閑話3 奪取
アイリスがルイシャの部屋を訪れる約一時間前。
まだ日が昇って間もない早朝にシャロはルイシャの部屋を訪れていた。
わざわざ人の目を避けて正面から入るような面倒くさい真似はしない。
シャロは3階のルイシャの部屋の高さまで助走をつけてジャンプし窓枠のわずかな突起に指をかけ、窓を開けて入ってきたのだ。
ちなみにワイズパロットのパロムがよく来るため、ルイシャは窓の鍵を閉めてない。
それをシャロは知っていたのだ。
「やっほー。おはよ、ルイ」
「……え? しゃろ?」
勢いよくガン! と窓を開けて入ってきたためルイシャは目を覚ます。
まだ眠い目をこすりながら開いてみると、そこにいたのは窓から入ってくるシャロ。
想定外の出来事にルイシャはまだ自分が眠ってるのではないかと錯覚する。
「まだ夢を見てるのかな、ふあ」
「なーに呑気なこと言ってんのよ。ほら、早く行くからとっとと着替えなさい」
シャロはそう言ってまだ完全に覚醒してないルイシャをベッドから起こして出発の準備をさせる。
最初は「へ? へ?」と戸惑うルイシャだったが、数分もすると完全に目が覚めこれが夢じゃないことに気づく。
「ちょ、行くってどこに!? こんな早くどうしたの!?」
「いいからさっさと着替えて!! 早くしないとあいつが来ちゃうから!!」
「あいつって誰!?」
突然の出来事に混乱するルイシャだが、シャロがものすごい剣幕で急かしてくるので仕方なく外出の準備をする。
そのためシャロが部屋に突入してから約10分で準備ができた。中々のタイムだ。
「よし。準備出来たわね。じゃあさっさと行くわよ」
そういってシャロは窓枠に再び足をかける。
「え!? 窓から行くの!? そんな事しないで普通にドアから行こうよ!!」
「そんなことしたらあいつに見つかっちゃうかもじれないじゃない!! ほら行くわよ!!」
「だからあいつって誰なの!?」
戸惑いながらもシャロに手を引かれルイシャは窓から外に飛び出した。
そして軽やかに地面に着地すると、そのまま走り出すシャロを追いかけ自分も走る。
「ああもう! 行けば良いんでしょ!? ちゃんと後で教えてよね!」
自暴自棄な感じでしょうがなく現状を受け入れるルイシャ。
それを見たシャロは嬉しそうに笑う。
「ふふ、ようやく行く気になったみたいね。とばすからしっかり付いてきなさい!!」
そう言ってシャロは速度を上げ、人通りの少ない朝の通りを駆け抜ける。
こうして二人の小旅行は幕を開けたのだった。