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サバイバー・ソロモン  作者: オウルマン
第一章 異世界サバイバルゲーム
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第8話 戦いの後

 俺は勝者の気分じゃ無いんだよな。

 人を殺してしまった罪にならないのかとナルースに聞けば、「そんな訳が無いですよ」という答えが返ってきた。

 懸賞金が掛かるほどの盗賊相手なんだから当然だという。むしろ良いことをしたんだから誇るべきだとも。


 俺もナルースさん達も無事だった。結果的には良かったというのは分かる。ただ心にのしかかってくるんだよな。

 それに名前を付けるなら罪悪感か。人を殺してしまったからな。


 たとえ相手が、懸賞金付きの盗賊で悪党達だったとしても。正当防衛が認められるとしても、俺は人殺しだ。


 盗賊達にとっては自業自得。殺されても文句は言えないのかもしれない。それでも俺が命を奪っていいものなのか。――俺に人を殺す権利があるのだろうか。

 どのような理由と経緯で死亡したかは一切問わない。自ら手に掛けても良い。他のプレイヤーが死ぬのを待ってもいい。終始無表情だったナビゲーターの言葉が脳裏に浮かぶ。


 一つ目の勝利条件の達成を積極的に目指すなら、探し出して殺しにかかるのが手っ取り早い。今度は数時間前の自分の言葉だ。

 俺は人の生き死に全てに対して、自分とは関係無い何処か遠い世界の話だと思っていたんだろうな。今までずっと。

 生まれて初めて武器を持って戦って、人の命を奪う。それで命の重さが分かった気がする。他人の死に出会って理解したと思う。


 元の世界のどんなことがあっても人を殺してはいけないという教えは、この世界の価値観とは根本から異なっている。特別な立場で無くても、場合によっては人殺しが許されるのがこの世界の価値観なんだ。

 この件で今までの平穏が無い、違う環境と価値観の世界に居る事を理解した。ほぼ孤立無援でこの世界を生きていかなければならないことを、本当の意味で知った。


 やってしまったことは無かったことにはならない。後悔するより、次どうするかを考えろ。お世話になった少年野球の監督の教えだ。

 その言葉に縋る。或いは言い訳にして心の整理をつけていると、馬車は目的地へ到着した。


 ナルースに声を掛けられて、ソロモンは伏せていた目を前に向ける。

「ここがレンドンか……」

 異世界で初めての町だ。ああ、もう日が暮れるな。

 太陽は沈み始めていた。


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