第2話:開始
ギャンブル・犯人探しのルールはこうだった。
6人1組で行われ、抽選で1人犯人を決める。
決めるのはくじである。
犯人は本人以外分からず、犯人以外の人間は誰が犯人かを当てるのが目的となる。
犯人は、自分だとばれないようにする。
ターン制でゲームは進行し、毎ターンの最後に投票時間が設けられている。
投票は1ゲームにつき一回であり、犯人にも投票権は与えられているが、あくまでカモフラージュの為の物である。
1ゲーム3ターンとなっており、全5ゲームが行われる。
1ターン目での正解は3ポイント、2ターン目は2ポイント、ラストターンは1ポイント、はずれはマイナス1ポイント。犯人は5ー正解した人間の数だけのポイントが与えられる。
ターン進行について。
まず、最初にくじをひき、後の質疑応答の順番を決める。
これは勝った人から好きな順番を決められる。
次に、部屋に置いてあるテレビの画面に犯人に関するヒントが一つ出される。
その後、1分間のシンキングタイムを挟み、質疑応答にうつる。
質疑応答では、決めた順番通りに行い、ここではいくつかのルールがある。
まず、第一に毎ターンに出来る質問は一つであり、相手を一人指名する。
質問された相手は、正直に答える。嘘であれば、体に取り付けてある腕輪型の嘘発見器により、ばれることとなり、そのゲームのポイントは即0となる。
質問にも制限がかかっており、「お前は犯人か?」などといったゲームが即終了してしまうような質問は禁止。
質疑応答が終わり次第、投票時間に入る。
「これで、ルールの説明は終了です。何か質問がある人は?」
誰も口を開かない。皆、この異様な雰囲気にのまれているのだ。
情けない事に俺もそうだ。色々と聞きたい事はあるはずだが、頭がしっかりと働いていない。
「皆様、最後に一つ。負けても本当に何もございません。ただ、権利を失うだけでございます。安心してゲームを楽しんでください」
そんな風に言われても、そうですかと安心など出来るわけがない。
嫌な予感ばかりが頭を過る。
「それでは、1分後に早速ですがゲームを始めたいと思います。心の準備の程をよろしくお願いします」
その一分が長かったのか、短かったのか。
自分がどう感じたのかする覚えてなどいない。
少しでも冷静でいられるよう、自分を保つことだけで精いっぱいだった。
「時間です。犯人探し1ゲーム目をはじめます。皆様、テレビ右横にある箱の中から一毎ずつくじをお引きください。そして、確認後くじを戻してください」
全員が躊躇いながらも、箱に近づきくじを引き、そして全員が引き終ったところで戻していく。
この時点で、もう1ゲーム目の犯人が決まった事になる。
俺は犯人ではなかった。
「それでは、1ゲーム目の1ターン目です。先ほどとは逆のテレビ左横のくじをお引きください。質疑応答の順番決めとなります」
全員が先ほどと同じようにくじをひき、箱に戻していく。
くじの結果、1ターン目の質疑応答は以下のような順になった。
1 三村 広大
2 林田 美乃里
3 佐古田 悠里
4 橋田 麻耶
5 秋月 晴登
6 神村 仁史
俺は5番目。状況がまったく分からない中、後半になったのは当たりといえる。
様子見が出来る事にこしたことはないのだ。
そんな事を考えている内に、ゲームは静かに進行する。
次に、最初のヒントがテレビ画面に映し出される。
「m」
そして、すぐにシンキングタイムに入る。
ヒントは「m」その1文字だった。
単純に考えるならば、名前のイニシャルということになる。
しかし、そう考えた時、頭の中にひっかかる事があった。
そこで、他にも可能性を考えてみる。
何かの頭文字。例えば男性を表すman。
もし、そうだとすれば自分以外の残り2人に早速絞れる事になる。
とりあえず、この2つで当てはまる人間を頭で思い浮かべる。
まずは、イニシャルに関して。
三村のm、美乃里のm、麻耶のm。これだとこの3人。
男性のmだと考えると俺意外の2人。つまり三村と神村。
共通しているのは三村だけだが、そう簡単に解決するとは到底思えない。
そこまで、考えた所でシンキングタイムが終了。
ゲームは質疑応答へと入っていく。