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四男 テオドア・パンクヒルズ

 >インタビューにお答えくださって感謝します。前回に引き続きかの名門パンクヒルズ家から、四男、テオドア・パンクヒルズさんにお越しいただきました。前回からお兄様であります、ルードヴィヒさん、アイザックさん、カストルさんがお話くださいましたが、テオドアさんからはどのようなお話が飛び出すのでしょうか。ではご長男のルードヴィヒさんについて一言お願いします。


 インタビュアーとしては初めましてですね。今回はどうぞ、よろしくお願いいたします。それにしてもイオンのお友達とは思えないほどに、真面目な方ですね。ご勉学とは、こんなことまでするものなのですね。いや、私は武の道に生きるしか能のない男ですからね。

 ルー兄上ですか。そうですね、とても尊敬しています。私達、パンクヒルズの者は武の道に生きることを定められているようなものでしょう? ルー兄上は長男ですから、その定めを重く思うこともなく、すばらしい実力をもっておいでで、とても尊敬しています。

 いつか、ルー兄上のようになりたいとは思うのですが……私如き、きっと無理ですね。ええ。私、こう見えても己の実力くらいはちゃんと把握しています。それでも、見苦しくともルー兄上を目指さずにいられないのは、むしろ、もう、宿命のようなものを感じていますね。逃げられないんですよ。ルー兄上を追うその運命から。そして、決して追いつけないからこそ、追う価値があるとは思いませんか? だって、もし追いついてしまったら、考えるだけでぞっとします。

 もし、もしもですよ、ルー兄上が手に届く範囲にいて、もし、追いついてしまったら、あまりの失望に私はルー兄上を殺してしまうかもしれない。あ、冗談です。そもそも過程の話ですから、本気になさらずに。


 >次に次男のアイザックさんについてどうぞ。


 ザック兄上も尊敬しています。ザック兄上はとても私にやさしくしてくれるんですよ。帰ってきたらいつも稽古をつけてくださいますし、歳が離れているにも関わらず私にかまってくれるんです。とてもありがたいことですね。

 ただ、私の実力があまりに伸びないので、教え子としてはとても申し訳ない気持ちでいっぱいです。ザック兄上はいつも気に掛けてくれて、おかげで私は学校でも有名人でいられます。二人の兄上がすばらしいですから。

 周囲の反応を私は気にしない方なんです。だって、自分の実力を周りが正確に把握しているだけですし、それは自分が一番わかっていますからね。気にしたりしませんよ。そうですね、だからこそ、ルー兄上とザック兄上はもっと仲良くして欲しいと思います。

 あ、表面上だけ仲が悪いんですかね? ほら、ある程度の実力を持つ者は通じ合うって言いますからね。


 >では、三男、カストルさんについてどうぞ。


 カストル兄上は、ちょっと自由すぎると思うところはありますが、いい兄だと思っていますよ。それにカストル兄上はあの道に進んで正解だったと思います。私は楽器など弾けませんし、絵筆を取ったこともないので、ある意味、昔私と同じように剣を握っていた手から別のものを掴んだだけであれだけのものが生みだせる才能はすごいと思います。違う意味でルー兄上と同じくらい尊敬していますよ。

 それに一番年齢が近いせいもあって、何も話していないのに、ちょっとわかっているのかなって感じる部分多くあります。そのことについて話したことはないですが、まぁ、もし知られていたとしても話す気はないです。私は私、兄上は兄上ですからね。


 >では、ご自身についてはいかがですか?


 ごくごく普通の平凡な男だと思っています。名門のパンクヒルズ家にふさわしくないと感じるほどに。でも、もう私はそれほど若くはないですからね。いえいえ、二十歳近ければ、自ずと自ら自分の限界が見えてしまっています。だからこそ、自分ができる努力はしますが、それ以上になりたいとがむしゃらに頑張る時期は当に過ぎてしまいましたね。

 でもそれを不満足に感じることもありません。私は私。いつまでも平凡でつまらない男として、史実に名を残すこともなく、死んでいくのがふさわしいんです。むなしいですか? そんなことはありませんよ。

 例えば華が美しく見えるのは何故でしょう? それは醜いものが存在しているからです。世の中も常に同じ。対極の存在があるからこそ、人は比較することができます。だから、私は進んで、兄上達が光り輝く存在でいてもらうためにも、影を歩んでいくことこそが妥当だと、そう感じているのです。


 >では、最後に末弟については?


 イオンですか。かわいい弟ですよ。純粋で素直で、そして才能に溢れた将来が楽しみな弟です。イオンは私の相手もしてくれるんですよ。忙しいというのに、やさしい弟です。

 イオンは私には隠さずに教えてくれることが多かったんです。例えば、異教の神がかっこいいと話してくれたこともありますし、教会で暮らすことはいやだ、と言ったこともありましたね。そんなときにどうしたらいいのか、相談相手になっていたみたいなんですよね。

 私は一番兄弟の仲でイオンと一緒にいる時間が長い人間でした。イオンが生まれたときにはすでにルー兄上、ザック兄上は学校に入っていましたし、カストル兄上は一緒に遊びはしたようですが、旅に出るのが多かったと記憶していますし。そういう意味では一番寂しい思いをしているのかもしれませんね。

 え? 私を越したことに不満を抱いたことはないか、ですか? ありませんね。先ほどもお話したように、私は私。イオンはイオンですから。比較するほどのことではありませんよ。



 >次回のインタビューは、末弟、イオン・パンクヒルズさんです。



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