第1話:起床
闇が支配するような暗い部屋の中で目を覚ました。
自分がなぜ眠っていたのかも分からない状況の中だった。
暗い中、目が慣れておらず何も見えないが、自分以外にも数人の人間が居る事は分かった。
どうやら他の人はまだ寝ているようだった。
「一体何なんだ?」
頭の中にはそんな当然の疑問が浮かぶ。
わずかでも手がかりがあればと、記憶をたどってみる。
思い出されるのは、見慣れた教室、クラスメイト達。
「確か、数学の授業を受けていたはずだった・・・」
何度思い出してみても、その情景が覚えている事の最後だ。
授業中は真面目に聞くわけでもないが、基本的に寝たりはしない。
思い出される数学の授業中もそうだったはずだ。
「何ここ?」
ふと、他の人の声が耳に入る。眠っていた一人が目を覚ましたようだ。
「大丈夫ですか?俺も起きたばかりで何が何なのか分かっていないんですが」
「その声、もしかして秋月君?」
どうやら、向こうはこっちを知っているようだ。
そして、俺自身にも向こうの声は聞き覚えがあった。
「そっちは、佐古田さんか」
「うん。私達どうしちゃったんだろうね?私達の他にも何人か寝ている人がいるみたいだけど」
「まったく分からない。数学の授業受けていたはずなんだけど」
「私もそれは覚えてる。いつの間にか、寝ちゃったのかな」
事はそういう問題ではない。
しかし、佐古田さんのおかげで、現在の状況が少しだけ理解できた。
おそらくだが、寝ている人間はクラスメイトだろう。
しかし、全員ではないはずだ。この中にはそれほどの人間がいるとは感じられない。
場所はおそらく教室か。これは、寝ている人間がクラスメイトという所からの想像だ。
分かったといってもこれぐらい。そして、まだ推測の範疇すら出ていない。
そんな事を考えている内に、他のメンバーも目を覚ました。
当たり前だが、全員何が起こったのか理解しておらず、何なんだ?といった声ばかりが聞こえる。
とりあえず、俺は起きた全員に状況を説明する。
説明といっても、起きたら既にこうだったことしか、伝えられない。
予想通り、部屋に居たのは全員がクラスメイトだった。
そして、その人数は男3人女3人の計6人。
この6人に特に共通するものはないと思えた。
「皆様おはようございます。よくお眠りになれましたか?」
突然、人間の声とは思えない機械音のような声が聞こえてきた。
大分、目がなれて気付いたがここはどうやら俺達の学校の教室のようで、先生が使う教卓の上に時代を感じさせるテレビが一台乗っていた。
「誰なんだお前は?俺達に一体何をしたんだ」
そう叫んだのは、神村だった。耳を塞ぎたくなるような大声だった。
「申し訳ありません。申しおくれました。私、ギャンブルスクールの宮島と申します。今回は皆様に行っていただくギャンブル、犯人探しのルールを説明させて頂きます」
ギャンブルスクール?
そんな言葉今までに一度も耳にした事がなかった。
しかし、直感的にふざけているようには感じられなかった。
「おい、ふざけるな。何がギャンブルスクールだ。とっとと、俺達をここから出しやがれ」
またも神村だ。怒りのせいか、さっきよりも声が大きくなっている。
「一切ふざけてなどいません。貴方達にはこれからギャンブルをして頂きます。勝者には大金を手に入れるチャンスが与えられます。しかし、負けても失うものは何もありません。ただただ、勝者を決めて頂くだけです。私は無駄話は好みません。これからは、お静かにお話をお聞きください。質問の方は最後に受け付けます。よろしいですね?」
俺達はその言葉に何も言わなかった。というより、いう事が出来なかった。
明らかに機械を使って変声されている声に只ならぬプレッシャーを感じたからだった。
結局、誰一人口を開こうとせずギャンブル犯人探しの説明が始まった。