吹雪の王子は解凍中3
ちかがいないと寂しい。
なんだか昔に戻った気がする。
「なんか、華やぎがないですね。」
デアーティエ秘書官が言った。
たしかにそう思う。
ちかはハデではないが
そこでいるだけで執務室が華やいだ。
「出張させて良かったんですか?」
ファエウ内務官が言った。
「良くない、だが、ルナもうるさいしな。」
色々と活動しているらしい。
「殿下、王妃様がおみえです。」
取り次ぎが言った。
うるさいのがもう一人いるな。
「いれてくれ。」
私は言った。
「シグルト、私、聞いたのですけど、年増の地味な女性に想いを寄せていると言うのは本当ですの?」
母上が言った。
銀の髪を簡素に結い上げで
木屑のついたエプロンをしている。
趣味の彫刻をしていたようだ。
「どこで、そんな間違った情報を仕入れたんですか?ちかは年増で地味な女性じゃありません。」
私は言った。
ちかを誤解されたくない。
「ルナさんからお聞きしましたの。」
母上が言った。
ああ、母上はルナみたいな元気で自己主張の強いのが好きだったな。
ちかはおとなしいが、母上と合わないか。
「ルナの情報は不確かです。」
と言うか悪意すら感じる。
「そうなのですか?…私はシグルトはルナさんみたいな明るくて元気のいい人と結婚してもらいたいんですの。」
母上が言った。
子供一人だと多大な期待がかかるな、ちかと結婚したら最低二人だな。
従兄のように沢山作りそうな気も
するが…まあ、それはそれでいいな。
「どうしましたの?疲れてますの?」
母上が心配そうに言った。
「大丈夫です、子供は何人ほしいか考えていただけです。」
私は言った。
「……まあ、そう言う関係ですの?」
母上が言った。
「そうならいいんですが。」
私はちかとの進まない関係を
思いため息をついた。
ちかはやっぱり今でもあの男の事を
想ってるのだろうか?
異世界の皇帝だと言う、不実な男を…。
もどかしいな、同じ世界の人間なら
すぐに牽制しにいくのに。
「シグルト、あなたはまだ若いですわ、もっと周りを見てからでもいいんじゃありませんの?」
母上が言った。
周りを見た結果。
私の容姿及び身分しか見てない女しか
世の中にいないと思った。
思ってた。
ルナが来てから特に思った。
でも…。
ちかにあった瞬間。
どうでもよくなった。
自覚症状はなかったけど、
身体は素直だったな。
自分でも、傷なめたりは普通引く。
でも、ちかにどうしても
触れたかった。
「調子が悪いんではありませんの?」
母上が言った。
「そうみえますか?」
私は言った。
「…元気がありませんの。」
母上が言った。
「好きな人が出張してるからです。」
何を言ってるんだ?
いつものようにごまかさないのか?
「シグルト、変わりましたの?」
母上が小首を傾げた。
そう言えば、父上も
このどこかとぼけた。
母上にあってから
調子を崩れぱなしだったと
当時の事を祖父上がいってたな。
面白かったよー、あの唐変木がさーと
私も面白がられてる?
変わった?
「王妃様、恋すると人は変わるものです。」
デアーチィエ秘書官が言った。
書類を抱えている。
「シグルトも変わったと言うことですの?」
母上が小首を傾げた。
「そう思います。」
デアーチィエ秘書官は書類を机におきながら言った。
ちかがいれば執務室も仕事も
楽しいのに。
私はため息をついて書類の山を見た。
「その方に一度会いたいわ、帰ったらお茶会に招待いたしますの。」
母上が言った。
良いですけど、お茶会企画できるんですか?
母上、そう言うの不得意じゃないですか。
「わかりました、でも、私もついていかせていただきます。」
私は言った。
「え?女の夢園?なんだからシグルトはだめですの。」
母上が言った。
夢園って…それをいうなら花園でしょう。
ああ、不安だ、ものすごく不安だ。
ちかを一人でお茶会に出すのもだが。
母上のお茶会企画も何がどうなるか…。
先回りして女官長にたのんでおくか…。




