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近づく不穏

『ダンジョンも4つ目となると段々飽きてくるわね』

「そんなっ!ことっ!まっったく!!」


 分厚い鉄板のような大剣を振り回し、牙をむき出しに涎を振りまきながら飛び掛かってくる牛のように大きなトカゲの群れを切り伏せていく。紙も切れないほど切れ味のない刃筋を立てただ重みだけで剥き出しにされた口蓋から後ろ脚の付け根までトカゲを裂く。


「考える余裕がないの!!」


 砕け散った牙が舞う中、返す刀で大剣を反対に薙ぐが刃筋を向け直す余裕などなく鉄塊である大剣の峰で重さの暴力に任せ飛び掛かってくるトカゲの頭蓋骨を砕き壁に叩きつける。


 最初に潜ったダンジョンはゴブリンや狼が深く潜るにつれ武器の練度が上がるだけのものだった。たくさんの冒険者とすれ違い、遠くから冒険者を見守るという交流が持てた。

2つ目のダンジョンは鎧を纏った魔物や魔物になった鎧の巣だった。これは兵士や騎士などが訓練に使うダンジョンらしく浅い層では警備兵をよく見かけ最下層には大剣より分厚い鉄塊を纏う大鬼がいたので階層ごとお湯に沈めてやった。

3つ目のダンジョンは人の寄り付かない呪いの祠と呼ばれる場所で、どこまでもほの暗く人が寄り付かないダンジョンと言われていたが近づくだけで体が軽くなり入るなり大剣が料理用包丁のように軽く扱えたためセルティみたいに大剣2本振り回してたら生き物も元生き物も含め動くものがいなくなった。


『ダンジョンの入り口を魔法仕掛けで封鎖して冒険者登録証が銀色以上でないと入れないってギルドで聞いたから期待したのにトカゲばっかり見てても私ちっとも楽しくないわ』

「竜!トカゲじゃないの!地竜!!」


 背負うように大剣を振り回しそのまま手を離すと障害などないかのように壁に張り付く地竜(トカゲ)を壁ごと貫いた。


 武器を失ったと目を光らせ飛び掛かる地竜に対し睨み返す。


「次から次にコイツら……」


 涎をまき散らし

 血しぶきを降らせ

 内蔵を撒き散らせて

 牙だ鱗だと降りかけて


 花も恥じらう乙女の体に張り付かせて来やがる。斬っても叩いても潰しても裂いても刺しても砕いても次から次へと飽きもせず湧いてきやがって。


「死んでも死んでも次がいるとでも思ってるなら死んだらどうなるか体験させてやる!」


飛び掛かって来た地竜を避けざまに目玉から拳を突き上げると頭蓋骨を吹き飛ばし脳漿がブチ撒けられLv6となった呪詛身体強化が発動したことが分かった。一瞬怯んだ後ろに控えるトカゲに向かい地面を蹴ると踏み込みが地を抉り、地竜の焦点が合う前に間合いを詰めると下あごから蹴り上げ牛ほどの頭を蹴り上げるのではなく下あごを砕き蹴りの軌道どおりに地竜の顔面を抉ってやった。


『ねぇリーフ。貴女が呪詛を纏ったから見えやすくなったのだけど、このトカゲ達も呪いを纏っているわね。狂化かしら』


 壁に突き刺さった大剣を片手で抜き、アイテムボックスから大剣入れを出すともう片手にも大剣を持つ。


「脳を晒し、心臓を吐き出し、ハラワタを網膜に焼き付けて!!命が尽きる絶望を味わって死ね!!」


 鉄の翼をはためかせ、暴風のようにダンジョンを駆ける。嵐のように血しぶきが舞い、雹のように砕かれた牙や骨が舞い、大剣がダンジョンの壁を打つ音が落雷のように響く。


『聞こえてなさそうね。狂化じゃないわね、いつもどおりね』



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「クロに……リーフに似た魔力波の痕跡がある。食い散らかされているけれど、ここで大量に魔物が屠られた痕跡も感じる」


 孤高の賢者クレス=ウィズムはリーフの魔力残滓を追い特に強く感じたメルガストからハウスブルグに向かい方向から推測しガングリオンに向かう途中でリーフの魔力残滓が濃くなっているのを感じ取った。


「必ず僕が…いや、俺はリーフを…」


 強い決意を瞳に宿し、クレスはガングリオンに歩を進めた。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「よぉ、兄ちゃん方よ。ここらでやったら強ぇ黒髪の女見かけなかったか?」


 槍を携えたウルザ=ストームはガングリオンの冒険者ギルドで酒を飲む冒険者に酒を差し出すと隣に座った。

 根拠などない。ウルザの勘がリーフは戦いを求めダンジョンに向かうのだと囁いたに過ぎず、ウルザは運命の巡り合わせでリーフと再び会えると信じ勘に従ったに過ぎない。


「おう!気前がいいなぁ色男!」

「この槍あんたのかい?こりゃあ凄ぇ…いや、お兄さん空気が違うね。槍が凄いだけじゃなさそうだ」

「はははは、大したこたねぇよ。最近女に伸されたばっかだ」

「がはは冗談言うな。俺たちの目も節穴ってワケじゃねぇ。おまえさんとやりあって勝てると踏む程青くもねぇよ」

「ま、そんなこたぁどうでもいいんだ。で、どうだ?やったら強ぇ黒髪の女。目が青い猫みてぇな奴に心当たりは無ぇか」


 話しながら手を上げウェイトレスを呼ぶと銀貨を渡し麦酒を指さしてから指を3本立て人数分のおかわりを注文する。


「おうおう兄さん気前がいいな!そうだなぁ、そんな女ぁ俺は見たことねぇな。心当たりも無い」

「兄さんに強ぇって言わせる女…ねぇ、そういえば見たことは無ぇんだけどよ。棺引き(コフィンウォーカー)って聞いたことあるかい?」

「棺引き?」

「おっ棺引きの話なら俺達も混ぜてくれ!俺は棺引き(コフィンウォーカー)とすれ違ったことがあるぜ!俺にも麦酒もらえんのかい?」


 ウルザが再度ウェイトレスを呼び止めると人数より多くの麦酒と大皿の鳥料理を注文する。


棺引き(コフィンウォーカー)はよ、ダンジョンの闇より昏い黒髪黒装束で鬼のような女でよう、そりゃあ怖かったぜ」

「いや、棺引き(コフィンウォーカー)はヒョロッこいオッサンだって聞いたぜ」

「馬鹿か、てめぇ本当にみたのか?棺引きは女だよ。すげぇガキくせぇらしいぞ。たまに受付付近にいると空気が重くなるって奴だ」

「ダンジョン狂いで人と話さねぇって奴だろ?昨日も出て行った後に受付嬢から警告あっただろ。あの娘っ子が棺引きさ。お前ら全然みてねぇじゃねぇか」

「目を合わせたら呪われるんだろ?」「ハハッそんなバカなことがあるか」

「あ、あいつか?口調の厳しい受付嬢のとこに時々立って壁と話してる頭おかしい女の子」


 ウェイトレスに銀貨を数枚渡し席に麦酒を運ばせると話に花が咲く冒険者を置いてウルザは席を立った。


「リーフ、今度こそ俺が貰い受けてやっからな」


 槍を握りしめウルザはダンジョンに向かった。

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