吹雪(元)の王子は解凍済1
喰えない女だ。
エリア・アルシード外交官。
「今日の案内は千嘉様ですね。」
ニコニコとアルシード外交官が言った。
さりげなくちかとレーギュウス陛下を並ばせようとしている。
「カイト、頼んだぞ。」
私は言った。
異世界外交中なので仕事量は多い。
「はいよ、まあ、ちかは大丈夫だろうが…。」
カイトは言った。
良い友を持ったものだ。
この魔法商人とはカータシキ魔法塔国
のマルティウス師匠の所で共に学んだ。
まあ兄弟弟子だ。
実はカイトの方が少し年下だからな。
「シグさん、いってきます。」
ちかが微笑んだ。
今日は長袖たて襟のチュニックとズボンをはいている。
私の囲いたい気持ちを配慮してくれたらしい。
ああ、でもさわりたい。
「シグさん?」
ちかが言った。
ちかを抱き締めて口付ける。
「熱いな。」
レーギュウス陛下が言った。
「あらあら。」
アルシード外交官は底知れない微笑みを浮かべた。
ちかを出したくない。
「カイトの若旦那、どこからいくんですか?」
ちかが言った。
「王立クレシア美術館だな、オリファール音楽堂も入れた、ラライア空港も芸術家ダライワースの近未来的な作品だしな。」
カイトが言った。
なるほどつれ回して疲れさせる作戦か。
「シグさんと王立クレシア美術館は行って、ラライア空港はトスモル技術国行くとき行ったけど、オリファール音楽堂は行ったことない。」
ちかが楽しそうに言った。
そう言えば、休みの日は最近ほとんど
私とこもってたな。
たまには出るか?
「あとはヘイワードブリッジだなカソラ・ヘイワードの作品だ。」
カイトが言った。
やはり詳しいな。
「よろしく頼む。」
美貌の皇帝が微笑んだ。
麗しい男だ。
さっき階段を一段飛びに上がってたのが
見間違いそうに繊細な美貌だ。
「千嘉いこうか?」
レーギュウス陛下は嬉しそうに
ちかに腕を差し出した。
緊張が走る。
「いきましょうか。」
カイトがその手をつないだ。
ある意味スゴい光景だ。
「きゃ、素敵。」
アルシード外交官が呟いたのが聞こえた。
…貴女はそう言う趣味なのか?
「似合ってるよ、カイトの若旦那。」
ちかがニヤニヤした。
「そうか?オレは仕方なくだな…。」
カイトが言った。
「私は千嘉に差し出したのだが…。」
レーギュウス陛下がゴニョゴニョ言った。
「シグさん、いってきます。」
そう、もう一度言ってちかは私の頬にキスをした。
ああ、なんて甘美なキスなんだ。
ちかからなんて…。
これだけで少しは我慢できる。
でも、早く帰ってきてほしい。
不安で不安で仕方ない。
ちかを信じている…。
それでも、不安だ。




