第15話 団欒
「ルイ、くん、なの……!?」
突然胸に飛び込んできたルイシャを見て魔王テスタロッサは目をパチクリさせて驚く。
リオは顔に完全にルイシャが覆いかぶさってしまったので前が見えなくなり「な、なにが起きたんじゃあ!?」とパニックになる。
「うん、そうだよ! やっと会えた!」
そう言ってルイシャは二人の体に顔を埋めて泣き出す。
別れてたかが3ヶ月。しかし300年の時を共に過ごした二人との別れはルイシャにとってとても悲しいものだった。
テスタロッサとリオは泣きじゃくるルイシャを見てお互い顔を見合わせると、二人でルイシャの頭を撫で始める。
その様子はまるで子をあやす母のような慈愛に溢れた光景だった。
「頑張ったわねルイくん。大丈夫私たちはここにいるから」
「かか、相変わらず泣き虫じゃの……ぐすん」
「ふふ、リオも泣いてるじゃないの」
「な、泣いとらんわ! お主こそ目が濡れておるぞ!」
まるでじゃれるように三人は笑い転げる。
本当の家族のように。
そしてひとしきり再会を喜びあった三人はテスタロッサの魔法で作られた家に行き椅子に座ると、ルイシャのこれまでの話を聞いた。
王国へ行ったこと。勇者の子孫シャロに会ったこと。王子と知り合いになったこと。学園に入ったこと。友達がたくさんできたこと。……そして無限牢獄の管理人、桜華のこと。
全てを包み隠さず話した。
「……これで外で僕に起きたことは全部だよ」
「そう……ルイくん、まずは私に一つ言わして」
「へ? なに?」
テスタロッサはガタッと席からたつと、ルイシャに目にも止まらぬ速さで抱きつく。
「勇者の子孫と付き合うなんて酷いわ!! 私とは遊びだったの!?」
そう言って自分の豊満な胸の中にルイシャの顔を埋めながら抱きしめる。
ルイシャの顔はその谷間の中にすっぽりと埋まってしまいまるで溺れたように手足をバタバタさせる。
「ちょ、テスね、いき、できな」
暴れるルイシャを気にも止めず抱きしめ続けるテスタロッサを見かねたリオが「いい加減にせんか」とルイシャを掴み引っ張り出す。
「げほ、げほ、おっぱいで溺れ死ぬかと思ったよ」
「おお可哀想に。どれわしが慰めてやろう。あんな胸がでかいだけの悪魔よりわしの方が優しいぞ」
「きっー!! 横取りしないでよっ!!」
「なんじゃやるのか!?」
取っ組み合いになるテスタロッサとリオ。
そんな二人にルイシャは申し訳なさそうに言う。
「や、やっぱり怒ってる?」
落ち込むルイシャを見て二人はケンカをやめる。
「ふふ、冗談よルイくん。ほんのちょっと、ほんのちょーーーっとだけ頭に来てるだけだから。怒ってないわよ」
「はあ、全く大人げない奴じゃ。気にせんでええぞルイ。わしはそんな些細なこと気にしてないからの。妾の一人や二人くらいおらんと竜王たるわしの伴侶は務まらんわ」
「リオ……!」
リオの懐の深さに感動するルイシャ。
それに反してテスタロッサはぷーっと頬を膨らませたままなので、彼女の前ではシャロの話は出来るだけ避けようと心に決めたのだった。