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救苦救難

「おいおいおいおい、えれぇ事になってんじゃねぇか。最初の扉までは何も出ねぇっつって無かったか」

「どれもこれも受肉個体、地竜の巣も受肉個体で溢れていた、と」


 目の前に広がる魔物の死骸、ぶつ切りにされた大蛇、首の無い下半身が馬の魔物、ひび割れた戦斧に潰されているゴブリンやコボルト、下半身が無く内臓が溢れ舌を伸ばして倒れる牛頭の大男、床は赤黒く乾いた血がこべりつき、壁にも大筆で線を描いたような血の跡がそこら中に見られる。


「うっ、むせるほど闇の気配がつよくなっています」


 凄惨な様子を目にしたソフィはクレスの方から口元を押さえ鞄の中に逃げ込むと上半身だけを出して奥を指さす。背中の羽が枯れたように畳まれていることから恐怖を感じていることが窺える。


「リーフが追っている相手……相当不味いかもしれないですね」

「ハッ、こんだけの相手を単騎でヤれんだ、簡単にゃ死なねぇさ。けど、ま、早ぇとこ助けに行ってやった方が良さそうだわな」


 ウルザが鉄扉の方角を睨む。クレスは、そちらを一瞥した後で後ろを振り返り魔法陣の輝きが無くなっていることを目視したが言葉を発することは無かった。


「えぇ、少なくとも、こんな魔物程度で済むダンジョンでは無くなっていそうですからね」



◆ ◇ ◆ sideリーフ ◆ ◇ ◆


 毒矢を放つ犬面の魔物、コボルトを横薙ぎに切り裂き腕が伸びた所を背後から大きな気配が迫る。


「オオォォォォーーンン!!」


 裂帛(れっぱく)の気合と共にリーフの倍ほどの長身である牛頭の巨漢から振り下ろされた戦斧は小柄なリーフの体が隠れる程に大きく、戦斧を交差させた大剣で受け止めた衝撃はぶつかり合った金属音よりもズズンと石畳に亀裂を走らせる衝撃音の方が大きく響いた。

 「換装、赤」と呟き、受け止め痺れる手から両の大剣を手放すと床の亀裂をより深くする程、強く踏み込み戦斧をもったまま衝撃に硬直している牛頭の巨漢、ミノタウロスの腕に飛び掛かり膝蹴りで腕を砕く。


「牛っ男で!」


先ほどの雄たけびと同じような叫びをあげ手放された戦斧と共に着地すると、すかさず戦斧を両手で持ち、腕を体に巻き付けるように捻り、足首、膝がビキビキと悲鳴をあげるのすら無視して横に薙ぐ。


「ラストォォォー!」


ミノタウロスは自身の巨大な戦斧で上下に体を別れさせ、戦斧の厚みに押され上半身が吹き飛んでいった。


「はぁ…はぁ…か、換装……白」

『最初のより大分強かったわね』

「ものすっごく、疲れた、ダメ、ちょっと休憩」


 そう言うと放り投げた戦斧をアイテムボックスの黒い沼に沈め、大剣を拾い直しザクンザクンと壁になるように地面に突き刺した。そのままヘナヘナと座り込むと大剣を拝むように伏せ頭を抱えピンと猫耳を立てる。


「…何か来たら教えてセルティ」

『無理よリーフ。貴女の意識が無いのだから声が届かないわ。それに、その恰好で眠るつもりだったの?』

「あと三十秒だけ、ゆっくりさせて」

『それでゆっくりできるのね』


 子猫が顔を抱え謝るような恰好で地面に伏せると石畳のヒンヤリとした冷たさが動き回って熱くなった体を冷ます。白ランジェリーで強化された自己治癒力で変色していた傷口の痛みが徐々に和らいでいく。

 学校で走り込みした後、疲れ果ててこうなってた私に「謝られてるみたいだから止めて」って笑いながら背中を撫でてくれた友達、金髪に狐耳のあの子。なんて名前だったっけ、ほら、少し背の高いあの子。


『リーフ、三十秒経ったわ』

「……もう、あと三十秒」

『私にスヌーズ機能は無いの、起きるんでしょ?』


 腕の中で頭を起こし、目を開ける。上半身を起こすと壁になっている二本の大剣に手をかけ、ぬたぁっと泥のように重く感じる動きで立ち上がる。大剣壁の向こうは相も変わらず斬られ叩かれ潰された魔物の死骸だらけになっている。


「起きますよ、起きますとも。ちょっと懐かしい気分に浸ってただけだもん」

『また奥から気配がするでしょ?行きましょう』

「えぇ、また威圧感だけが立派なヤツならいいなぁ」


 ズッズッと両手でそれぞれ大剣を引き抜き大剣入れに戻し、魔物が粉砕した扉をくぐり奥に進む。扉の先は最初に入って来たところと同じように広場が広がっていたが、全ての魔物が甲冑野郎の部屋に押し寄せて来ていたらしく左手で引く大剣入れの車輪が鳴らすゴロゴロという音がやけに響く。猫耳をぴくりぴくりと動かして周囲を警戒しても奥の扉までは何もいそうにない。

 右手を伸ばし目の前に出したアイテムボックスの黒い沼に手を入れると緑色をしたポーションを取り出す。大剣入れやドレスをくれた商人さんから貰った時には疲れも早くとれた気がしたので、買っておいた怪我用のものを一気に飲み干す。


「ポーション、怪我用と解毒用のもの結構買ったんだけど、白下着が有能過ぎてあんまり要らない気がしてきた」

『ふふ白い子が喜んでるわ。黒い子は嫉妬かしら、早く換装して欲しいみたいね』

「何それ、そんなの分かるの?」

『当然じゃない』


 広場を抜け、再度鉄の扉に手を当てる。「換装、赤」と、力が強くなる方を選ぶとセルティが笑っていたが、構わず扉を押し開ける。室内はやや暗く夜目を使っても何故か先が見通せない。大剣入れを手放しアイテムボックスから牛男が残した戦斧を引き抜き担ぐように構えると大きく一歩を踏み出し、背中の戦斧を巻き込むように上半身を丸め、肩や肘関節がビキビキと音を立てる程、力一杯に戦斧を投げつけた。


 少し先の方で金属音が鳴ったあとドシンという低い衝撃音が鳴り、室内が他の部屋と同じようにぼんやりと明るい状態となり先の見通せなかった室内の暗さが消えた。


「当たったかなぁ。さっきのヤツも真ん中にいたし」

『ブフっ、ごめんなさい、ふふアハハハハ』


 部屋の真ん中にぽつんと置かれた私の全身を隠せるほど大きな黒い盾をアイテムボックスに沈めると、また部屋の奥からガコンと音がした。しかし、今度はしばらく待っても扉が壊されることも魔物の大群が押し寄せるような音もすることが無かった。


「何もいなかったね。ここ休憩室だったのかも。ちょっと暗くなってたし」


 投げた戦斧は脆かったのか刃が欠け大きなヒビが入っていたので放置し、アイテムボックスから大剣入れを出し両手に大剣を握ると剣の柄で奥の鉄扉を押し開ける。セルティは、何かがツボだったのか堪えられない笑いと共に「そうだったかもしれないわね」と返していた。


 入室前にポーションまで飲んで回復していたので、力を込めて鉄の扉を押し開けきる。扉が開ききると同時に、前に騎士道がどうのと喋り出していた全身甲冑に似たやつが槍を突き出して来た。槍先に向かって距離を詰め右の大剣を手放し槍を掴み引く、体制の崩れた甲冑に左の大剣を叩きつけると形の(ひしゃ)げた甲冑は光の粒子になって消えた。


「いるいる、いるじゃない。こんなに沢山」


 手放した大剣を拾い直し再び前を向く。最初の広場に似たそこは角や棘こそ無いものの全身を黒い甲冑に身を包んだ騎士のような魔物が、それぞれ槍や剣、戦斧などを構え兜に浮かぶ人魂のような瞳を光らせ私を睨んでいた。


『似たようなのばっかり、飽きてしまうわね』

「喋りもせずに槍を出すだけ、口だけのヤツよりまともよ」


 右の大剣を突き出し、既にじわじわと距離を詰めてきている槍を持つ黒い甲冑たちに向ける。


「どうせ一匹も逃さないんだから」


 突き出した大剣を体に寄せると地面を踏みつけ駆け出す。右手で振るった大剣で槍を弾き、弾いた奴に左の大剣を浴びせると、左右の甲冑共が突き出す槍を前進して躱す。右の大剣を担ぎ背負い投げのようにして槍の奴の後ろから隙を伺っている剣を持つ甲冑に投げつけ、突き出して来た槍を掴み奪い取ると後ろから来た甲冑を貫き地面に縫いとめる。


「近い奴から順にッ全部!狩り尽くしてやる!」



◆ ◇ ◆ sideクレス&ウルザ ◆ ◇ ◆



 ウルザが分厚い鉄の扉を押し開けると、中からは咽かえるような血の匂いと、部屋を埋めつくす程の魔物の死骸が散らばっていた。


「こりゃあ、またとんでもねぇな」


 ウルザは火を噴いていた赤みを帯びた地竜に寄ると露出していた魔石を掴み立ち上がる。付いた肉片を指先で弾き魔石を鞄にしまい次にミノタウロスや双頭の大蛇など大型個体の魔石を同じように回収していく。


「これだけの魔物が受肉しているとなると、外に溢れていない事の方がおかしい」

「クレスさま、このダンジョンおかしいです」


 鞄の中から不安そうに声を挙げるソフィは眉根を寄せ、周囲に目を向ける。


「そりゃオカシイだろうぜ。ダンジョンっつーのに魔物も生きてりゃ出口も無ぇ」

「何だ、気づいてたのか」

「ハッ、どこかの賢者様は教えちゃくれなかったがな」


 ウルザが何でも無い事の様に魔法陣から戻れないと見抜いていたことについて、クレスはウルザを見直していた。言動に緊張感は無いが、槍を持つ立ち居振る舞いから相当の実力があるとは思ってはいた。しかし、それだけではないのかもしれない。


「頼りになる前衛なんだろ?」

「クハハハ、お眼鏡にゃ叶いそうかい?」

「フフ思ったよりは、ね」


 「そりゃ何よりだ」と、ウルザは口角をあげ視線を投げると魔石拾いに戻ってしまった。クレスは鞄を開け怯えているソフィの頭をそっと撫でる。


「ソフィ、どうおかしいのか教えてくれるかな」

「はい。このダンジョンは神の試練のはずなんです。私より、ずっと高位の管理者がいるはずなのに、なのに今、ここには神の試練の気配を感じないんです」


 クレスは奥の壊れた扉をくぐる。外側から内に向けて破壊された鉄の扉は壊れて間もなく、扉の向こう側は部屋の中と異なり魔物の死骸も罠など冒険者を阻害するものも何もない空間となっていた。


「魔物がどうといったことよりも、もっと深刻な……神の試練が乗っ取られたような、そんな感じがするんです」

「だ、そうだけどよ、賢者様はどう思うんだ?」


 ソフィが「わっ」と音も気配も無く真後ろにいたウルザに驚く。ウルザは驚くソフィの頭にポンポンと手を置くと奥の扉を目指し前を歩いて行った。


「クレスでいいさ、頼れる前衛様」

「ハハッ言うじゃねぇか、俺もウルザで頼むわ」


 足早に進むウルザを追い奥の扉を進むと、また何もない部屋に出た。認識阻害の魔法の残滓こそ感じたが、奥に砕けた大きな戦斧があること以外、特に何もない部屋をウルザもクレスも気に掛けることなく先へ進んだが、その先の惨状に足を止めた。


「おいおいおい、何だ?合戦でもあったのかよ」

「鎧の残骸に壊れた武器、これも何らかの受肉個体……いや、成りかけか」


 辺り一面に黒い鎧の残骸が散らばっていた。兜やガントレット、小楯と言った形をそのままにするものから、胸部が背中まで穴の開いた鎧や上半身がない鎧、縦に裂かれた大盾、折れた槍に貫かれている兜など血や死骸こそないものの広場は戦場跡のようになっていた。


「ヒっ……こ、これは神の試練で生み出されているはずなのに、な、なんで、なんで魔物みたいに受肉して、あ、ありえません。こ、こんな……」


 ソフィが鞄から出て黒い鎧の残骸に近づく。部屋の隅、鎧ごみとなった塊からカシャカシャと音がすると、脚部を砕かれ腕部もひび割れた甲冑が腕で這うようにガラクタの山から這い出して来た。兜の目の位置に宿る緑の人魂はボッボッと今にも消えそうではあったが、手に折れた剣を持ちソフィに近寄ってくる。

 ザンッとウルザが槍で兜を貫くと中の人魂は消え鎧は光の粒子が立ち上り消えて行ったがカランと音を立て、折れた剣だけがその場に残った。


「ようやく動くヤツが出たな。ま、ほっといても動かなくなっただろうがよ」

「全身消える訳でも無く、決まったものが残る訳でも無い」


 ソフィは残された折れた剣の傍によるとペタリと座り込んむと力なく背中の翼を下げ、小刻みに震えた。


「これは……これは、もう試練じゃない……」


 今にも泣きだしそうな顔で折れた剣に触れると、どんどん顔色が悪くなっていく。神の試練であったダンジョンで魔物ではなかったものが魔物のように受肉していた。クレスとウルザの認識はその程度だったが神の試練の管理者であったソフィが受けた衝撃は大きかったようだ。


「ソフィ、戻っておいで。まだ動くやつが居るかもしれないから」


 クレスが鞄を広げソフィに声を掛ける。ソフィが目に涙を溜め振り向いたその時だった。ドシンと奥の方から地面に響くほどの大きな音が響き、閉じられていた扉が揺れた。立て続けにドシン、ドシンと扉越しに壁まで揺れるほどの衝撃と共に重低音が響く。

 ドォォォンと一際大きな音が響くと同時、鎧の残骸が広がった奥にあった扉が吹き飛び壁を崩し土煙を巻き上げた。


「悪ぃなクレス、先に行かしてもらうわ。じゃ、また後でなっと、瞬身槍(しゅんしんそう)!」

「いやウルザこそ、後からどうぞ。超加速(アクセラレイト)!」


 扉が吹き飛ぶと、ほぼ同時に二人が駆けだした。ウルザは槍を構え踏み込んだ足元から火を噴き爆発的な速度で、クレスは風を巻き上げ地面を滑るように滑走し砂埃を巻き上げ、二人の駆け出した反動で一拍遅れて爆風が巻き起こり、ソフィは折れた剣を手放し地面を転がった。


「ま、待ってくださいよぉ」


 ソフィは、もう姿が見えなくなった二人をパタパタと背中の羽をはばたかせ必死で追いかけた。



◆ ◇ ◆ sideリーフ ◆ ◇ ◆



「換装、赤!!」


 ガギンと金属と金属がぶつかったにしては鈍く重い音を立て、リーフが踏みとどまる地面に亀裂が走った。


『これまでとは別格ね』

「なんで、こんなにっ、急に強くなるのよ!!」


 体を回転させながら踏み込み、両の大剣を巻き込んで叩きつけるが、リーフの大剣より尚巨大な馬上槍(ランス)に阻まれ止められてしまう。


「ココハ破滅ノ園ゾ、第三ノ試練、決シテ甘ク無イモノト知レ」

「第二の試練どこいったのよ!!」


 大剣を止めた馬上槍(ランス)を蹴り上げるが、蹴りで動いたのではなく反動を利用され振りかぶられるとセルティが舞った時のような速度で馬上槍(ランス)を打ち付けられ、大剣を交差させて受けても地から足が浮き入り口の扉に打ち付けられる。


「カハッ……痛ぃ、換装、黒」


 第三の試練とか言うヤツは、これまでの黒い全身甲冑ではなく、ヤギや羊の骨のような白い兜に羊の角のように渦を巻いた角を生やし、鎧も白い骨のような外殻だが繋ぎ目になるようなところには赤々とした筋肉がついており、肩や腕は剥き出しになった骨と筋肉だけで構成されていた。リーフからすると見上げるほどの身長があるが、右手に持つ馬上槍(ランス)は柄も長く、全長はこのヤギ骨甲冑よりも大きく、更に左手には、その全身を隠せる程大きな大盾を構えている。


「我ハ、第三ノ試練、深部ノ番人。易々ト通レル等、露トモ思ウデ無イ」


 盾に半身を隠し馬上槍(ランス)を構え突進してくる。さっきから、何度もコレで打ち合っては吹き飛ばされてるのに、もう入り口まで戻されてしまい後がない。


『リーフ、代わった方が良いわ。無理のしすぎよ』

「くっ……まだ、やれるもん!」


 私が強くならなきゃ、この程度で音をあげてたら、いつか頼り切りになる。私の恨みを晴らすのに、私の想いを遂げるのに、私の望みを叶えるのに、誰かを頼らないと生きていけなくなる。だから、本当に限界まで甘えてなんていられない。


「オォォォォ!!」


 裂帛(れっぱく)の気合と共に右手の大剣を投げつける。気色の悪いヤギ甲冑が馬上槍(ランス)で弾こうとするが大剣の重みから切っ先が弾かれると、すぐに大盾を下し身を隠した。ドゴンと、鼓膜を揺さぶる音と共に止まったヤギ甲冑に向け、両手持ちにした大剣を背負って飛び掛かり腹筋が痛み腕が千切れそうなほど力を込め全身で振り下ろす。再度、ドシンと重低音が響くとヤギ甲冑の大きな盾に亀裂が走り、大盾を置いた床の石が砕けた。


「蛮勇ナリ!!」


 ヤギ甲冑は、そのまま全身を大盾に寄せた突進、シールドバッシュで盾にめり込んだ大剣ごと突っ込んで来た。岩に打ち付けられたような衝撃で入り口の扉に衝突すると、メキメキと背中の骨が軋む音が鼓膜に響いた。


「くっ、換そ」


 喉の奥から血の味がする。叩きつけられた衝撃で息を吐く間もなく、ヤギ甲冑が再度仕掛けて来た、換装を言い終えられなかったがセルティが炎竜のランジェリーに変えてくれたおかげで大剣に身を寄せヤギ甲冑に突進で応戦できた。まともに受けるよりこちらからも攻めることで少しでもダメージを減らそうと試みたが、視界が暗転するほどの衝撃と共に入り口の扉をぶち壊し、次いで振りぬかれた馬上槍(ランス)を大剣で受けると背にした扉も耐え切れず吹き飛んだ。


 土煙を巻き上げ吹き飛ぶ最中、ヤギ甲冑が馬上槍(ランス)を腰だめに構え駆け出す様子がスローモーションに視界に映る。


「ごめん、セルティ…憑――」


 ドゴォォォン!と強い衝撃が体に響いた。スローモーションで映る世界の中、ヤギ甲冑は炎を纏った何かが衝突して来たせいで真横に吹き飛んで行った。意識が周りを認識すると、覚悟していた壁への衝突が無く、背中から誰かに抱き留められたのだと分かった。


「ワリィ、リーフ。ちっと遅くなっちまったみてぇだな」

「いや、ウルザ。僕としては満点のタイミングだったかな」

「ちょ、おいクソ賢者!てめぇどさくさに紛れて抱いてんじゃ無ぇ!」

「ウルザは骨とでも遊んでいればいいだろ。僕は骨に興味は無いからね」


 炎の中から現れたのがウルザで、私のことを抱き留めたのがクレスだと認識するまでには二人の声が収まるよりも長い時間を要した。

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 いつもリーフたちのことを見守ってくださってありがとうございます。

お読みいただけていることが大変うれしく思います。


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