第6話 竜王の修行
=竜王視点=
小僧の修行が始まった初日。
魔王の奴にたっぷりしごかれたのか、ボロボロになった坊主がわしの元にやってくる。
「ひい、ひい」
「くくく。その様子だとたっぷり搾られたようじゃの」
「も、もう一欠片も魔力がないです……これ以上魔法を使ったら本当に死んじゃいますよ……」
確かに小僧から感じられる魔力は風前の灯火。これ以上少しでも魔力を使えば本当に死んでしまうじゃろう。
しかしそれは修行がうまく行ってることには他ならぬ。死に近づけば近づく程、回復した時の魔力上昇は大きくなるからの。
……どうやら魔王の奴は上手くやっとるようじゃの。
あやつの宿敵として負けてはおられぬな。
「よし! 次はわしとの修行じゃ! 死ぬ気でやるのじゃぞ!」
「ええ!? もう魔力はないですよ!?」
「そんなこと分かっとる! これからやるのは魔法の修行ではない、『気功術』の修行じゃ!」
「きこう……じゅつ?」
頭に?マークを浮かべる小僧。
むむ、まずは気功が何かについて教えねばならぬか。
「いいか、気功というのは魔力とは異なる生物に宿る力じゃ。これを極めれば人間という貧弱な種族でも我々竜族に匹敵する肉体を手にすることが出来るのじゃ!」
「す……すごいっ! そんな技があるんですね!」
わしにキラキラと羨望の視線を送ってくる小僧。
うむ。悪くない気持ちじゃ。思えば何千年も誰かに憧れられる事などなかったからの。
「でもそんなすごい技なのになんで魔法みたいにみんな使ってないんですか?」
不思議そうな顔で質問してくる小僧。
いい着眼点じゃ。頭がいい……というよりも強さに対する憧れが強い、からかの。
現にさっきまでヘトヘトじゃったのに今は新しい力に興味津々で疲れなど忘れておる。
くく、どうやら鍛え甲斐がありそうじゃの。
「人族が『気功術』を使わない理由、それは『気功術』を習得するのが難しいからじゃ」
「難しい……? そんな理由で使われないんですか?」
「うむ。逆に魔法が広まった理由は習得が簡単じゃからじゃ。魔法の才能が無いお主には分からんじゃろうが、普通の人間は修行などせんでも初級魔法は使える。しかし『気功術』は厳しい修行をしなければ簡単な技も使えないのじゃ」
「なるほど、じゃあ僕からしたら魔法と同じくらいの難しさってことですね!」
「左様。気功術を覚えるのに才能は必要ない。血の滲むような努力のみが糧となるのじゃ」
「なるほど……! 僕、頑張ります!」
「うむ、いい心がけじゃ」
どうやら上手くやる気になってくれたようじゃな。
しかし才能は関係ない。とは言ったがあれには少し嘘も混ざっている。
気功術は努力が必要なのに間違いはないが、それでも覚えの良い悪いはやはりある。
さて、小僧は何百年かかるじゃろうか?
千年以内にマスターできると良いのじゃが。それなら魔法をマスターするより早いじゃろ。
魔王の奴に負けるわけにはいかんからの!