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サバイバー・ソロモン  作者: オウルマン
第二章 対価に誠意を
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第10話 星空の下

 日は沈み夜の(とばり)に星の光が映る頃、ソロモンとヴィクトルは人混みの真っ只中を歩いている。

 参ったな。これ皆そうなのか。

 町は城下町から来たという人々で溢れていた。よく見れば持っている荷物が多く、道の端に座り込んでいる者も多い。住民との見分けは簡単についた。渋滞を起こしている荷馬車の列も、恐らくは大半がそれだ。


「まさか宿が取れない程だとはな。どうするよ」

 ヴィクトルは両手を上げて返答を示す。

 今夜はこの世界に来て初めての野宿になるな。日が沈むと結構冷える。汗を流せないのはちょっと辛いが仕方がない。

 宿屋は何処も満室だった。流れてきた人達が利用しているのは想像に難くないが、明らかに部屋が足りてなさすぎる。一通り見て回ったところ、港や広場は今夜の寝床にありつけなかった人達で占拠されていて、まるで難民キャンプだ。


 何があったかは気になるところ。なので彼等から聞き込みをしたがその内容は想像を超えていた。

 城下町では王政と議会が武力衝突を起こした。議会は賛同者と武具を集めて実力行使に踏み切ったという。国王は兵士に鎮圧ではなく制圧を命じ徹底抗戦の構え。王様を支持する人達が兵士に味方をしていて、城下町は大混乱。この戦いに参加しない人達は、巻き込まれまいと慌てて城下町から脱出してきたようだ。この様子だとフラスダから船に乗って国外まで逃げようと考える人も少なくないだろう。


 フラスダでも同じ様なことが起きないだろうな。巻き込まれるのはご免だぞ。


 広場の一角に腰を下ろして聞いた内容を頭の中で纏める。近くには疲れた顔の人々が座り込んでいた。これ幸いにと空気を読まずに政治批判の演説を行う者が居たが、どちらの陣営であっても誰一人として真剣に聞いていない。冷え切った眼を向けるだけだ。


 帝国行きの船が来たらさっさと乗り込んで引き上げよう。今のこの国には関わらない方がいい。帰って報告して終わりだ。

 リュックを枕代わりにして空を見上げる。星達は元の世界とは違う並びで神秘の芸術を描いていた。今宵は遮るものが何も無くその姿がハッキリと見える。それは多分人の身では鑑賞することが許されない、巨大な夜空のキャンパスの一部分。ヴィクトルは胡座を掻き、首だけを動かしてソロモンと同じ芸術を眺めていた。


 この世界にも星座……あるのかなぁ。この世界の人達は何を思いながらこの星達を見るのだろうか。

 そんなことを考えながら睡魔を待つソロモン。


「ああやっぱりさっきの人だ。すいませんちょっと良いですか」

 夜空の芸術鑑賞を中断させたのは年配の男性だった。

「……何か?」

 会った記憶が無いが。


「いきなりすいません。あっちで女の子が困っているみたいで、できれば助けてあげて欲しいんです。自分ではどうしようもなくて……」

「まあ……俺で何とか出来るなら……」

 ソロモンはゆっくりと立ち上がった。


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