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吹雪の王子は師匠を止められない。

マルティウス師匠がまた、

犯罪行為をしでかしそうと聞いたので

私はカータシキ魔法塔国に転移の術で飛んだ。


まったく、何を考えてるんだ?

大師匠に締められるぞ。


「師匠!これはなんですか?」

マルティウス異世界人研究所に駆け込むと

異世界人召喚魔方陣は

もう、発動していた。

「…ああ、シグルト良いところに。」

師匠のマルティウスは妖しい微笑みを浮かべた。

「ルナがこの手に戻ってくるから、翻訳の術を頼むよ。」

師匠は言った。

ああ、確かに私の方が得意だけど。

翻訳符(ホンヤクフ)準備してないんですか?


松本ルナは、一年前、召喚陣実験の失敗で

…そう失敗でだ。

やって来たピンクの髪の若い女性だ。

私を追いかけまわした。

師匠の好意を翻弄しまくったし。


…あのこうるさい女を召喚したんですか?

やっと帰したのに。

グーレラーシャ次元門から送りだしたときどんなにほっとした事か…。

ルナはうちの国では受けが悪い。

そのせいで異世界人に少し不信感がうちの国で生まれたよ。


「犯罪行為ですよ。」

私が言うと師匠はまた妖しい微笑みを浮かべた。

「それがどうした…ああ、愛しいルナ。」

師匠が言った。

熱にうかされたような目をしている。


ああ、ルナごときがお好きなのか。

何言っても無駄だな。


たしかに美人だがあの程度の女はいくらでもいる。


やがて光は収まり師匠はルナを抱き止めた。


私は魔方陣に向けてしぶしぶ翻訳の術をかけた。


「どういう事よ、マリク!」

ルナは叫んだ。

相変わらずうるさい女だ。

師匠はルナの手を握った。


「ルナ、なんてつれないんだ、僕は君の事をこんなに思ってるのに。」

師匠はルナを抱き寄せて口づけした。

なるほど、師匠は恋してるらしい。

「何すんのよ!」

ルナは口元をぬぐった。

口づけされたごときでうるさい女だ。

「…ルナ、ゆっくり話そうか?」

師匠は背筋が寒くなるような笑みをうかべた。

そしてこうるさいルナの腕をつかみどっかへ連れて行った。


ああ、うるさかった。


ルナもパニック起こすと私に気がつかないみたいだな。


うん?床にもう一人転がってる。

生きているだろうか?

師匠は多分ルナしか保護魔法をかけてないと思うけど。


まさか…死んでないよな。


「大丈夫ですか?」

とりあえず声をかけてみよう。

その人は身動きをした。


すごいな。

どんな状態か確認して治療を受けさせないと。


起き上がらせてやらないと起きられないか?


「起き上がれます。」

柔らかな声がした。

なんとか自力で起きられたようだ。


…痛々しいな、傷だらけだ。

ルナなら大騒ぎだな。


「傷だらけですね。」

私は言った。


可哀そうに…。

可憐な顔まで傷が出来ている

…今、なに思った?


彼女は手のひらから出た血を茫然とながめている。

なんて柔らかそうな手なんだ…。


なぜ、私はこの女性の手の傷をなめているんだ?

思ったとおり柔らかい、離したくない。


「血は止まりました、そちらの手を。」

私は言ってもう片方の手を持った。


なんでまたなめてるんだ。

柔らかい手の感触が舌に感じる。


おかしい、なぜかこの人に変態行為をしてしまう。


「師匠が申し訳ない事をしました。」

床に座って顔をしっかり見た。

そういいながらも彼女の顔から目が離せない。


神秘的な黒い瞳は同色の髪にふちどられて不安そうだ。

花のような唇は口づけを誘ってるように可憐だ。

私は何を考えている。


「あの~、ここどこですか?」

彼女は言った。


落ち着いてやっぱり心地いい声だ。

やはり、あの唇に…やっぱりおかしい。


「ここは、カータシキ魔法塔国のマルティウス異世界人研究所です。」

いいながらも彼女から目が離せない。

ルナと違って落ち着いた大人の女性の色香を感じる。


「ここの研究員かなんかですか?」

彼女が不審そうに言った。

すごく否定したくなった。


かわいい頬の傷をなめてから答えた。

…私はどっか変なスイッチが入ったみたいだ。


「私は、ここの研究員ではありませんよ、師匠の犯罪行為を嫌々ながら止めにきただけです。」

ルナがどうなってもかまわないが師匠は

かなりまずい事をしているからな。

止められなかったが。


まったく、あの人は…カータシキ魔法塔国の塔王になったくせに…。


「私は名前は相川千嘉です、千嘉の方が名前です。」

彼女が言った。


ちかと言うのか。


「シグルト・クレシア…シグとでも呼んでください。」

ちかにはそうに呼んでもらいたい。

身分もまだ名乗りたくない。

先入観をもってほしくない。


直後ちかが倒れた。

私は床にぶつからないよう抱きとめた。


「ちか?ちか?」

呼びかけると、ちかは薄目を開けた、

動けないようですぐ閉じられたが。


知り合いの医院に抱きかかえて駆け込んだ。

「シグルトさん、この人かなり衰弱しています。」

知り合いの医師は言った。

「転移の術には耐えられないですか?」

私は聞いた。

出来れば国に早く連れ帰りたい。

「…飛行挺の方が無難ですよ、体組織が耐えられるかどうか。」

医師は検査結果を見ながら言った。


やはりダメージをおっているようだ。

師匠のせいだな、すまない、ちか。


「ただし、点滴してからにしてください。」

医師が看護師に指示を出した。


看護師がちかの腕に点滴の針を刺す。

痛々しい…。


医師の指示に従い点滴を受けさせた。

ちかは一度も目を開けず身動き一つしない。


「また、あの黒い瞳が見たい。」

彼女のそばにつきながら呟いた。

可憐な唇に口づけを…。

何を考えてるんだ…。


ちかは飛行挺でも目を覚まさなかった。


もう、目覚めないのだろうか?

そんなのは嫌だ…。

何なんだろうこの感情は?

ちかを飛行艇の座席で抱きかかえ

艶やかな彼女の髪を撫でながら思った。

ちか…戻ってきてください。

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