第22話 決着
「な、なんだあれは!?」
光を纏いながら突っ込んでくるルイシャを見てコジロウは焦る。
あれがどんな技なのかは分からないが、もしくらったらタダでは済まないことは直感で理解ができた。
そんな最悪の未来を回避するためにもコジロウは全力で最大魔法を構築する。
「ハアッ!! 将級巨断剣ッッ!!」
コジロウがそう唱えると、彼の頭上に巨大な魔法の剣が出現する。
長さ20mはくだらないその剣は剣先をルイシャに狙いを定めると、その巨体に見合わぬ速さで勢いよく発射される。
今のルイシャならこの魔法を避けることもできるだろう。
しかしルイシャは避けなかった。それどころか真っ直ぐにコジロウの魔法へ突っ込んでいく。
「これが将位魔法……! これを突破できなきゃ王紋持ちに勝つなんて夢のまた夢だ! だから真正面から打ち破らせてもらうよ!!」
そう言ってルイシャは走る勢いそのままに飛び上がると、自分よりも何倍も大きなその剣を思い切り殴りつける。
側から見たらあまりにも無謀な行為。
しかしルイシャが殴った瞬間、コジロウの魔法は勢いを落とし、その場に止まった。
「ば、馬鹿な……!?」
それを見たコジロウは大口を上げて驚く。
今までこの魔法は王紋持ちにしか破られたことのないとっておきだというのに!!
なんでこんな子供に、しかも素手で止められてるんだ!?
コジロウは驚きながらも魔力を込めてルイシャを押し返そうとするが、魔法はピクリとも前に動かない。
しかもよく見れば段々コジロウの方に後退してるではないか。
「お、俺の魔法が押し負けてる!? あの小さな体にどれだけの力が眠ってるというのだ!?」
焦るコジロウ。
一方ルイシャは冷静だった。
「スゴい……力が溢れてくる! これが竜の力……!」
竜眼が開眼したことによりルイシャの身体能力は大幅に向上している。
更に竜功も会得したためもはやその腕力は人間のものではない。
ルイシャはその溢れ出る力を右拳に集中させる。
無限牢獄の中にいた頃は竜功が使えなかったためこの技を使うの初めてだ。
しかしいつか使えるようになった時のために、何度もリオに竜功術を見せてもらっていた。
その時のことを思い出しながらルイシャは更に拳に竜功を練り込む。
そしてそれに呼応するようにルイシャの右目の竜眼は紅く染まり始める。
その瞳は、紅眼の黒龍リオの瞳によく似ていた。
「いっけええええぇえぇっっっ!!!」
ルイシャの拳に凝縮された光は眩い光を解き放ち、辺り一面に衝撃波を撒き散らす。
「きれい……」
それを見ていた生徒は思わずそんな声を漏らす。
そして次の瞬間、コジロウの魔法はメキキキッ!! と鋭い音を立てながらヒビ割れる。
そしてそのヒビは瞬く間に全体に広がっていく。
そしてルイシャが思いっきり拳を振り抜くと、魔法の剣は音を立てて完全に砕け散る。
竜星拳の威力は凄まじく、魔法を壊しただけでは飽き足らずその余波でルイシャの前方の大地を激しく抉り穿つ。
「なっ……!」
当然ルイシャと向かい合うように対峙していたコジロウもその余波に巻き込まれ吹き飛ぶ。
既に体力の限界だった彼は全身を激しく地面に打ち付けたことにより、完全に気を失うのだった。
それを確認したルイシャは「ふう」と肩の力を抜く。
すると役目を終えたとばかりに竜眼は元のルイシャの瞳に戻る。
「……ありがとう、リオ」
小さくお礼を言ったルイシャは、クラスメイト達の方を向き、親指を立てて勝ったことを告げる。
それを見た彼らは疲れ果てた自分たちの英雄に駆け寄るのだった。