長男 ルードヴィヒ・パンクヒルズ
>インタビューにお答えくださって感謝します。かの名門パンクヒルズ家ご長男、ルードヴィヒ・パンクヒルズさんにお越しいただきました。さっそくご自分についてどうぞ。
まぁ、我ながら私は優秀だと思うよ。名門パンクヒルズ家の長子たる責務を存分果たした地位にはいると思うし。地元でも結構古い血筋でね、私の家系は。だからこそ、親父さまは結構張り切っちゃって。私は親父さまの望むように昔から学問も武術も叩き込まれて育ったよ。でもある日気づいてね、ああなんてつまらないんだろうって。
実は私、天才って奴だったんだね。あれ、いやみに聞こえる? まぁまぁ仕方がないのさ。そういうもんなんだよ。天才って。で、やれるところまでを求めたわけさ。そうしたら軍の最高部隊に選ばれたわけさ。幹部にもなっちゃったし。最年少だとか、この街の誇りだとか言われたけれど、私としてはただ、自分がどこまでいけるのか見てみたいだけだったんだよ。
今は武術一本に絞っているけれど、学問のほうもどうなるかやってみたかったな。学問も飛び級の飛び級で、国家に名を残す論文を何本か書いたら飽きてしまったのさ。だから、今はどれだけこの軍隊の最高舞台で、武術を志す全ての人間があこがれるという舞台でどれだけ出来るか試しているのさ。
え、飽きたらどうするのかって? さぁ? 今度は敵に回ってみるとかね。で、どれだけ国家を傾けられるか試すんだ。面白いと思わないかい? おぉっと、今のは内緒で頼むよ。一応まだ死にたくはないんだ。
違うよ。いくら天才の私でも上には上がいるもんでね、隊長とかにはまだ勝てないんだ。だからこそ、面白いわけだけどね。なんか、王家の人たちは隊長よりずっと強いんだってさ。いつか手合わせ願いたいもんだよ。
え? 戦闘狂じゃないかって? 私が? そんなことはないさ。確かに自分に限界を見るというところでは、そうかもしれないが……一応一般人もできるんだから、普通に。
>次男についてどうぞ。
あぁ、ザックかい? あれにはちょっと申し訳ないことをしたよ。なんてったって、ザックだって中央軍に入れるんだから、何年に一度かという逸材だと思うのに、兄の私がいたばかりに、自分を追い詰めていて。まぁ、まじめなんだろうね。私は基本的に私のことだけでいいからね。だから、親父さまがなんと言おうと家督はザックに継いでもらいたいな。そのほうが私は永遠にやりたいことをできるし。一応、ザックの面も保てるだろう?
だけど。あれだよ。あの威嚇みたいに、「打倒! 兄!!」は止めて欲しいねぇ。いや、ほほえましくはあるんだけれど、時々うっとおしいんだよね。それに才能はある、努力もしている。でも、ザックが私に敵う日は来ない。たぶん。だから、無駄なことは止めて、さっさといい女でも見つけて、家督をついで平和に幸せに平穏に暮らしてほしいよ。ザックは基本にまじめだから、家督を継ぐのに一番だと思うのさ。
え? 私? 無理無理。この才能のせいかどうかわからないけど、基本的に自己中だからね。
>三男についてどうぞ。
カストルかい? あいつは何がしたいのかわからないでもないね。あいつもあいつでまじめなんだろうねぇ。だって、家督を継ぐのが私かザックが継ぐともう理解している。だからこそ、あんな方向に進んだんだろうねぇ。まったく、馬鹿だよ。恥でも私とザックが優秀であって、武術の道に進んだって誰も反対しやしないのにねぇ。きっと比べられることに耐えられなかったんだろうさ。目がさ、武術したいっていってるんだよね。でも、誰も気づかない。いや、気づいたフリをしないのさ。だから、芸術の道に進んだのさ。
負け犬? そんなことはいわないね。賢い選択だとは思うよ。私は絶対しないとは思うけれどね。所詮、武術で成り上がったパンクヒルズ家だ。みんな武術に進みたいんだろうね。でも、いいんじゃないか? カストルはあの年で神童とうたわれるほどに才能溢れる芸術家になったのだから。このまま幸せになって欲しいと思うよ。
>四男についてどうぞ。
テッドについては私は一番理解できないね。なにせ、私にあこがれて、都市軍に入ったというんだから。でもね、私の言い分も聞いておくれ。テッドが生まれたとき、私はすでに軍に入っていて、兄弟というよりかは従兄弟みたいな親戚のような感覚で……里帰りしてみたら、生まれてたって感覚なんだ。
だから、いまいちわからないんだよ。おそらく話した回数も数えるほどしかないだろうし。だから、いっそ何故私をあそこまで敬愛して、努力しているのかが私には理解不能だね。それに一応、ザックに比べると才能のない愚弟なんだなぁ。だから私にとっては興味はまったく沸かないよ。私にとって、今一番どれだけ私の興味があるものに近いかということが重要なんだ。一番印象が薄い弟ではあるね。と、いったらやっぱり申し訳ないだろうねぇ。
でも、きっと究極の状態のときに一番に切り捨てるのはテッドかもしれないなぁ。ほら、誰かが言っていただろう? 理解と尊敬は逆だってさ。ま、私達に迷惑にならない程度に頑張ってくれればいいよ。
>末弟についてどうぞ。
イオンかい? あの子は最もわからないね。ただ、テッドと違うわからなさなんだ。
テッドみたいに行動は理解できるが、そんな考え及ばないっていうのではなくて、本当になに考えているかわからないんだよ。テッドのときにも言ったけれど、親戚みたいな感覚だろ? たぶん、あっちもそう思っているんだろうね。あいつは私を見る目が他人だよ。
だから私に縛られているようには見えないね。親父さまは僧侶の道を用意していたみたいだけれど……確かにあいつは予想外だよ。まさか私をも超える存在になったんだもの。誰にも実力を悟らせないで、ね。
ああ、でもよく思い出せばあったな。いつぞやの日、あいつが珍しく剣を持っていた。私は影からそれを見ていた。そうしたら、イオンはきっと私の型を見ていたんだろう。伝統の大技の型を完璧にこなして見せたな。ザックより見事なものだった。驚いたよ。それで末弟の存在を記憶に残したんだけれどね。面白いのがそのあとでね、「ふーん。こんなもんか」ってそのまま。そのまま武術を手放したんだよ。
あいつだけはパンクヒルズの血を引いていないのではないかと思ったほどだったよ。ま、あのルーヴィッヒ皇子直属の騎士になっちゃったくらいだから、やはり血は争えないのかねぇ。……あ、いいことを思いついたよ。武術に飽きたら血筋による才能と適正なんてのを調べてみてもいいねぇ。
>次回のインタビューはパンクヒルズ家・次男。アイザック・パンクヒルズさんの予定です。