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白のキャンバス  作者: 夢原ノゾム
少年編
5/9

『白』、依頼を受ける





 レンが、ハンターになって半年。 


 世界の動きなど知らないレンは、集会場にて受けられる依頼を探していた。


「ん~……これにしようっ!」


 依頼が貼ってある掲示板から一枚の紙を剥がし、カウンターにもって行く。


「お姉さーん。これ、よろしくー!」


「は~い。……ってレン君、また『雑用系』なの? しかも今回のは力が要るやつだよ?」


 受付嬢は、依頼の内容を見て、呆れたような声を出す。


「困ってるなら助けてあげなきゃ!」


 レンは何時ものような笑顔でそう言う。


「……で? 本音は?」


「畑仕事を手伝うとお菓子くれるんだ! ……はっ!? これが誘導尋問!?」


「いやいや、君が勝手に暴露しただけだからね? ――それにしても、勿体無いなぁ」


「勿体無い? 何で?」


 レンは全く意味が分かってないようだ。


「もっとランクの高い仕事を請ければ、君ならすぐにでもSランクになれるよ? それなのにFランクの雑用系ばっかり受けてさ」


 ハンターのランクというものは、FからSまでの七種類。


 依頼を受け、その功績などにより、ハンター連盟の本部から推薦状が来れば、晴れて昇格となる。


 勿論、長い年月がかかるのは当然だが、レンの実力と歳を考えれば、Aランクの依頼を五十ほど成功させれば確実に昇格できる。


 Sランクなど、国王の直属の部下や、王国専属の騎士たちでも居ないレベルである。


「僕はSランクになるつもりはないよ? なったら駄目な気がするもん。じゃ、いってきまーす!」


「はい、いってらっしゃい」


何時ものように、元気に飛び出していくレンを、受付嬢は弟を見るような目で見送っていた。





◆◆◆◆◆◆





「すいませーん。依頼を受けに来た、レンですけどー」


 何時ものように、依頼主の家のベルを鳴らし、大きな声で名乗る。


「おや、可愛らしい子が来たねぇ。君が畑仕事を手伝ってくれるのかね?」


 出てきたのは八十歳程度の老婆だった。


 髪の色は、色褪せてはいるものの、綺麗な若竹色に染まっていた。


「うん! おじいちゃんがぎっくり腰で大変なんでしょ? だから、手伝いに来たよ!」


「そうかい、そうかい。ありがとうね。じゃあ、早速行こうかねぇ」


「うん!!」


 レンは、老婆と一緒に少し離れたところにある畑へとゆっくり歩いていった。









「おやまぁ……」


「おばあちゃん? 何で畑がこんなに荒れてるの?」


 畑に着いた二人は、目の前の惨状に驚いていた。


 作物は食い散らかされ、鳥避けの案山子は根元から折られている。


「これは酷いねぇ……。きっと【ハングリーボア】の仕業だねぇ」


 ハングリーボアとは、文字通り、大食漢のイノシシだ。


 普段は山の奥で暮らしているのだが、時折山を降りては、こうして畑の作物を食い散らかしていく。


「……あれ? ねぇねぇ、おばあちゃん。あそこに居るのってハングリーボアじゃないかなぁ?」


「本当かい? ……おや、本当だねぇ。丁度、帰るところみたいだね」


 レン達から見て東のほうに、茶色い毛並みの巨大なイノシシが居た。


 その口元には畑に散らかっている物と同じ種類の葉が付着していた。


「アイツってよく来るの?」


「そうだねぇ。じいさんが元気だったときは追い払ってくれたんだけど、私はどうにも傷つける魔法は苦手でねぇ」


 若竹色とは、緑に若干の白が混ざっているような色。


 つまり、簡単な白の魔力なら使えるわけだが、どうにも戦闘を好む性質(たち)ではないらしい。


「じゃあ僕が行くよ! これ以上来てもらっても困るでしょ? それにハングリーボアの肉は美味しいしね!」


「あぁ! ボク!? 危ないよ!?」


 老婆の制止など届くはずもなく、レンはどんどんボアに近づいていく。


 世間のことに疎い老人であるこの老婆は、レンが帽子を被っていたこともあって、レンの正体に気が付いていなかった。


「それ! 『白炎の双腕(フレイム・シェイク)』!!」


 レンの腕が、膨大な赤の魔力を纏ったと思ったら、その魔力は次の瞬間には白い光を発する炎になっていた。


 その炎はレンの腕とリンクしているかのように動き、ボアを包み込んでしまった。


【プギイィィィィィ!?!?】


 突然の炎の腕の攻撃を、成す術もなく喰らうボア。


「イェーイ! ハングリーボアの丸焼きだよー! おばあちゃんも食べるー?」


「あはは……最近の子は随分と強いんだねぇ……」


 レンのせいで、少し曲がった認識を持ってしまう老婆。


 その後、しっかりと畑仕事を手伝ったレンは、銀貨二枚の報酬と、ボアの丸焼きを持って、帰って行った。




「……アレが噂の少年か……」


 一人の男が見ている事に気が付かないまま。



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