次男 アイザック・パンクヒルズ
>インタビューにお答えくださって感謝します。かの名門パンクヒルズ家次男、アイザック・パンクヒルズさんにお越しいただきました。前回はお兄様であります、ルードヴィヒさんがお話くださいましたが、アイザックさんからはどのようなお話が飛び出すのでしょうか。ではお兄様である、ルードヴィヒさんについて一言。
おまえは、あれか。おまえも俺と兄さんを比べているのか。どちらが優秀かと。
ふん、わかっている。だがな、いつか、俺は兄さんを越えてみせる! 確かに兄さんは優秀だった。今の俺の年齢の時には軍で少佐の位をいただいていた。だが、私は軍曹の位だ。いや、違う。不当な扱いを受けているなどと思ったことは一度としてない。俺の実力が伴っていないことくらい、重々承知だ。おまえ達一般人は知らないだろうが、兄さんクラスの武人は、はっきり言って人間じゃない。考え方そのものが人間と違うんだ。いや、すまない。自分の弱さに言い訳を言っているようにしか聞こえないか。
兄さんも父さんも俺を哀れんでパンクヒルズの当主にすえようとしてくれているようだが、まったく持って俺はそれを是としない。武術で成り上がったパンクヒルズにおいて、当主は一番力を持つ、兄さんが継ぐべきだと俺は考える。俺が当主となるのが許されるのは、兄さんを超えたときだけだ。そうでなければ、一番おろかな当主と成り下がるだろう。
それに一生中央軍に従事する人生が悪いものだとは思ったことがない。軍とは己の実力を試す場だけではない。か弱い市民を暴虐の徒から守るこことこそ、本当の軍だろう。俺が強ければそれだけ市民が安心して、平和に過ごせる日々を送ることが出来る。それに増した幸福はないだろう。そのためにも、俺は己を鍛え続けていたいと思う。
>それでは、ご自身についてどうぞ。
うむ。まだまだ不出来な面が多いと感じているところだ。兄さんを超えたいとは日々思い、それを目標にしているが、そのままでもいけないのではないかと最近思う。なにせ、俺が所属している部隊にも優秀で、強い方は大勢おられる。兄さんこそ、今強いが、兄さんだけを己の目標としていては視界が狭まるばかりだと感じ入っているな。
それに軍とは上からの命令にただ従っていればいいだけではないことを最近、大佐から教えていただいたばかりだ。確かに命令を遂行できないような軍は軍とは呼べない。だが、不当な政治の元の軍隊は軍ではないという言葉は深いものだった。
なればこそ、私もパンクヒルズという家名や、己の地位、保身などにこだわらず、むしろそれを忘れる気持ちで市民のために働く所存だ。
>では、三男のカストルさんについてどうぞ。
カストル。あれは愚かな弟だ。父さんの期待、そして母さんの期待を裏切り、武術の道をはずれた、とんだ遊び人だ。芸術の道? 確かにいろいろ評価はされたようだが、軟弱な道に逃げたという事実は変わらない。パンクヒルズ家ならば、武の中で生き、そして死ぬべきだろう。
それにカストルは三男だ。もし、戦争が生じたら、真っ先に中央軍に所属する俺と兄さんは戦場に行く。そのとき、二人とも死ねば、カストルがパンクヒルズ家を継ぐことになる。そんなときに軟弱なままでは困る。この名にふさわしい戦歴と実力を兼ね備えるべきだろう。
今からでも遅くはない。俺も中央軍に従事しており、なかなか面倒を見れないが、首都に出てくればいくらでも稽古をつけてやろうと思っている。
>四男についてどうぞ。
テッドか。あいつは歳の離れた弟で、武術を志す誠実な弟だと思っている。真面目で、とてもいい奴だ。実力は伸びていないようだが、あの努力ならば、俺のあとに続くことも可能だろう。まぁ、あいつは兄さんを慕っているようだからな。いいことだろう。
久々に里帰りすると、いつも剣の型の教えを請うような勤勉さもある。学校でも成績はよいようだし、人間関係に問題もない。自慢できるパンクヒルズの男であることに間違いはない。これからももっと精進して欲しいと考えている。
ただ、そうだな。上がカストルのせいもあるが、あいつに比べて無趣味というか、私的な興味関心があまりにも薄いことは少し気がかりだな。女性関係もないようだし、武術以外に興味がわかないといっていた。まぁ部屋に兄さんの写真を飾っていたときは少し驚いたが、尊敬……いや、敬愛か。兄思いの弟だな。俺もあそこまではいかないが、武勲を立てて、テッドにふさわしい兄であろうと努力し続けなければいけないな。
あいつにはいつも自分が落ち込み、後ろ向きの考えをしているときに、学ぶことが多いな。あのやる気と努力は誰にも負けないテッドの才能だと俺は考えている。
>末弟についてどうぞ。
……イオンか。あいつは俺にとってわからない部分が多い弟だな。末の子らしくとても甘えっ子で、人懐っこく、かわいい弟であったはずなんだが。気づけば俺より、兄さんより上の位に就いていた。しかし実力という面では、カストルに劣っていたような気がしていたのだが。まぁ、俺は時々しか帰ってこないからな。その間に猛特訓したのだろう。
不思議なことは、中央軍に所属している俺でさえ王家の方々にお会いする機会はないというのに、いつルーヴィヒ第七王子と出会ったのだろうか。そういえばイオンは俺とあったときもテッドやカストルとは違い、まるで子供から成長していないのではないかと思うくらい、甘えてくれていたのだが。
男というのはいつ成長しているのかわからないものだな。
>次回のインタビューはパンクヒルズ家・三男。カストル・パンクヒルズさんの予定です。