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末弟 イオレイン・パンクヒルズ

 >インタビューにお答えくださって感謝します。最後にこのインタビューを飾ってくださいますのは、名門パンクヒルズ家から、末弟、イオレイン・パンクヒルズさんにお越しいただきました。前回からお兄様であります、ルードヴィヒさん、アイザックさん、カストルさん、テオドアさんがお話くださいましたが、イオレイン、通称イオンさんからはどのようなお話が飛び出すのでしょうか。ではご長男のルードヴィヒさんについて一言お願いします。


 お前さぁ、論文だかなんだかしらねぇけど、その研究内容見返したほうがいいんじゃね? だってさー、「兄弟間における相互認識の差」についてなんてさ、その兄弟が育った環境に左右されてさ、相関性なんて見つけにくいと思うんだよねー。しかも、おれらパンクヒルズ家、結構特殊だし。まぁ、いいけどよ。幼馴染のよしみだからな。

 ルー兄様? うーん。どっちかってと、親戚のお兄ちゃんみたいな感覚かなぁ。だって歳いくつ離れてんだっけな? 十四だっけ? そう思いたくもなるよな、俺が物心つく頃ルー兄様家にいなかったもの。だから聞かれてもちょい困るな。

 そうさな、化けの皮被るのがうまいようでにじみ出ている肉食獣のような気配は消せてない人ってのが俺の印象。意味わかんねぇって、お前。普段はさ、うまいこと、いい子演じてるんだよ。だけど、自分が興味を惹いちゃったり、嫌悪感を抱いたりすると、すぐにそれが隠せなくなっちゃう人かな。そういう意味ではある意味単純。永遠の悪知恵もった子供って感じ。

 噂? ああ、いろいろあったね。それに武勲もすごくあるしね。でも俺は歳が離れているせいか、他の兄様がいたせいかそんなに気にはならなかったよ。ま、いい意味での目の上のたんこぶ。ぜってー超えてやろうって考えた時期もあったなぁ。


 >次に次男のアイザックさんについてどうぞ。


 ザック兄様。……お父様以上に親っぽい兄。そんな感じ。ザック兄様も、ルー兄様と一緒で、俺が物心つく頃はもういなかったんだけど、帰る度に「勉強しているか、強くなっているか」って聞くのね。ね? 出張帰りの父親みたいでしょ?

 ザック兄様とは、僧侶の道を断ったときにだけ、もめたな。カストル兄様のことあって、けっこう覚悟してたし、カストル兄様ほど、自由奔放でもなかったから、俺はそんなには怒られなかったけど。

 ただ、俺が出世したときの、あの呆けた表情は忘れらんないね。祝ってあげたいのに、現実感持ってないってヤツ。でも必死に祝ってくれようとしてさ。見ててこっちが申し訳なくてさー、いい兄だよ、ザック兄様。

 あれ、ルー兄様を直上の兄に持った弟はこうなってしまう見本みたいな人だよね。そういう意味では、期待を裏切らない人だよねー。


 >では、三男、カストルさんについてどうぞ。


 カストル兄様は俺が一番大好きな兄様。カストル兄様のおかげで俺はやっと自分の人生を懸けられるものを見つけられた。カストル兄様には感謝してもし足りない。

 カストル兄様はすごいよ。だって芸術家として名を轟かせているけど、一応武に生きるパンクヒルズ家に相応しいくらいに強いんだよ! それに加えて、ってかそれだけの実力を持ちながら、武を手放して芸術に入ったから、すげーと思う。しかもそこで大成してるわけだし。

 カストル兄様の絵は見ていて引き込まれる。すごい。俺にそこは真似できない。やっぱり、自分の持っていないものを持ってる人ってすごいと思うし、輝かしく見える。

 話変わるけど、カストル兄様が俺にいろんなこと教えてくれた。悪いことも含めてさ。世間のルールも、貴族のしがらみも。普通の教育では教えてくれないこと、カストル兄様が全部教えてくれた。だから、俺にととってはカストル兄様が、「兄様」だなぁってつくづく思うよ。


 >では、四男、テオドアさんについてどうぞ。


 テッド兄様は俺の一番安心できる兄様。ふわふわしてて、なんでも悩み事とか、愚痴とか聞いてくれる。テッド兄様は心が広いよ。それに俺のこと、わかってて踏み入ってこない、そこが一番好き。触れて欲しくないことと、触れなきゃいけないことの区別はちゃんと出来ている一番大人な人だと思ってる。歳もそんなに離れていないのに、たいした人だと思う。

 たぶん、一番、周りを、人を観察してきた人なんだろうなって。みんなが望む自分をちゃんと理解している。それで忠実にそれをこなしてる。だから、ふっとしたときに心配になる。ストレスたまってないか、苦しくないか。だから、俺もテッド兄様は注意深く見ている。俺が不安なとき、励ましてくれた兄様のことだから。誰も気づいていない、テッド兄様の内面、俺だけが注意して見てないと、いつか、知らないうちに消えてしまいそうで。テッド兄様ってそんな儚さがある。一番武が似合わない優しい人。あの人は、テッド兄様だけは、パンクヒルズに生まれてこなければもっと幸せだったのに、ってそう思う。

 だからこそ、もっと自分を大事に出来る生き方を見つけて欲しい。


 >では、最後にご自身についてどうぞ。


 俺? 俺か。客観的に俺ってどうなの?

 末っ子の立場からすれば、甘えん坊だし、でも公式の立場で言えば一番上の階級にいるわけだし。それはね、兄様たちを利用したとか、学んだわけじゃないしね。兄弟っていう観点から、俺の実際像は結びつきにくいよ。

 俺は、後悔はしないの。失敗したら、落ち込んで、反省することはあっても、後悔はしない、それが俺のモットー。そうやって生きてきたの。それを考えるようになったのが強いて言えば兄様たちのおかげかな?

 ……と、こう言っておけば、お前の論文はうまくまとまるか? 俺、すんげーいいやつ。ってかさ、兄弟で相関取りたいならさ、俺たちじゃなくて、もっと違う兄弟探せよ。

 あ、ルー王子紹介してやろっか? あそこは十六人兄弟だからな、すげー論文書けるかもしれないぞ? ってか、本になって出版できるぞ。その代わり印税七割王室に入るけどな。そんなことできねーって? ふふん。じゃ、騎士である俺様が、気が向いたら頼んでやるよ。

 そうだ、もし、暇ならお父様とかお母さまに俺ら兄弟のこと聞けば? 両親が一番子供全員を平等に見ていると思うからさ。参考にしてみろよ。じゃ、俺、そろそろ王子の子守に行くからな、はいはい、確かに王子は俺より年上です。子守じゃだめね、見張り。それでいいだろ? じゃーな。



 >というわけで、最終回を予定していましたが、延長して次回のインタビューは、パンクヒルズ家御当主にして五兄弟の父君にあらせられます、バッカス・パンクヒルズさんです。



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