとかかな…面白そうだ。

最後の「フットマン」は…判断がつかない。ピンポイントの説明はないが得意武器と合わせて考えると【槍で中距離・片刃刀で近距離に臨機応変に活躍できる】みたいな感じなのか?ソロ向けっぽいけど。


情報が公式サイトに掲載されている「ファイター」しかない以上、他の職業は完全に俺のイメージだ。得意武器種のスキルがある以上、《フットマン》の多様性に期待したいところではあるな。よし、これに決めた。あと名前が足早そうだし。イメージとしては他ゲームの『ローグ』や『シーフ』的な立ち位置だと予想した。気に入らなければ少しゲームを進行した後に転職すればいいし。そう考えながら《フットマン》を選択する。


《職業:フットマンの選択を確認》


《該当する初期装備をアイテムボックス内に送ります。ゲーム開始後確認してください》


《続いてサブスキルの選択に入ります》


《装着可能なサブスキルを表示しますので5個取得してください》


サブスキルのリストが目の前のウインドウに表示される。

ATOのスキルは「メインスキル」と「サブスキル」に分かれている。攻撃や生産に使うスキルの主なものは職ごとのメインスキルで充てられており、あくまで「サブ」のスキルということだ。一通り見てみるが…実用性の高そうなものからネタ的なものまで幅広く揃っているな。このサブスキルも職業と同じで詳しくは情報公開されていない。リストアップされている選択可能なスキルは20程。職業×サブスキルの組み合わせはこれまた膨大な数になりそうだ。

「このゲーム、行動によってスキルが増えるから最初のスキルは何でもいいと思うよ~」とハルも言っていたし、ちゃっちゃと選んでしまおう。




というわけで、俺が選んだスキルはこちら。


【空中跳躍:空中ジャンプが可能になる(※初期スキル取得時限定)】

【暗器:サブウェポン「暗器」の使用が可能になる】

【売買金額割引/増:売買取引時、金額1割ダウン/アップ】

【愛想:NPC友好度が上がりやすい※ジョブ限定スキル】

【抜き足:足音が小さくなる】


うん。別にアサシンプレイやPKをやりたいわけじゃないんだ。まぁ聞いてくれよ。

【暗器】は手数を増やすのに必要かなと思ったし、【売買金額割引/増】なんておそらく冒険初期には大変ありがたいスキルになるに違いないのだ。どうせ最初は倒したモンスターの素材などを売り払ってお金を貯めるのだろうからあって越したことはない…ハズ。



【空中跳躍】なんてVRならではの夢があるではないか。男なら一度はゲームみたいな事をしてみたい。あと、限定の文字にやられた。【抜き足】は戦闘時に奇襲でもできるのか?と思って取ってみた。これで使えなかったら悲しいな。

【愛想】は何に使うか今の所わからないが、ジョブ限定スキルなら悪いものじゃないだろうと楽観視している。悲しい日本人の性である。



《サブスキルの選択終了を確認しました》


《ゲーム開始はAM8:00からとなります。今しばらくお待ちください》



現在時刻から考えてあと10分程か。VRの感覚に馴染む為体の動作を確認する。一通り確認し終えたところで、現在の近未来的な空間がいきなり地平線が見えそうな草原に切り替わる。ふっと体に浮遊感を覚えゾワッとした。



《《かつて、ひとりの少年はこう告げた》》


ナビちゃんとは明らかに違う、低音のイイ声が何かを喋り始めた。姿は見えず、声が響くだけである。


《《虐げられる人々を救いたい、と》》


《《かつて、ひとりの青年はこう告げた》》


《《愛する家族をこの手で守りたい、と》》


《《そして、かつての壮年はこう告げる》》


《《守護すべきは自身の両の手中のみであればよかった、と》》


《《ひとりの悲しい人間が邪悪な悪魔と手を結び》》


《《この世を魔獣の氾濫する大地へと変え、人々を侵略した》》



ふむ、話を聞いてみたところこの世界の成り立ち、いわば紹介ムービーか何かか。風景は魔王っぽい男が出てきたり、大地が炎に包まれ大きな獣の影になったりと忙しなく切り替わる。

今は神殿の玉座?に向かい合っている。



《《されど、人の子らよ。恐るるなかれ》》


《《天の子の魂を分けし此の世界の救世主達》》


《《人々の寄り辺となりて、生涯を全うせよ》》


《《いざ行け。混沌なる大地に世界の救いを与える為》》


《《ぬしらに神の加護があらん事を》》




瞬間、壮大な音楽と共にこのゲームのタイトル【Another tales online】の文字がゆっくりと表示された。

ムービーは終わったようで、体の自由がきくようになっていた。メニュー画面を呼び出し時間を確認するとちょうど8:00と表示されている。



《それでは、もう一つの物語へ。いってらっしゃいませ、ヘイ様》








いよいよゲームが始まります。

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