第12話 剣王
レーガスに連れられ屋外に出ていくZクラスの面々。
するとある人物が声をかけてくる。
「こんにちは皆さん。私が今日皆さんの講師を努めさせていただく『コジロウ』です。よろしくお願いいたします」
そう言ってルイシャたちに一礼したのは腰に長い刀を差した20代半ばくらいの男性だった。
どちらかというと痩せ型であり、ぱっと見はそれほど強そうではない。
しかし一部の生徒は彼の強さを見抜いていた。
シャロもその一人であり、ルイシャに耳打ちしていた。
「ねえルイ、あいつ本当に強いんじゃない?」
「そうだね。普通に立ってるだけなのに隙がない」
一見細身に見える腕もよく見れば引き締まっており、いくつもの傷跡がある。
どうやらこのコジロウと言う男は歴戦の戦士のようだ。
シャロとルイシャはコジロウの強さに気づいたが、中には本当にこの男が強いのか疑問を持つ生徒もいた。
その空気に気づいたコジロウはこう提案してきた。
「どなたか私と手合わせしませんか? 私は素手、生徒さんは魔法でも武器でも使っていいですよ」
その無謀とも言える提案に戸惑う一同。
しかし血気盛んな二人の生徒がその提案に乗ってくる。
「おいおい本当にいいのかそんな提案してよう?」
「どけバーン、俺様がやってやる」
そう言って指をパキパキ鳴らしながら出てきたのはバーンとヴォルフ。
二人とも殺気が漏れ出ておりやる気満々だ。
「ああん!? 俺の方が先だったろうが!!」
「うるせェ、てめえはすっこんでな!」
ぎゃあぎゃあ言い合う二人。
それを見たコジロウは「ふふふ、元気がいいね」と笑うと驚きの提案をしてくる。
「だったら二人でかかってくるといい。刀は使わないから安心していいよ」
そう言って刀を抜き放つと地面に刀を刺し、二人の元にスタスタと無防備に歩いてくる。
あまりに舐めきった態度に先ほどまで言い合っていた二人は喧嘩をやめる。
「……ちっ、どうやら完全に舐められてるようだなヴォルフ」
「あぁ、こうなったら俺様たちの力を王様に教えてやろうぜ」
共通の敵ができた二人は大人顔負けの殺気をコジロウに飛ばし、臨戦態勢に入る。
「ふふ、心地いい殺気だ。少しは楽しめそうだ」
大人でも気絶してしまいそうな殺気を浴びながらもコジロウは涼しい顔を崩さない。
その余裕の態度にヴォルフとバーンは苛立ちながらも警戒する。
「さて、それでは『剣王』コジロウ。推して参らせてもらう」
そう言うやコジロウは地面を蹴り、二人に襲い掛かった。