第9話 確信犯
「ど、どどどどうしたのアイリス!?」
「もう我慢なりません。夜伽を始めさせていただきます」
生まれたままの姿となったアイリスは妖艶な表情でルイシャの唇を無理やり奪う。
「む、むぐむぐ」
アイリスらしからぬ情熱的なキスにルイシャはされるがままだ。
ここが攻め時と感じたアイリスはそのまま流れるようにルイシャの口内に舌を滑り込ませる。
そしてそのまま吸血鬼一族に伝わる一子相伝の舌技でルイシャの口内を蹂躙する。
「ん……ぷは。いかかがでしたか? 満足していただけましたか?」
「ひゃ、ひゃい」
キス一つで骨抜きにされるルイシャ。
しかし無理もないだろう。吸血鬼は淫魔の近種。その唾液には興奮作用のある成分が含まれている。
快感で気を失わなかっただけルイシャはすごい方だ。
「では続きの方を……」
「ちょ、ちょっと待って!」
相変わらず澄ました顔で続きをしようとするアイリスをルイシャは止める。
「やっぱりこんなのダメだよ! こんなの君の意思じゃないでしょ!?」
ルイシャがそう言うとアイリスはピタリと止まる。
「……確かに長から言われました。今後の仲のためにもあなたと体の関係を持っておけと」
「やっぱり……!! そんなことしなくても僕は最大限協力するから大丈夫だよ!」
無理に体を張ることはないとアイリスを落ち着かせるルイシャ。
しかしアイリスの口から出たのは驚きの言葉だった。
「確かに長から言われたことは事実です。しかし今はそれは関係ありません」
「へ?」
アイリスは再びとろんとした目でルイシャ見ながら、ルイシャの顔をガシッと両手で掴む。
「ああ、なんと可愛らしいお顔でしょう……こんなお顔で強いなんて反則すぎますぅ……」
そう、難しい話ではない。
単にアイリスはルイシャの顔がドストライクだったのだ。
今まで学校でも気にはなっていたが人間と深く付き合うわけにもいかないので、関わるのを我慢していたのだ。
しかしその少年はなんと自分が尊敬する人物の関係者だった。
おまけに強くて優しい。
正直今日アイリスは下心ありありでルイシャの部屋を訪れていた。
アイリスは自分を抑えきれずルイシャを抱きしめ自分の豊満な胸にうずめる。
するとアイリスはルイシャのルイシャが既に臨戦態勢になっていることに気づく。
「ふふ、嫌がってる割にはルイシャ様も乗り気なご様子。ならば私も遠慮するのは失礼というもの。全力でいかせていただきますっ!!」
「ちょ、あの、ま……あーー!!」
その日の夜、何人かの生徒が寮で地震と悲鳴を感じたと言ったが、その真偽のほどは定かではない。