第4話 ゴーレム
一言に冒険者と言っても色んな種類がいる。
正義のために魔物や悪人と戦う者もいれば、金儲けの事しか考えてない卑しい者まで千差万別だ。
そしてやることなくダンジョンの入り口にたむろし、運良く封印が解ける場面に居合わせ宝を横取りしようと考えてる彼らは間違いなく後者だ。
「数ならこっちが上だ! やっちまえ!」
数的優位を活かし一気にルイシャ達に襲いかかる荒くれ冒険者達。
そんな彼らの前に立ちはだかったのは先輩であるシオンだった。
「ふふ、たまには先輩らしいところを見せないとね」
そう言ってシオンはその場にしゃがみ、地面に手をつける。
そしてそのまま地面に魔力を流し魔法を発動させる。
「いくよ。粘土創作:魔法人形!!」
シオンが魔法を唱えると、目の前の地面がボコボコボコ!! と盛り上がり、5つの土の塊が出来上がる。
その土の塊は徐々に姿を変え、最終的にずんぐりむっくりした人型の形になる。
「なんだこの魔法は!?」
「ひ、ひるむな!!」
「そうだ数はまだこっちのが上だ!!」
見たことのない魔法に一瞬怯んだ冒険者だったが、彼らは果敢にもシオンの作り出した土のゴーレムに武器で立ち向かう。
「くらえっ!!」
ゴーレムに槍を突き刺す冒険者。
その槍は見事ゴーレムの腹に命中し、ズブリと突き刺さる。
確かな手応えを感じニヤリと笑う冒険者だが、その笑みはすぐに崩れる。
「ぬ、抜けない!?」
なんと槍はゴーレムの体にガッチリと固定され動かなくなってしまったのだ。
しかもゴーレムは腹を貫かれているというのに全くダメージを受けている様子はなく、ぬぼーっとその場に立っている。
「くそっ、放せ!」
必死に抜こうと槍を引っ張ったりゴーレムを蹴飛ばしたりするが、ゴーレムはピクリともしない。
そしてシオンが「やっちゃっていいよゴーレム」と言うと、そのゴツゴツした拳を振り上げ……驚くほどの速さで冒険者を殴りつけた。
「がぶっ!?」
突然頭に岩石で殴られたような衝撃を受けた冒険者はその場で白目を剥いて倒れる。
それを見たゴーレムは刺さった槍をぺっと吐き出すと残りの冒険者に目を向ける。
「ひっ……!」
攻撃が全く効かない未知の敵に恐れおののく冒険者達。
しかし彼らの中にも頭の回る者がいた。
「う、動くな!」
そう叫んだのはこっそりとルイシャ達の背後に回り込んでいた冒険者の一人だ。
彼はルイシャ達の中でも1番弱そうなカザハに狙いをつけ、持ち前の隠密スキルでこっそりと彼女に近づき後ろから彼女につかみかかり喉元にナイフを押し付けたのだ。
「くく、動いたらこの女がどうなるか分かるよな? 分かったら大人しく俺たちにヤられるんだな!!」
勝ちを確信し愉悦した表情を浮かべる冒険者。
さぞルイシャ達は絶望の表情を浮かべているんだろう。そう思いルイシャ達を見るが……彼らはなぜか哀れみの表情を男に向けていた。
「あ!? お前ら状況がわかっているのか!? そんな態度だとこのナイフで……あれ?」
突然驚きの声を上げる男。
それもそのはず、なんと男の手に中にあったナイフはなぜか刃の部分が切り落とされた様に無くなっていたのだ。
そして人質にされているカザハが口を開く。
「あんさん。そんな大きな声出さん方がええで。ウチの子たちは少々気が短いからな」
「うちの子? 何を言ってるんだ? いいからお前は大人しくし……」
新しいナイフを取り出しながら喋る男の言葉は途中で途切れる。
なぜならそのナイフの刀身は目の前でスパン! と切れ落ちたからだ。
「ああ、だから言うたのに。完全に目を覚ましてしもうたわ」
そう言うカザハの背中の服の隙間からぬるりと出てきたのは巨大な緑色の鎌。
いや……ただの鎌ではない。それは巨大なカマキリの鎌だった。