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気付けばいつも傍に貴方がいる  作者: kana


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~アイザック王太子視点~



一連の流れを見ていたラシード王太子は、ヴォルフと手を繋いで退場するベルティアーナ嬢の背中が見えなくなるまで呆然と見つめていた。


そのラシード王太子の様子を無表情のレックスが冷めた目を向けていたことに気付いたのは私だけだろう。








ヴォルフが帰ってきたのはパーティーが終わってからだった。


大の女嫌いで、言い寄ってくる令嬢に一切見向きもしなかったヴォルフが、どこで見初めたのかベルティアーナ嬢に恋をした。

なぜそれに私が気付いたかと言えば、ほとんどのパーティーに参加しないヴォルフが1人の令嬢を助けるために2度、3度と現れれば私でなくても気付いた者はいただろう。


どんな話があったのかヴォルフがベルティアーナ嬢と手を繋いでホールから退場したのには驚いた。


まったく女に免疫のないヴォルフが失礼なことをしていないか心配だ。

なんと言っても私の側近のレックスの妹に粗相があって怒らせるようなことになれば困るのは私だ。


そんな心配をよそに、いつもの眉間に皺を寄せているのは変わらないがヴォルフはご機嫌で帰ってきた。

それが分かるのも私にとってヴォルフは可愛い弟だからだが⋯⋯何があった?


「ヴォルフ何かいい事があったのか?」


「あっ!兄上」


声のトーンもいつもより少し高い気がする。


「俺は可愛いそうですよ」


ブッ、ゴホッゴホッな、何を言っているんだ?


「俺って可愛かったんですね!」


「そ、そうだな」


私にとっては弟だからな⋯⋯でも見た目は身内の欲目を抜きにしても可愛い部類ではないぞ。


「兄上もそう思いますか!やっぱり俺は可愛い」


ベルティアーナ嬢⋯⋯一体ヴォルフに何を言ったんだよ!おかしくなって帰ってきたではないか。

私は心配になり、父上の元に向かってヴォルフとの会話をそのまま伝えた。


⋯⋯⋯⋯爆笑された。


『昔のヴォルフが戻ってきたみたいだな』


そうだ。昔のヴォルフはよく笑い、よく泣いて、素直で愛らしかった。

そんなヴォルフが変わってしまったのは、私が暗殺されそうになったところを見てしまったからだ。


それがヴォルフにとって身近な人を亡くすかもしれない。という意味を初めて知った出来事だった。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ヴォルフが物心ついた頃には私には王太子教育が始まっており、それでも時間の許す限りは一緒に過ごしていた。


いつも授業に向かう私を追いかけてきては泣いたことも何度もあった。


私が8歳、ヴォルフが5歳の時だ。

ヴォルフにも王子教育が始まった。


我々王族の家庭教師になるような人物は優秀なのはもちろん、人柄や偏った思想や危険思想の持ち主でないことも慎重に調べられ、何人もの候補の中から選ばれる。


「たくさん勉強して父上と兄上のお力になれるように頑張りますね」


家庭教師と相性がよかったのか、嫌がることなく毎日楽しそうに授業に向かうヴォルフに私も両親も安心したものだ。


ヴォルフもその家庭教師に懐いていた。


その家庭教師は素直で疑うことの知らないヴォルフに、笑顔の裏に隠された悪意があることも、ヴォルフを担ぎ上げ利用しようとする人物もいることも、なんなら私を排除しヴォルフを王位に就かせ操ろうとする者もいるだろうことも授業に盛り込んでいた。


まだ5歳のヴォルフに教えるには早すぎる内容で、理解するには難しいものだったはずだ。


だがヴォルフが6歳になった頃に事件が起こった。


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