邂逅
とりあえず今回でアイリ視点は終わりです。
自分は戦闘シーンとか書くの苦手なんですよね泣
緊迫感が無いのはお許しください。笑
〜アイリ視点〜
私とサリアはサラン草原を走っていた。
「待ちやがれ!」
後ろからはお父様と戦っていた兵士と同じ鎧の男達が追いかけてきていた。
1人ならアイリの実力があればなんとかなるのだが、大人5人、ましてやサリアを護りながら戦うのは流石にキツイと判断して、必死に逃げているのである。
しかし…
「お姉ちゃん!このままだとドンドン魔森に近づいちゃうよ!」
そうなのである。追っての男達は命令されたのかは分からないが、街でアイリ達を見つけてからずっと追いかけてきているのだ。
アイリ達の逃げている方角にはサラン草原があり、その向こうにはローヴァーの魔森がある。
魔森は危険なのだが、今直ぐ後ろに現実的な危険が迫っているのに止まるわけにはいかない。
結果的にアイリ達はローヴァーの魔森に向かって逃げなければならないのである。
そして…
「くっ!仕方が無い!サリア!ローヴァーの魔森に逃げるぞ!」
「えっ!?でもお父様が入っては行けないって…」
「でもこうするしか逃げる道は無いんだ!魔森に逃げ込めば、もしかしたらあいつらが追いかけるのを諦めるかも知れない!」
流石に魔森に入ってまで追いかけては来ないだろう、諦めて引き返して行ったら直ぐに魔森を出れば危険も少ないはずだ・・・。
そう考えて、私達は魔森に逃げ込んだ。
「くそっ!あいつら魔森に逃げ込みやがった!」
「どうする?流石に魔森に入るのは危険なんじゃねぇか?」
何人かがそう言ったが、おそらくリーダーてあろう男が、
「そんなことはあいつらも分かってるはずだ。恐らくあんまり奥には行かないで、俺らが引き返したら出てくるつもりだろう。少し入るだけなは大丈夫だし、5人もいれば、魔獣の一匹くらいなんとかなるだろ。追いかけるぞ!」
そう言ったので、男達は魔森の中まで追いかけてきた。
「お姉ちゃん!まだ追いかけてくるよ!」
「どうやらどうしても私達を捕まえたいみたいだな!サリア、もう少し逃げるぞ!」
男たちの予想外の執着心に慌てた私は、サリアの手を引きながら速度を上げた。
「お姉ちゃん待っ…きゃ!?」
「サリア!?」
ここまでずっと走ってきたのでサリアの体力はあまり残っていなかったのだろう。その上急に引かれたため、サリアは足をもつれさせて転んでしまった。
私は駆け寄ってサリアを起こしたが、すぐに男達に囲まれてしまった。
「ふぅ、やっと追いついた。まったく…手間掛けさせやがって。」
「来るな!」
「威勢の良いお嬢ちゃんだ。大人しく捕まった方が痛い思いしなくてすむぜ?」
男の一人が言ってきた。しかし私もランベルグ家の長女、こんな奴らに屈する訳にはいかない!
「うるさい!剣の錆にしてくれる!」
「ぎゃーぎゃーうるせぇな!捕まえたら可愛がってやるよ!」
「おいおい、いくら顔が整っているとは言え少女だぞ?お前の守備範囲広すぎないか?」
「俺はこうゆう強がってるやつを犯すのが大好きなんだ。別にダメだとは言われてないし良いだろ?」
「生きて捕まれば問題ない。好きにしろ」
「ぐへ、ありがとよ」
「ひっ!?」
男の舐めるような視線を浴びて、私は背筋をぞっとさせた。
男達がじりじりと近づいてきて、その距離が3mを切ろうかと言う所だった…
「ぎゃあ!?」
突然後ろから近づいてきていた男の悲鳴が聞こえた。
なに!?と思って振り返ると、男の首が虎のような魔獣の牙に貫かれていた。
そして私はその魔獣を知っていた。
「あれは…ヘルタイガー…」
ヘルタイガーはローヴァーの魔森に生息していて、主に集団で狩りをする。恐らくすでに周りを囲まれているのだろう。
さらにヘルタイガーは鉄のでは傷付かないほどの物理抵抗と魔法も大幅に弾いてしまう魔力抵抗をもつ毛に覆われているのである。
その凶悪な性質から地獄の猟犬とも呼ばれており、並の騎士や冒険者にもなかなか手に負えない。
一度群れから逸れたヘルタイガーを巡回兵達がサラン草原で撃退したことがあったが、その時も多くの犠牲を払うことになった程だ。
「なんだ!?魔獣か!?」
流石に命の方が優先と考えたのか、男達の注意はヘルタイガーに移った。
「一匹なら何とかなる!囲んじま…ぐぁっ!」
この男達はヘルタイガーの性質を知らなかったのだろう、後ろから近づいてきたヘルタイガーに気付かずに、喉元を噛まれていた。
「くそっ!ダメだ!逃げるぞ!」
男達もようやく囲まれていることに気づいて慌てて逃げようとしたが、ヘルタイガー達が一斉に飛びかかってきた。
「今だ!サリア!走るぞ!」
幸いなことに、ヘルタイガー達の注意は敵意を見せていた男達に集まっていたので、隙をついてサリアと逃げることができた。
「ガウガウ!ガウ!」
それに気付いた何匹かは私達を追いかけてきた。
男達から逃げられたのは良かったが、さらに危険な状況になってしまったようだ。
私達は必死に走ったが、すぐに俊敏なヘルタイガー達に追いつかれてしまうだろう。
せめてサリアだけでもっ!
「くそ!サリア!逃げるんだ!こいつらは私が惹きつけておく!」
「嫌だよ!お姉ちゃんを置いて逃げられないよ!」
必死に説得するが、サリアは決して行こうとはしなかった。
そして、いよいよヘルタイガー達に追いつかれてしまう、と言う時にサリアが叫んだ。、
「!?お姉ちゃん!男の子がいるよ!」
サリアの視線の先に目を向けると、黒髪の男の子が立っていた。
身長は私よりも少し低いくらいの少年だった。
「なっ!?魔森になんで子供が1人でいるんだ!?街から逃げてきたのか!?」
冷静に考えればこんな所に子供がいるなんてありえないと分かるのだが、私も気が動転していたのだろう、私達と同じく街から逃げてきたのだと思った。
「くそっ!二人を護りながら逃げるのはキツイ!リアはその少年と一緒に逃げるんだ!」
「お姉ちゃんはどうするの!?」
「こいつらを足止めしておく!大丈夫、私がやられるわけないだろ?」
街から逃げる時のお父様を思い出しながら言った。お父様ならそう言うだろうと思ったのだ。
目の前の死の恐怖に足の震えが止まらなかったが、足に力を込めて必死に立っていた。
「早く行くんだ!」
少しでも足止めしようとサリア達の方を一瞥して叫んだ。
その時サリアが叫んだ。
「お姉ちゃん!?うしろ!」
「!?しまっ!」
ヘルタイガー達から注意を逸らしてしまったのは一瞬であったが、彼らにとってはその一瞬の隙で十分だったのである。
サリアの声に慌てて振り向いた時には、ヘルタイガーが大きな口を開けて飛びかかってきているとこらだった。
あぁ、これは避けられない…自分の喉元にヘルタイガーの牙が突き刺さる…
そう覚悟し目を閉じた瞬間、後ろから場違いな程透き通ったソプラノの声が聞こえた。
「…アイスブラスト」
パリィィーン!!!
ガラスを割ったような一際大きい音が聞こえてきた。
なんだ…!?
覚悟していた痛みがなかなかやってこないので、恐る恐る目を開けてみると…
一級品の彫刻と間違えそうなほど美しい…ヘルタイガーの氷の彫刻が目の前に出来上がっていた。
「きれい…」
恐らく氷属性の魔法で凍らせたのだろう。
先ほどまでの緊張感のせいか、それともあまりの美しさのせいか、危機感も忘れて彫刻に触れようとした。
その瞬間、
バリン!!!!
氷の彫刻がいきなり弾け飛んだ。
「きゃ!?」
目の前で彫刻が弾けたことに驚いて目をつぶったが、氷の破片が降ってくることはなかった。
それどころか、
「きゃん!?」
氷の破片は残りのヘルタイガー達に飛んで行った。
ヘルタイガー達は仲間が一瞬でやられた事で、本能的に危険と察知したのだろうか、直ぐに逃げて行った。
凄い…
あの魔法効力の高いヘルタイガーを一瞬で倒した魔法はどれほどの威力を秘めているのだろう、と驚きながらも後ろを向くと、サリアを背に少年が右手のひらをこちらに向けながら立っていた。
少年の瞳はその髪と同じく美しい黒で、幼さの残る、恐らく自分より年下であろう、顔をしていた。
そして、その非常に整った顔で軽く微笑みながらをこう言った。
「大丈夫かい?お嬢さん達」
名前が一部統一されてなかったので修正しました。
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