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猫のみぞ知る

…………





何はともあれ、2人(1人と1匹)は一緒に行動することになった。


黒猫は雛子に名前を尋ねられると、そんなものはない、と答えたので、雛子は黒猫を「トクさん」と呼ぶことにした。


無論、特別の「トク」である。


適当な名付けだとぶつぶつ言いながら満更でもない様子のトクさんは、突然、ひょいと塀から雛子の肩に飛び乗った。


大きいので重いかと身構えたが、乗られてみると思ったより軽い。


肩の上で毛繕いをしているトクさんを見ると、何故かさっきより明らかにサイズダウンしている。




「……トクさん、ちょっと若返りました?」


「馬鹿言え。そんなわけがないだろう。

世界のことわりに背く。

こちら側では多少ならば体の大きさを変えられるだけだ。

……ちなみに、こんなこともできる。」



そう言って、トクさんは雛子の目の前に尻尾を

差し出した。


いつの間に変化したのか、その尻尾は二股に分かれてふわふわと揺れている。



「トクさんって、本当に何者なのですか?」



驚いた雛子が尋ねると、



「ただの、年を食った猫さ。」



小さなトクさんは、自嘲気味にそう答えた。




…………




トクさんによると、先程まで雛子たちが居たのは「2つの世界の狭間」であって、完全な「裏の世界」ではなかったのだそうだ。


成程、雛子はトクさんに夢中で気が付いて居なかったが、先程の周りの不可思議な景色はすっかり一変していた。


といっても、雛子が元々居た世界と違うことに変わりはないのだが。


相変わらず家が立ち並ぶ住宅街のようだが、そこにもはや現代風の家は1つもなかった。


全ての家が木造の平家で、カーテンの代わりにすだれが掛かり、お洒落なガーデニングがなされていたはずの庭ではナスやトマトといった夏野菜が飾り気もなく植えられている。


コンクリートで固められていた塀はレンガに、道路は石を敷き詰めて舗装しただけのものに変わっていた。


まるで歴史の資料集で見る、昔の日本の風景のようだ。



此処が本当に「世界の裏側」なのだろうか。



そもそも「世界の裏側」の本質とは何なのか。



雛子はトクさんに聞いてみたが、此処に詳しいこの猫でさえ、よく分からないという。


トクさん曰く、



「人間も、自分の生きている世界の本質など知り尽くして生きている訳ではないだろう?」



だそうだ。


確かに的を射ている。


雛子はしぶしぶ納得することにした。








さて、元の世界に戻るとはいっても、何も手掛かりがない状態では埒があかない。




「この先どうすればいいのでしょうか……。」


「他に協力者を探すのが賢明だろう。」


「協力者にアテがあるんです?」


「1人……いや、1匹だけ、な。」



そう言うと、トクさんはミニサイズのまま雛子の肩から飛び降りて、二股の尻尾を振りながら雛子を先導する。


(猫仲間に協力を仰ぐのでしょうか。)


雛子はその後をついて行った。




…………

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