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第3話:質答


質疑応答の時間が始まる。

最初の質問者は三村だったはずだ。

一体誰を指名するのか?そう考えただけで緊張が高まっていく。


「では、三村君。質問相手を指定してください」


テレビから聞こえてくる人間味に感じられない声。

その指示に従って三村は林田さんを指名する。


「林田さんとしては、誰が怪しいと思っているの?」


三村の質問に場が凍りつく。この質問はOKなのか?

全員がそう思っている事に間違いはなかった。


「おい、今の質問はいいのか?確信に触れるものじゃないのかよ」


突っ込んだのは神村だ。彼は先ほどから皆の意見を代弁しているかのようだ。


「構いません。今の質問はあくまでも調査の一環のものとして受け取れますので」


許可されたという事は、林田さんは正直に答えなければならない。

嘘をついたら即そのゲームでのポイント獲得チャンスを逃してしまうからだ。

しかし、この質問。明らかに厄介なものとなる。

正直に答えるという事は、林田さんの疑っている人物が分かってしまうのだ。

名をあげられた人はすぐに林田さんに疑惑を感じ、それ以外の人物は林田さんのあげた名前を強烈に意識してしまう。


「私は今のところ、三村君が怪しいと思っているわ」


林田さんがそう答え、場に緊張が走る。

しかし、指名された三村は思ったよりも驚いていない。

むしろ、やっぱりねというように思っている感じが伝わってくる。

おそらく、林田さんが俺と同じように「m」というヒントをイニシャルと男性を表すmanと考えていたものだと確信しているのだろう。


質疑応答の応答に関しては質問などは一切受け付けていない。

この時間はあくまで、質疑と応答のみ。それ以外の言い争いなどは出来ない。

つまり、お互いの間に疑念ばかりが積み重なるのだ。


「続いて林田さん、相手を指名し質問をしてください」


たったいま、質問を受けた林田さんに順番が回ってくる。

林田さんはお返しとでもいうように、三村は指名したが、質問の内容は違っていた。


「三村君は、さっきでたヒントの「m」をどのように考えているの?」


確かにこれは有益な質問のようだ。

さきほど、三村は犯人だと疑われている立場にも関わらず平然としていた。

それは、どのような考えからそれが導き出されたか理解し、そのうえで自分は違う考えがあったからこその余裕だと取れる。

情報収集の意味としても林田さんの質問はとても大きなものとなるはずだ。


「考えられる事は色々あるよ。イニシャル、男性を表すman。誰でも思いつきそうなのはこの2つだ。でも、いくらなんでもこんなの簡単すぎる。だったら、この「m」はもっと別の物。例えば、犯人が所属しているサークルに関係があったり、性格部分に関係があったりするものだと考えているよ」


サークル、性格。そこまでは考えていなかった。

さきほどの冷静さといい三村は、このゲームに強そうだと感じる。


質疑応答の時間はどんどん進み、俺に順番が回ってくる。

俺の前2人、佐古田さんと橋田さんの質問は両方、三村に向けてのものだった。

mに関連するサークルといえば?、性格に関するものといえば?というのが2人の質問であり、三村はそれに対して、マンドリン、マゾなどと答えた。

マゾと答えた時の周り、特に女性陣は明らかに嫌な顔をしたが三村は一切気にしている素振りはなかった。


「続いて秋月君、相手を指名し質問をしてください」


俺まで三村に質問したら何の意味もないだろう。

おそらく、三村は質問に対して本気で答えていない。しかし、嘘ではない。

つまり、実際に考えてはいるがおそらく正解だとは思っていないのだろう。

しかし、彼の答えは周りをしっかりと惑わしている。

例えば、マンドリンに関して言えばこの中で佐古田さんはマンドリンサークルに所属している。

マゾに関しては、今のところ思いつきはしないが。

少し考え方を変えてみて質問してみるか。


「神村、お前に質問するよ。ヒントは「m」だったが、何故小文字だったと思う?」


この質問をしたのにはある理由がある。

さきほど、ヒントを見た時、イニシャルが最初に浮かんだが、引っ掛かった点があった。

それは大文字ではなく、小文字という点に関してだ。

イニシャルだと考えるならば、該当者は三村、林田さん、橋田さんの3人が候補となる。

しかし、イニシャルと捉えず名前に「m」が入るとするならば、神村も該当者となる。

神村がもしも犯人ならば、それは予想できる。

質問する事により、彼の反応を伺いたかったのだ。


指名をされた神村は明らかに焦っていた。

しかし、それが犯人に繋がるものとはまだ思えない。

どちらかというと、自分にくるとは思っていなくて驚いた感じだった。


「どうして、小文字なのかと言われてもな。大文字よりも小文字の方が都合が良かったんじゃないか?」


仮に彼が犯人だとしたら、これは相当有益な質問になった。

嘘をついていないということは、彼がそう思っている事に間違いはない。

つまり、「m」を見て最初にイニシャルだと誰もが判断するはずだが、彼の場合は違う。

自分の名前に「m」が入っていて、犯人だとすればそれに気づいてしまう。

神村が犯人だと仮定した場合、俺の質問にはあのような返し方しか出来ないのだ。

ましてや、イニシャルだけじゃなく名前に「m」が入っていればなんて言えるはずもない。


俺の中で、犯人は神村という考えがふくらんでいく。




第一ゲーム目も約3分の1が終了。


スピーディーな展開を心がけ執筆していきます。


感想などよろしくお願いします。

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