第18話 苦戦
再び長刀を上段に構えたコジロウは、ルイシャに超速で接近し刀を振り下ろしてくる。
四方八方から襲い来るいくつもの斬撃。
ルイシャはそれを躱し、受け止め、受け流し、全てをやりすごす。
「……すごい」
それを見たシャロは思わず感嘆する。
自分でも刀の動きを目で追うのが精一杯。だというのにルイは的確に反応している。
あんな芸当は今の私には……出来ない。
自分の無力さが嫌になるシャロ。
しかし目を逸らしても強くはなれない。
悔しい気持ちを抑え込み、シャロは格上の戦いを見守る。
一方ルイシャ。
コジロウの攻撃を上手くやり過ごしてはいる、のだが中々反撃には転じれないでいた。
相手の剣は身の丈ほどもある長刀。その上剣速もあちらの方が上。
リーチと速度で負けているルイシャは攻めに回ることができないでいた。
そもそも相手は格上なのだ。今こうして渡り合えているのが異常と言える。
桜華との剣の修行がなければここまで渡り合うことも出来なかっただろう。
(なんとか、なんとか隙を見つけ出さなきゃ……)
ルイシャは必死に斬撃を掻い潜りながら突破口を探す。
しかしコジロウから放たれたのは隙など微塵もない技だった。
「天巌流、啄身」
まるで鳥が虫を啄むかの様に放たれる超高速の突き技。
その技はルイシャの右肩に命中し、肉を抉り取る。
「がっ……!」
突然の痛みに顔を歪め、その場に片膝をつくルイシャ。
皮肉なことに隙を見せたのはルイシャの方だった。
「さらばだ。強き少年よ」
剣を上段に構えたコジロウは、まるで斬首刑でもするように膝をつくルイシャへ刀を振り下ろす。
絶体絶命の状況。しかしルイシャの顔にまだ絶望は浮かんでなかった。
「気功術、守式七ノ型……陽炎!!」
気功術を発動した瞬間、ルイシャの輪郭がボヤけ始める。
そしてルイシャの首元目掛け振り下ろされた刀は、なんとルイシャをすり抜けて地面に突き刺さる。
「なに!?」
突然の事態にさすがのコジロウも慌てる。
守式七ノ型、陽炎。
この技は自分の周りに高濃度の気を放つことで、相手に自分の位置を誤認させる技だ。
この技が発動すると相手から自分の存在はボヤけ、正確な位置が掴みづらくなるのだ。
ルイシャはコジロウが自分の位置を誤認している間に立ち上がり、竜王剣を構える。
現在コジロウは刀を完全に振り下ろしている状態。ここから刀を振り上げても防御は間に合わない。またとない絶好の好機だ。
「うおおおっ!! 次元斬っ!!」
ルイシャが選択したのは最高威力の斬撃「次元斬」。
防御不能の高威力技だ。
コジロウに迫る斬撃。
しかし何故かコジロウは興味深そうに次元斬を観察し、全く慌ててなかった。
「天巌流秘剣、燕返死」
そう小さく呟くコジロウ。
すると次の瞬間、地面に突き刺さってたはずの刀が、まるで爆発でもしたのかのように超速度で上に跳び上がり剣を振り下ろそうとするルイシャの腹部を深々と斬り裂いた。
口元についたルイシャの返り血をぺろりと舐めながら、コジロウは言う。
「覚えておくといい少年。大人はね、君が思っているより汚いんだよ」
勝ちを確信し慢心するコジロウ。
――――一方ルイシャの体にはある異変が起きていた。
次回、覚醒回です!





