余生闇精霊は覚醒する。
ここ、どこだろう?
雲の上みたいだ…。
フカフカ…ベッド?
「目をさまされてのですね。」
知らない女の人が顔をのぞきこんで言った。
ああ、声が出ない…。
でもやっぱりここはベッドだ…フカフカの。
「お待ちくださいませ。」
彼女は言って踵を返した。
あー、行っちゃったよー。
動こうとしたけど動けない?
起き上がれないよー。
どういう事?
「ちか、よかった。」
シグさんが覗き込んだ。
ついでに抱きつかれた。
なんか重病人扱い?
相変わらず綺麗だな。
でも、抱きつかんでも大丈夫。
スキンシップは日本人な私にはきついんです。
「ここは…どうして?」
私はやっと声を出した。
声出すのも辛いよ。
「ここはクレシア芸術国です、ちかは3日寝ていました。」
シグさんが言った。
そんなに?界渡りしたからかな?
「すみませんね。」
私はかすれた声で言った。
迷惑かけまくりだよね。
「ちかの世界と連絡を取りました。」
シグさんが私を静かに起こしながら言った。
「連絡、取れるんですね。」
私は言った。
もしかして、帰れる?
「グーレラーシャ傭兵国に次元門が有って、ちかがルナと同じ明正和次元の人ならと思いまして。」
シグさんが言った。
と言う事は明正和次元と交流がある世界なんだ。
シグさんやありがたいよ。
次元門ある世界で良かったよ。
帰れるぞー。
「ありがとうございました、私、帰れますね。」
ニコニコしながら私は言った。
あー、顔も何か痛いや。
「それが、そちらの世界から来てくれた人が、ちかを診てくれたのですが…。」
シグさんがいいづらそうに言った。
なんかいやな予感がする。
「ちかは保護なく召還されたので、身体にダメージが多くあり、当分次元門が使用出来ないそうなんですよ。」
ええ?困るよ。
仕事があるし…。
「どのくらいですか?」
一月?二月?
早く帰りたいよ。
「未定だそうです、少なくとも年単位でみないと回復がどのくらい進むかわからないと…。」
シグさんが言いにくそうに言った。
年単位…。
私、失業決定じゃん。
困った…稼ぎたいのに…。
帰れる手段はあるのに、かえれないなんて…。
まあ、しかたない…心機一転頑張ろうか…。
明正和次元にいる以上、あの人の動向は耳にはいるしね。
ここの方がいいかも。
「シグさんや、どっかにいい就職先ないかね。」
看護師か機能訓練師かな?
使える資格は、通用するかな?
「…ちかの仕事は当分、体力回復ですよ。」
シグさんは言った。
まあ、そうだよね、動けないし。
「水下さい。」
喉乾いたよ。
シグさんはコップに入った水を飲ませてくれようとした。
飲んだとたんにむせ混んだ。
わー、嚥下困難のお年寄りか私は。
久しぶりに飲んだから通らないのかな?
「ちか、大丈夫ですか?」
シグさんが背中をさすってくれた。
優しいな…こんなオバチャンに。
あ、水飲むのかシグさん…。
あの~、口含んだ水分口移ししましたね。
そういや、傷なめた人だった。
このくらいへっちゃらなのかな?
いやーんダメージがぁ…。
「今度はのめましたね。」
シグさんは微笑んだ。
「そこまでしなくても…。」
余裕なんかい慣れてるんかい。
いたいけなおばちゃんを翻弄せんで欲しい。
「役得ですから。」
嬉しそうにシグさんは自分の口の端に垂れた水分を拭った。
色気のある人だな…。
まあ、男性なんだけどさ…。
でも、私は言うに及ばず、松本さんより美人だな。
まあ、いいけどさ。
「何かあったら、あのものに言ってください。」
シグさんは部屋のすみに控えてる
さっきの女の人を示した。
その人は見慣れない異国風の礼をした。
「ちか様の世話役を賜りました、マリオン・ミギュエでございます、お見知りおきください。」
お世話役?なんかこども扱いだな?
ああ、病人扱いか。
若いなぁ…。
悪いね、おばちゃんの世話なんてさ。
「シグルト様。」
男性が顔をだした。
誰かがシグさんをむかえに来たようだ。
「ちか、まだ話したい事は沢山ありますが、また今夜ですね。」
シグさんが微笑んだ。
綺麗だな…。
忙しいのにすみませんね。
「仕事ですね、頑張ってください。」
私は言った。
な、なんで抱きしめるんだい。
おばちゃんドギマギしちゃったよ。
「ちか、ゆったり休んでくださいね。」
シグさんは言った。
名残惜しそうに私を離して出て行った。
「さあ、ちか様お休みになってくださいませ。」
マリオンさんにベッドに倒された。
ねぇ、お年寄りなら怪我してたよ。
まあ、こういう事慣れてないだろうけど。
まあ、休んで回復をまとうかな。
休みながらこれからの事考えよう。
就職先あるといいな。