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サバイバー・ソロモン  作者: オウルマン
第四章 南西大陸の聖女様
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第1話 宴会

 急遽宴会用の食材を買い出しに行くことになった。それにはソロモンとヴィクトルも同行した。ついでに山道の様子を確認しようと思ったのだ。


「大丈夫そうかなぁ」


 山を下る馬車から身を乗り出し、風を顔の前面に受けながら山道の様子を確認する。


「しっかり除雪されているので大丈夫ですよ」


 御者役の使用人は笑う。馬車はいつも通り安定して下り道を走っている。


「そのようだね、よかった。流石はヴィクトルだな」


 隣に座るヴィクトルは親指を立てた。不休の行動力と夜間でも安心の暗視能力で、山道の除雪作業を一人でやりきったのだ。体格の大型化に合わせて新調した鎧を纏い、スコップを担いで出陣したヴィクトルの後ろ姿は頼もしいの一言。


「この様子だと反対側の山道も大丈夫だな」


 二日後に帰還したヴィクトルをソロモン達は英雄と呼んだ。


 但し平地までは無理だろうということでそこまでは指示していない。下り終えた後はやや速度を落として馬車は走る。


 最寄りの町に着けば、早速美人帝国商人シェイラの商会に駆け込み大量の酒と食材を買い込む。勿論調味料も買い足しておく。日用品はまだ大丈夫だ。


 ついでに山道の除雪作業が完璧だと情報を流しておいた。冬場に山越えは危険だという判断で、山を迂回する従来のルートに切り替えた商会もあるらしいがそこは各々の判断に任せることにする。


 その晩は豪勢な料理と未開栓の酒瓶が卓に並んだ。普段とは違う食堂の様子に、ベルティーナは目を丸くした。


 勿論彼女を仲間外れにはしない。経緯を簡単に話して席に座らせる。


「ソロモンちゃんは何飲む? 葡萄酒? それとも麦酒? 蒸留酒もあるわよ?」


 悪気なし、調子よしでアルコールを勧めるエウリーズにソロモンはハッキリと、

「未成年なのでお酒は遠慮しておきます。俺は今十七歳ですので、後三年は待たねば飲酒はダメです」

「あらん? 貴方はもう成人じゃないのぉ? 城持ちで領主様なのに?」


「俺の故郷じゃ二十歳で成人。成人するまで飲酒は法的にダメなんですよ。なので折角の祝いの席ですけど遠慮します」

「そうなの? まあ無理にとは言わないわ」


 よしセーフ。世界が違うんだから、郷には入れば郷に従えでもいいとは思うんだけどね。子供の頃から染みついた倫理観だからな。高校の担任と教頭にも口酸っぱく言われているし。


 同じ区の高校で生徒の飲酒が発覚したとかで、一時期ピリピリしていたのを思い出した。


 この世界に来てからそろそろ半年が過ぎる。通っていた高校の様子はどうなのだろうか? 時期的には冬休みだろうな。

 

 俺は失踪者扱いか、それとも都合が良いように運営側が手を回しているのか。


 ソロモンは果物のジュースの瓶に手を伸ばした。その横でベルティーナが葡萄酒の瓶を手に取りラベルを読んでいる。


「ソロモン様の故郷では私もお酒を嗜む事は出来ませんね。まだ十八歳ですから」

「俺と一年しか違わないのか。ベルティーナさんの故郷だとどうなの?」


 手に取った酒瓶をテーブルに置いてから、

「特に年齢制限のようなものはありませんので祝いの席で頂くことはありました。通っていた学園では基本的に飲酒は禁止されていましたので、学園主催の催事の時か長期休みで実家に戻った時に少し頂いたくらいですね」


 やっぱり世界というか国によって変わるんだなぁ。


「ベルティーナちゃんはどうする?」

「今回は私も遠慮させて頂きます」


 エウリーズは無理に勧めることはしなかった。買い込んできたお酒の品定めで騒いでいる技術者達の元へご機嫌な足取りだ。


「じゃあ俺と同じでジュースね」


 気を利かせてくれたヴィクトルがジュース瓶を何本か持ってきた。中身は葡萄と蜜柑、林檎だ。全て添加物無しの果汁百パーセントである。


「私、実はあまりお酒が強くなくて苦手だったんですよね」


 蜜柑ジュースの瓶を空けようとしているソロモンに囁いた。


「お酒は無理に飲むものじゃないしね。はい、注いであげるよ」

「ソロモン様手ずから……ありがとうございます」


 柑橘系の香りと共に、少し暗めの黄色の中身がグラスに注ぎ込まれた。そして全員に飲み物が行き渡ったところでエウリーズが音頭を取る。


「それでは我が研究所の成果を祝した宴会を始めるわよ~。乾杯の前に我等が城主様より一言どうぞ~」


 予想通りの振りが来たソロモンは立ち上がった。


「偶にはこういうのもいいよね。俺は結構大人数でワイワイ食事するの好きだからさ。給仕役はヴィクトルに任せるから、今日は使用人の皆さんも遠慮は要らないよ。気兼ねなく飲み食いしてくれ。料理もお酒も一杯有るからね。それじゃあ冷めない内に乾杯!!」


 全員が手に持ったグラスを掲げ、思いっきり中身を流し込む。そして暖かい御馳走に舌鼓を打つ。飲み物は冷凍庫要らずの屋外でキンキンに冷えている。


 賑やかで幸福な時間が流れていく。今日はいつもより城内が明るい夜だ。

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