第7話 封印
全員の記憶処理が終わったルイシャ達はようやくダンジョンの入り口にたどり着いた。
古いレンガで出来たその入り口の奥には地下へ続く階段が見えた。
「これがダンジョン……! 初めて見ましたけど確かに不思議な雰囲気がしますね」
ダンジョンが持つ不思議な魔力。
ルイシャはそれを肌でヒシヒシと感じていた。
「それでこれが例の封印ですか、確かにこの紋章はシャロの剣についてる物と同じですね」
ダンジョンの入り口には勇者の一族に伝わる紋章が入り口を塞ぐように空中に浮いていた。
試しにシオンが近くに落ちてた石をその紋章に投げるとバチィ!! と火花が散り石が粉々に砕け散る。
確かにこれは一筋縄ではいかなそうな封印だ。
「まあ見てもらった通りだよ。シャルロッテ君、お願いできるかな?」
「……ええ。やってみるわ」
意を決した様子で封印に近づくシャロ。
するとルイシャはシャロの袖を掴み引き止める。
「どうしたの?」
「いや、その……もし僕のためにやろうとしてるなら無理にやらなくていいよ。封印は僕が何とか出来ないか頑張るからさ」
眉を下げながら心配そうに言うルイシャ。
それを見たシャロは思わず「ぷっ!」と吹き出す。
「な、何がおかしいのさ!」
「ふふ、心配してくれてありがと。でも安心して、これは私のためでもあるんだから」
「シャロのため? どういうこと?」
「私だって知りたいのよ、私のご先祖様のことがね」
そう言ってシャロは封印の前にいく。
そして複雑な気持ちで勇者の紋章に目を向ける。
学園に入るまでは盲目的に英雄である先祖のことを信じ、自分も同じようなことをするのだと使命を感じていた。
でも今は違う。
ルイシャや他のクラスメイトと接するうちに自分の行動理由を先祖に委ねるのは何か違うのでは無いかと思い始めていた。
だからシャロは自分の先祖が何を思って戦ってたのかを知り、その上で自分が本当にしたい事を考えようと思っていたのだ。
(だからこんなところでビビってなんかられない!)
シャロは覚悟を決めると、宙に浮くその紋章に右手を伸ばし……触れた。
触れた瞬間シャロの指先にピリッとした衝撃が走るが、その痛みはすぐに収まる。
そして肝心の紋章はと言うと、まるで役目を終えたとばかりにゆっくりと消えていくのだった。
「ふふ、僕の読みは当たったようだね」
シオンは笑みを浮かべながら紋章があった場所を通る。
続けてルイシャやアイリスも入り口に足を踏み入れるが何も起こらなかった。
「ふう、よかった。どうやら無事に封印は解除できたようね」
「しかし勇者の子孫がおらんと解けん封印とは穏やかやないなあ。いったいどんなお宝が眠ってるんやろか」
「まあ行ってみないとわかんないよね。気をつけて進もう」
「ルイシャ様の御身は私が守りますのでご安心ください」
「あんたはルイより自分の心配した方がいいんじゃないの?」
5人はわいわい喋りながら階段を下ろうとする。
しかしその直前で、突如背後から声を投げかけられる。
「ちょっと待ってください!!」
「「「「「へ?」」」」」
声に反応し振り返る5人。
するとそこには見覚えのない男2人女1人の3人組がいた。
それぞれが剣や杖などの武器を持っている。見た目から察するに冒険者のようだ。
その内の1人。
腰に剣を携えた男はルイシャ達にこう言った。
「あの、僕たちも同行させていただけませんか!?」