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Alluring / Fear  作者: 魂宝石
第一章 闇に舞う人影
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第一章7 治癒の魔術師

治癒の魔術師


静寂の夜に、鮮やかな銃声が響く。

スグハの叫び声はかき消され、ナギサの覚悟は決まり、白髪の男は笑っている。


ゆっくりと、ナギサは目を閉じてその運命を受け入れようとした。

スグハはその運命に抗おうとした。

白髪の男は運命を決めようとした。


この関係を崩す者が現れたら、どうなるだろうか。


ナギサの顔に、鉄の濁った臭いが降りかかり、濡らす。

液体ではない、何か形があるものも付着し酷い吐き気を催すものだった。


白髪の男が倒れていく。膝をついて、自分で刺した剣に自ら頭を裂きに行った。


時間が止まる。いや、止まったように感じた。

それほどまでに、目の前で起きたことは衝撃的で。


「死んで…ない…」


元々低かった声が更に低くなっている。自分の胸に穴が空いていないのを確認した。

撃ち抜かれていない。

どうやら、誰かが助けてくれたみたいだ。

安堵のため息を吐こうとする。

が、それよりも先に意識に限界が来てしまった。

闇に引き摺られていく意識を、ゆっくりと受け入れていく。


あぁ、スグハ……。ごめん……。





白髪の男が撃ち抜かれた瞬間、静かに睨んでいた月は太陽に変わり、元の暑い夏のような天気に戻る。

瞬きをした瞬間変わったため、スグハは眩しさで目を細めた。そんなことよりも、安心できる事実が。ナギサは撃ち抜かれていない。

足が安心で止まりそうになる。

しかし、ナギサは瀕死の重傷を負っているはず。

太陽の光で良く見えるナギサに向かって、走り、走り続けた。


「ナギサ…さん…!」


ふらつく足をなんとか立たせて、転びそうになる。


「ナギサさん!あぁ……」


目の前に広がるのは、見るも無惨なナギサの傷だらけな体。白い肌は赤く染まり、あたり一面に…。

吐きそうになるのをなんとか堪える。

一番辛いのはナギサ自身。

スグハはそれに耐えて、命を救わなければ。


しかし、命を救おうにもスグハは医学について何も知っておらず、使える道具もない。

何をしても、スグハは無力なままだった。


「どうしよう…どうしよう……」


またもや弱音を吐く。目の奥から熱が込み上げてきた。

このままナギサを殺すなんて、嫌だ。


綺麗な花から、死んでいく。

それは本当のことらしい。


「誰か…誰か!」


絶望に飲まれていくスグハ。

瞬間、後ろから足音が聞こえる。

草を踏み締める音だ。

咄嗟に背後を振り向くと、そこに立っていたのは、細身の女性だった。

ルビーのように輝く赤の瞳。

色白の肌。

サファイアのような宝石がついた杖。

まるで、魔女のような格好。

そんな女性が立っていた。


「危なかったね。少女ちゃん」


優しく、ねっとりとした声で話しかける。

スグハは唖然とし、ナギサの体へ触れる彼女を見るしかなかった。


「ナギサちゃんのトドメを刺しに来たんじゃない。死なれたら困るからね」


「あ…あなたは…なんなんですか…?」


ナギサの腹部の布を剥がし、剣を引き抜くり辺りに血が飛び散り、中の内臓が丸見えだ。その彼女の行動は、果たして合っているのか。

医学的知識を持たないスグハにはわからない。


「なっ…!何をして…」


すると、その魔女のような格好の女性は手を優しく添える。瞬間、翠色に輝く光がナギサを覆った。


「私は治癒魔術師、オーガスト・ドレイク」


腹部の傷が塞がり、顔に生気が宿る。

傷口を継ぎ合わせて癒着し、泡立っていく傷口が、更に糸を引いて治っていくのだ。

やがて傷跡も残らず、綺麗な腹へと変化を遂げた。

しかし、見るのも勇気がいる、そんな光景だった。

治癒魔術師、それは本当に実在する職業だとスグハは実感する。


「別名、泡沫の魔女…かな」





「………ぁ」


激しい戦闘の末、瀕死の重傷を負ったナギサ。自分の体からは腐った鉄の臭いがして、不快でならない。

体にのしかかる倦怠感と疲労感。

私は…どうなった。


目を開き、長いまつ毛を輝かせる。すると、目の前にはナギサの手を繋ぎながら、涙を堪える少女…スグハがいた。

そして、その隣には、


「ドレイク……」


「ははっ、なにヘマこいてんだよ。ナギサちゃん」


目覚める前の記憶を思い出す。

死者の精霊を使い、白髪の男と戦った。そのあとは剣に貫かれ、意識を…。

生きているということは、ドレイクのおかげだろうか。


「ありがとう、ドレイク。君がいなかったら死んでいただろう」


「はぁ…。それを言うならスグハちゃんにもだぞ。ずっとアンタに寄り添っていたんだから」


涙目になり頷くスグハ。その顔を見て、思わず撫でてやりたくなる。


「ありがとう、スグハ。迷惑をかけて、心配させてごめん」


スグハの黒い髪を撫でながら、微笑んでいう。

今にも泣きそうな彼女を、見つめながら。


「よかったです…ぐすっ…よかったぁぁ…うわぁぁん!」


ナギサがスグハに持つ印象はクールで変な子、というものだったが、今は、優しくて、可愛らしい女の子と変わった。

自分のために泣いてくれる子。

それは、ナギサにとって忘れられない、大切にしたいものだった。


「あぁ、ありがとう。ドレイクもすまんな」


「まったく…アンタは私がいないとダメなんだから〜。ほーれよちよちスグハちゃん〜」


ナギサが寝ている間に何があったか分からないが、随分と仲良くなったそうだ。まぁ、ドレイクは優しいし、私よりもいい性格を持ってるから、スグハも話しやすかったのだろう。

泣きじゃくるスグハの背中を撫でながら、ドレイクはナギサを見る。


とても、安心した。





「ドレイクさん!ナギサさんは大丈夫なんですか!」


ナギサが治癒魔法をかけられて数分後、意識が戻らないことを心配したスグハがドレイクに質問した。


「大丈夫!大丈夫だって!私の腕前は帝国一だからよ!」


嘘か本当か分からないドレイクの反応にスグハは疑いの目を向ける。

それに、ドレイクについて何も知らないのだ。ナギサを知っているように話していたが、どんな関係なのかも分からない。何者なのかも分からない。そんな相手に恩人の命を任すなんて、怖い以外にない。


「本当に言ってるんですか!でも全然意識戻らないですよ!」


「安心しろって、治癒魔法は相手を治すことができても、その効果を発揮するためには体を休ませないといけない。だから、私はナギサの意識を戻らないようにしてるの!起きたら効果が薄くなっちゃうの!」


早口で語るドレイクに、スグハは押される。まだ、この異世界について何も知らないスグハには、これが本当の話か分からない。

魔法についても、精霊についても、一切分からないのだ。


「じゃあ、あなたは何者なんですか!なんでナギサさんのことを知っているんですか!」


ドレイクは真紅の瞳を揺らしながら、スグハの質問に答える。


「私はナギサの姉なんだよ。山脈から抜けた先にあるベルリア帝国で魔術師としてやってるのさ。私は結構有名なんだよ。知らないの?」


そうだった。ドレイクはスグハがこの世の人間ではないことを知らない。


「知りません。私はここの人じゃありませんから」


すると、ドレイクは驚いた表情をして、スグハに質問責めをする。


「え?マジ?じゃあ、オーランス王国の人?」


スグハの聞いたことのない国の名前が出される。もちろん、知るはずがない。


「違います。どこの国ですか」


「おいおいマジかよ。スグハちゃん勉強したことある?」


なんだから馬鹿にされたようで腹が立ったが、その怒りを押し込めてドレイクにぶつける。


「うー!私はこの世界について何も知らないんです!他のところから来たので!」


大声で、山彦まで聞こえる大きさで叫んだ。

ドレイクは信じられないといった表情でスグハを見る。確かに、急に大声で怒鳴られたらビックリするもんだろう。

スグハは驚かせてしまったことに申し訳なくなり、謝ろうとするが。


「あっ…ごめんなさい急に…」


「本当の話か…?」


「はい…なんですか?」


「スグハちゃんが例の…五千年に一度の転移者か!」


スグハの頭は混乱に塗れた。


第一章7 終

どうも!魂宝石ことソウルジェムです!ここで第一章は終わりになりますが、どうでしたでしょうか。これが初めて書く作品ということで、いろいろ気になった部分があったと思います。もしよければ、ぜひ、感想をください!

そして、次の話から章が代わり新たな土地へ足を踏み入れます。暖かい目で見てくれたら嬉しいです!

それでは!

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