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サバイバー・ソロモン  作者: オウルマン
第四章 南西大陸の聖女様
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第8話 山越え

 漢字の王に似た形状の陸地。今は中央大陸の北西部に居る。


 船で西から回り込んで南下した方が早いんじゃないか、と聞いてみたが意外な回答が返ってきた。


「それは無理なんですよ。ここには『海路防壁帯』があるのです」

「何です? それは?」


「防壁といっても実際は暗礁と浅瀬が広がる船が通れない海域なんです。船どころがイカダ一隻通れない。しかも範囲が広すぎて何処まで広がっているのか、全貌が分からないそうです。ですのでこの海域は危険ということで旅客船は近づかないんですよ。地元の漁船が物好きな学者が偶に向かうくらいですよ」


 ということでここから陸路。以前来た時は魔物が大量に湧いていたが、今回はそこまで多い訳でもない様子。


「ちょっと通りますよっと」

 道の真ん中で騒ぐデカいリスの魔物に漆黒の刃を振るう。素早い切り返しと骨ごと斬り刻む問題児の合わせ技で二匹を瞬殺。逃げれば良いのに威嚇を続けるヤツは、近い順に斬る。ヴィクトルも槍をビュンビュン振り回して援護し、進路上に居座る魔物達をどかせていく。


「素晴らしい腕前ですな」

「ソロモン様はお強いですね」

「そうかい? ありがとう」


 まぁ良い運動になった。一日中馬車に乗ってると体が鈍っちゃうからな。


 二人が乗り込んだ後再び馬車が動き出す。腰まで伸びる草原を真っ直ぐに進む。

 他にも護衛役はいるが役割分担している。前に出て戦う攻撃役はソロモンとヴィクトルで、他が馬車に張り付いて守る防衛役だ。


 一行は森林地帯へ入る。原生林を真っ直ぐ伐採して作った道ですれ違う馬車が多い。この道が頻繁に利用されている証拠だ。


 暖かくなったからか虫が多いな。いや、森のど真ん中を通っているから当然といっちゃあ当然だが。

 小さな敵にてこずっていると再び目の前に魔物の姿が。馬車を一旦止める。


「ゴリラだな。あれはまごうこと無くゴリラだ」

「城主様の国ではゴリラと呼ぶですか? ここでは『ガーロ』って呼ぶですよ」


 護衛仲間の解説が入った。名前は正直どうでもいい。


「邪魔くせーな。道の真ん中で騒いでるんじゃねーよ」


 自分の胸をドカドカと叩くドラミングという行為をしていた。


「普段は大人しくて、余程機嫌が悪くない限り害は無いですけどね」

 道の真ん中に立つ魔物はこちらを向いてドラミングを続けている。


 ソロモンは舌打ちをして馬車から飛び降りた。ヴィクトルもそれに続く。


「明らかに虫の居所が悪そうだ。ヴィクトル、左から回り込め。俺は右から行く。挟撃で片付けるぞ」


 ヴィクトルの動きは速かった。ソロモンはそれから少しだけ遅れて動き出す。


 やはり機嫌が悪かったようだ。先に近づいてきたヴィクトルへ殴りかかる。


 しかしそこは自慢の相棒。左手の盾で正面から受けて踏ん張る。気を取られている隙にソロモンは背後から上段斬りを決める。筋肉質の体をものともせずに、漆黒の刃は魔物の背中に大きな傷を付ける。続けて切り返しを混ぜた連続斬りで追加攻撃。


 怯んだ所でヴィクトルの槍が首元に突き刺さる。最後はブロジヴァイネを突き刺し、吸血させて失血死に追い込んだ。


 結構腕前も上がったんじゃないかな。ヴィクトルとの連携も上手くいっているし。


 護衛仲間と協力して魔物の亡骸を脇にどかした後、移動を再開する。森林地帯を越えればラグリッツ王国の南側の隣国『ホルソン』だ。国境から一番近い町で一旦宿を取り今後の計画を確認する。


「ホルソンは丘陵地と山岳地帯が国土の六割以上を占めています。デコボコな国なんてよく言われますね」

「山脈が見えてたな。結構高そうだった」


 ソロモン城が建つ山よりも遙かに高いのは遠くからでも分かる。


「ここから先は山越えです。今回の旅の難所ですね。トンネルが所々に掘られているので頂上まで行く必要は無いですが、しかしとても険しい山道なのは間違いないです」

「馬の負担も大きいよな? 一気に越える気なのか?」


 ソロモンの問いにリーダーは、

「確かに馬のことも考えなければなりません。ですので一気に越える強行軍みたいな事はしません。山間部に小規模ですが町がいくつもありまして、天候を見つつ休憩を挟みながら進んでいく予定になります」


 淀みなく答える。一度ここを通って来たからか、不安そうな顔はしていない。


「そうか天気のこともあるか。分かった、判断はベテランさんにお任せしよう」

「恐縮です」


 俺の城が建つ山が温く感じそうだな。


 実際温かった。ほぼ一直線に山道が作られていたソロモン城の山とは違い、ここは蛇行しながら登っていく。傾斜も急だし道のりは長い。


 晴れてて景色が良いのは素晴らしいがこれはやばいな。落ちたらアウトだ。


 ゆっくりと慎重に進んでいく。馬車がすれ違う事が出来るだけの道幅はあるが、かなりギリギリの広さだ。足下を見れば崖か急斜面、踏み外せばほぼ確実に命は無いだろう。柵は取り付けられているが、所々破損していて肝を冷やす。


 飛行機かヘリコプターなら飛び越えられるのになぁ。瞬間移動の魔法ぐらいあってもいいよなぁ。


 青空の下に遠くの山が見える。剥き出しの山肌に木々の緑。時々見える鳥達の影。いくつかトンネルを通らないと越えられないというのもこの山脈の険しさの証だろう。


 途中の町、規模的には村と言った方がいいがそこで一泊することになった。


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