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気付けばいつも傍に貴方がいる  作者: kana


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~レックス・ディスター侯爵視点~




あのヴォルフ殿下が()の義弟になるなんてな。

真っ白なウエディングドレスを着たベルの幸せそうな笑顔は()()()には見られなかったものだ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



母上がウィルを産んで亡くなったことを恨んだことは1度もなかった。


ただ、俺が年の離れた妹弟たちを可愛いと思いながらも、どう接していいのか分からなかっただけなのだ。



ベルはいつも微笑んでいたし、ウィルは大人しく、2人の我儘など一度も聞いたことがなかった。


だからベルがラシード殿下の婚約者に選ばれた時も、俺も陰ながら支えようと決意し、母上の母国であるカルセイニア王国に留学した。


帰国した俺の耳に入ってきたのはラシード殿下が常に色んな女を横に置いているという噂話だった。

実際それは噂話などではなく事実だった訳だが、結婚してしまえばベルを大切にしてくれると思っていたんだ。結婚するまでの火遊びだろうと⋯⋯


結婚式でもベルは微笑んでいたし、ラシード殿下も笑っていた。

だからベルが幸せになれると信じていたんだ。

父上も同じ気持ちだったと思う。


俺は⋯⋯俺と父上はベルの微笑みに隠された気持ちに最後まで気付くことはなかった⋯⋯


だから、ベルがラシード殿下の目の前で三階のテラスから飛び降り、自ら命を絶ったと聞いた時は嘘だと、そんなことがあってはならないと否定しながら現場に走って向かった。



もう、動くことのないベルを抱きしめて泣き続けるラシード殿下に何があったのか聞いても『⋯⋯わ、笑ったんだ。ベ、ベルティアーナが、わ、私に、は、初めて笑顔を見せてくれたんだ』と言う。


今さら何を言ってるんだ?ベルはいつも微笑んでいただろ?


この日俺はベルティアーナを⋯大切な妹を失った。







ベルの墓の前で、泣き崩れるウィルの手には刃物が握られていた。

『姉上⋯⋯もう寂しくないよ。僕も今から逝くね』と言うのを止めようとした。『止めてくれ!これ以上家族を失いたくない』と⋯⋯

だが、ウィルの『あんた達がいつ家族だったんだよ!姉上には僕しかいなかった!僕にも姉上しかいなかったんだ!』そのウィルの瞳には憎しみしかなかった。

一瞬怯んだすきに刃物はウィルの喉を斬り裂いた⋯⋯



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



まさか、初夜もなく執務と外交をするだけのお飾りの王太子妃になっているなど、俺の仕えるラシード殿下の仕打ちをベルの残した日記を読むまで知らなかった。


日記には幼少の頃から死を決意するまでのベルの気持ちが綴られていた。


内容は幼少期に教育係だった女に精神的虐待を受けていたこと。喜怒哀楽はすべて微笑みで隠せと⋯⋯隠せるようになるまでそれは何年も続いていたと。

そんな姉をウィルは守ろうとずっと側にいてくれて『ありがとう』と⋯⋯


ラシード殿下には学院時代から恋人がいて、王宮の離れに住まわせていたこと。

結婚した日も、初夜にも関わらず恋人の元に行ったこと。それからも寝室に訪れることは一度もなかったこと。

ある日、その恋人オリビア・テルー男爵令嬢がベルの部屋に先触れもなく訪ねて来たと。


(王太子妃の部屋に男爵令嬢ごときが訪ねられたことが、ラシード殿下の特別だと言っているようなものだ)


そして、ラシード殿下の子を身ごもったこと。

自分が王太子妃になって、ベルは側妃になり、執務や公務はそのままベルに任せることを告げられたそうだ。


最後に日記にはこう書かれていた。


『わたくしは自分から何かを求めることが許されない人生を送ってきました。彼女がわたくしの代わりをしてくれるのなら、やっとこの人生から解放されるのです。オリビア様ありがとうございます』


『初めて自分の意思で選ぶのは()です。これでやっと自由になれます』


『気掛かりなのはウィルのことです。どうか⋯⋯どうか貴方は幸せになって下さい』


ベルの日記には最後まで父上のことも俺のことも1文字も書かれていなかった⋯⋯ウィルの言う通りだった。俺は⋯⋯俺と父上は家族に含まれていなかったんだ。



立て続けに娘と息子を亡くした父上は、ベルの日記を読んで、ショックから後を追うように亡くなった。





それからラシード殿下は俺に恋人と伽を共にしたことは一度もないと告白した。

恋人なのに口づけすらしないラシード殿下を責めるでなく、ベルの存在が許せなかったオリビア・テルー男爵令嬢がベルを追い詰めるためについた嘘だったと⋯⋯


嘘で俺は父上と可愛い妹弟を亡くしたのか?

そう思ったら何もかもが許せなくなった。自分も王家もラシード殿下もオリビア・テルー男爵令嬢も⋯⋯


だから国を捨てた。

捨てて以前留学していたカルセイニア王国に逃げた⋯⋯逃げたんだ。


抜け殻のような俺を気にかけてくれた、バーネット公爵家の皆。だが俺はそれすらも拒絶してしまった。


そして留学時代から『なあ、レックス。国に帰らず私の側近になってよ』と何度も誘ってきていたアイザック王太子が訪ねてきた。


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