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第9話 鉄槌

 

「すごい……!」


「へへっ、そりゃどうも」


 ルイシャの素直な称賛にヴィルフは照れくさそうにする。

 しかしすぐ真面目な顔に戻りルイシャに最後の役目を託す。


「じゃあ、あとは頼んだぜ、大将(・・)


「うん、任せて」


 それ以上の言葉はいらない。


 ルイシャはヴォルフの上に立ち上がると、ギレームの乗ったワイズパロットの上に飛び移った。



「……っしょっと。あ、こんにちは、さっきぶりですね」


 ルイシャは鳥に跨るギレームの目の前にすたっと着地すると、まるで散歩途中で出会ったかのように軽く挨拶をする。


「げえ!? なんで貴様がここに!? どうやって来た!?」


 突然の事態に混乱するギレーム。

 まさかここまで追ってくるとは思わず警戒してなかったので、突然の事態に汗が止まらなくなる。


 ルイシャは焦るギレームの右襟を左手でガッチリ掴むと、右腕で拳を固く握り振りかぶる。


「今から思いっきり殴ります。覚悟はいいですか?」


「ま、待て待て待て!! こんなところで殴られたら死んじまうよ!! 勘弁してくれ!!」


 天使の様な笑顔で恐ろしいことを言うルイシャにギレームは命乞いをする。

 両腕襟を掴むルイシャの左腕をどかそうともするがルイシャの怪力に全く歯が立たない。


「な、なあ! 金をやるよ! 実はまだたくさん隠し持ってるんだ! 欲しいだろ!?」


「いらない」


「じ、じゃあ魔道具! 珍しいのたくさんあるぜ~?」


「盗品なんていらないよ」


 提案してもことごとく断られギレームはだんだん泣きそうになってくる。

 こいつは何なら買収できるんだ!? 今まで買収できなかった奴なんていないのに!!


「だったら女! 女を用意してやる! 綺麗所を用意するぜ!? な、いいだろ!?」


「……残念だけどもう間に合ってる。僕にはもう可愛い彼女がいるんだ」


 そう言ってルイシャは拳に気功を込め、ギレームの顔面めがけて拳を打ち込む動作に入る。


「ちょまっ……!」


「気功術、守式五ノ型変式『金剛殻・鉄槌』!!」


 金剛(ダイアモンド)の如く硬くなった拳による強烈無比な右ストレート。

 それを顔面に食らったギレームは「ひぶっっっ!!」と潰れたカエルのような声を上げながら吹っ飛び地面に落下していった。


「……ふう、スッキリした!」


 腹に受けた銃弾の恨みを返したルイシャは晴れやかな顔で鳥に跨りなおす。


「ねえ君、下に降りてもらえるかな」


「クエッ!」


 ギレームに無理やり飛ばされていたワイズパロットはルイシャの言うことを素直に聞いて下に降りてくれる。

 そしてルイシャ達が地面に降りると、そこには狼形態のヴォルフが待っていた。


「ほらよ、ちゃんとキャッチしといたぜ」


 そう言ってヴォルフは口に咥えてたものをドサリ、と地面に放る。

 なんとそれはルイシャが吹っ飛ばしたギレームだった。よく見ればピクピクと動いている。どうやらまだ生きているようだ。

 ヴォルフはギレームを空中でキャッチしていたのだ。


「ちゃんとキャッチしてくれたんだね。ありがとう」


「へっ、こいつが死ぬのは構わねえがあんたを人殺しにするのは気が引けたんでな」


 そう言って二人は「へへっ」と笑い合う。

 関わり合ったのは短い時間だが、二人の間には確かな絆が芽生えていた。


 そんな彼らの元へドタドタと鎧姿の人たちが寄ってくる。

 その鎧にはエクサドル王国の紋章が刻まれていた。


「お? 騎士団の連中もようやく来たようだぜ」


「本当だね、まあ派手に暴れたから当然か。あとのゴタゴタは騎士団の人たちに任せようか」


 こうしてルイシャとヴォルフの戦いは幕を閉じたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 騎士団はどうやって状況を把握してこの場所にたどりついたのかしら? 
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