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第5話 魔王の弟子

『吸血鬼』

 それは数いる魔族の中でも上位に位置する種族の魔族だ。

 高い身体能力と知性を併せ持ち、魔法の扱いにも長けている万能種族。


 その反面繁殖能力は低いため個体数の少ない希少な種族だ。


「まさか君があの吸血鬼だったなんて。驚きだよ」


「我らが吸血鬼の一族は300年前滅亡の危機に瀕していました。その危機を救ってくださったのが魔王テスタロッサ様。ゆえに我らが一族は魔王様がいなくなった後も生きていることを信じて世界中を探し回りました」


「そんなことが……」


 ルイシャは彼女たちが300年間もの間絶対に見つからないテスタロッサを探してたことを知り悲しくなる。

 しかし同時にまだこの世界にテスタロッサのことを慕う人が残ってたことを知り少し嬉しくもあった。彼女は孤独ではなかったのだ。


「そして人間の国で魔王様の情報を集めていた私の目の前に現れたのが……貴方です。魔王様の魔力を持った人間。つまりあなたこそ魔王様の真のかたき


「ちょっと待ってよ! なんでそれで僕が敵になるの!?」


「簡単なことです。他人の魔力を奪う方法は二つ。一つは長い長い時間をかけて魔力を貰い続けること。しかしそれは短命種である貴方には出来ない方法」


 いやその方法なんだけどね……と思いながらもルイシャは黙る。

 今無限牢獄のことを話しても信用してもらえないだろう。


「そしてもう一つは命を奪うこと。王紋を持つ者の命を奪うとその力を少し得ることができます。どうやったかは知りませんが貴方は魔王様の命を奪いその力を得た。違いますか?」


「いや違うんだけど……」


「まだしらを切りますか。どうやらこれ以上の問答は無駄のようですね」


 そう言ってアイリスはとてつもない魔力を練り始める。

 先ほどまでの魔法とは桁違いだ。どうやら本気でルイシャを殺す気のようだ。


 それを見たルイシャも同様に魔力を練り始める。


「悪いけど僕はこんなところで死ぬわけにはいかないんだ。君のご主人様を助けるためにもね」


「何を意味のわからないことを……まあいいです。これで終わりなのですから。くらいなさい、上位鮮血十字槍ハイ・ブラドロス・スピア!!」


 アイリスが作り出したのは十字架の形をした巨大な赤い槍。

 膨大な魔力の込められたその槍は高速回転しながらルイシャ目掛けて放たれる。


「その罪、命で償いなさいっ!」


 アイリスはまだ若い吸血鬼のためテスタロッサに会った事はない。

 しかし小さい頃から親にテスタロッサの話を聞き続けていたため、もはや信仰と言っていいほど彼女を尊敬している。

 その魔王の(かたき)だと思っているルイシャへの憎しみは深く、その思いの力は魔法の力となって現れる。


「すごい魔法だ。でも魔王への思いだったら僕だって負けてないよ」


 ルイシャは体に眠るテスタロッサの魔力を集め、魔法を構築する。

 その魔法はかつてテスタロッサが愛用した魔法。それをルイシャは無限牢獄でしっかりと継承していた。


「死ねえっ!!」


 ギャリギャリギャリ!! と音を立てながら接近する槍。しかしルイシャは落ち着いていた。

 自分の、いやテスタロッサに貰った魔法を信じているから。


「照らせ! 魔煌砲マギ・ブラストォ!!」


 ルイシャの合わせた両手から放たれたのは神々しいほどに黄金に輝く魔力の塊。


 その魔法はアイリスの放った魔法にぶつかると、アイリスの魔法を飲み込み……光の粒となって消し去ってしまう。


 テスタロッサが考案し作ったこの魔法は対魔法用に作られており、相手の魔法を分析し消滅させる魔法だ。平和主義者のテスタロッサらしい優しい魔法だ。


「そんな……この魔法は……!!」


 魔煌砲を見たアイリスはその場に膝をつく。

 なぜならその魔法は小さい頃から聞かされていた魔王専用魔法にそっくりだったからだ。

 もし魔王を殺してその魔力を奪ったとしてもこの魔法は使えるようにはならないだろう。なら目の前にいる少年は一体何者なんだ?


 アイリスはこの時初めて冷静になり、ルイシャに問いかける。


「貴方は……いったい……!?」


 ルイシャはアイリスに戦闘の意思がなくなったことを感じ取ると、地面に座り込むアイリスに近づき手を伸ばす。


「僕は魔王の弟子。君と同じで偉大な魔王様を助けようと思っているんだ」


 そう言ってルイシャは同士の手を掴み笑いかけるのだった。


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